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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第四十五話:レイナの変化と対抗心

 翌朝。俺たちは、またギルドの前にいた。

「三日連続……ですかぁ〜?」

 ステファニーさんが、ふわぁとあくびをしながら眠たげに目をこする。

「ああ。鉄は熱いうちに打て、だ。……それに、昨日見つかった『弱点』を自覚したまま戦う経験が必要だ」

 シエラさんの厳しい言葉に、レイナさんは杖を握り直すが、その指先がわずかに震えている。天才といえど三日連続の酷使。魔力は底をつきかけていた。

「レイナ、今日は範囲内から出るなよ」

「……わかってるわよぅ。シエラに言われるまでもないわ」

 レイナさんの返答には、いつもの覇気がない。それが、余計に俺を緊張させた。

 山の麓。空を切り裂く咆哮と共に、上級魔物ワイバーンが急降下してきた。

「ライト、防御だ!」

「はい! ――中級《光結界ルミナス・バリア》!」

 黄金のドームが俺たちを包む。同時に、横で魔法を練っていたレイナさんが、苦悶の表情を浮かべて膝を突いた。

「っ、く……! 魔力が……思うように、練れない……!」

 杖の先から漏れる魔力は弱々しく、ガス欠なのは明らかだった。

「攻撃が、……届かない……!」

 焦るレイナさん。そこへ、ワイバーンが音速のタックルを仕掛けてきた。

「ライト、出力を上げろ! 突き破られるぞ!」

「くっ……おおおおお!」

 俺は《光結界》一点に全魔力を注ぎ込んだ。だが、一点に集中したせいで、他が薄くなった。そこを、突かれた。俺の意識が白濁し、結界にわずかな綻びが生じる。

 その隙を突き、ワイバーンの鋭い爪がレイナさんへ肉薄した。

「あ……」

 回避の風も練れないレイナさんの顔が、絶望に染まる。その瞬間だった。

「は〜い、わたしも〜。《生護ライブ・ガーディアン》〜」

 ステファニーさんののんびりした声と共に、レイナさんの周囲に見たこともない淡い緑色の光が溢れ出した。ガキィィィィィィン!! と、ワイバーンの爪がその柔らかな光に弾き返される。

「え……? な、なにこれ……?」

 レイナさんが呆然と声を漏らす。

「嘘でしょ……。回復魔法の輝きなのに、物理攻撃を……防いだ?」

 だが、ステファニーさんは息を弾ませて呟いた。

「……長くは、もたないですから〜。今のうちに〜」

 制限時間はわずか。しかしワイバーンは止まらない。弾かれた反動を利用し、再生が遅れている俺の結界の綻びから、今度はステファニーさん本人を狙った。

「危ないですよ〜、レイナさん〜」

 ステファニーさんはトコトコと一歩前へ出た。ザシュッ! と鮮血が舞い、彼女の肩が深く切り裂かれる。

「ステファニー! あんた、何やって――」

「えへへ〜、平気ですよ〜。……ちょっと、痛いですけど〜。《光滴リジェネレート・ドロップ》〜」

 ステファニーさんが自己治癒を唱えた瞬間、レイナを守っていた《生護》がぱっとシャボン玉のように弾けて消えた。

「防御を維持しながら回復はできないのね……! つまり、今は完全な無防備――!」

 驚愕するレイナさんの前で、傷が瞬時に塞がっていく。守りを捨て、治癒を優先する。その命懸けの隙作りを、ステファニーさんは笑顔で行っていた。

「今ですよ〜。えいって、やっちゃってください〜」

「……っ、もう! あんたって子は……!」

 レイナさんは未知の魔法への驚きを抑え込み、自分を繋いだ少女の覚悟に応えるように、枯渇寸前の魔力を根こそぎ振り絞った。

「火上級《流星炎舞メテオ・ストライク》……未完成でも、落とす!」

 本来の規模には遠いものの、濃縮された炎の塊がワイバーンを地上へと叩き落とした。

 ワイバーンが地を砕いて沈黙し、戦場に静寂が戻る。

 戦闘終了。

「……あんた、今の魔法、なんなのよ」

 荒い息をつくレイナさんが、ステファニーさんに詰め寄る。

「回復魔法で防御なんて、聞いたこともないわよ! あんた、一体何者なの……?」

「えへへ〜、やった〜」

 そこへ、剣を収めたシエラさんが歩み寄ってきた。

「魔力も無えのに突っ走っても、良い結果なんか得られねえよ。……だが、今日は自分一人の魔力以外の『勝ち筋』が見えたんじゃねえか?」

 シエラさんの言葉に、レイナさんは唇を噛んで黙り込んだ。やがて、彼女は顔を真っ赤にして俺を指差した。

「……わかってるわよ! でもライト! あんたには負けないからね!」

「え……俺?」

「そうよ! あんた、勇者なんでしょ? 防御の出力も、ステファニーの覚悟にも全然追いついてないじゃない! ……守られてばかりなのは、性に合わないのよ。あたしの方が、あんたよりずっと強いんだから! だから――認めさせてみなさいよ!」

 帰り道。レイナさんはステファニーさんの魔法について根掘り葉掘り聞き出そうとしているが、ステファニーさんは「ふふ〜、秘密です〜」と、のんびりかわしている。

 レイナさんは、変わり始めている。

 ステファニーという未知の存在を認め、そして俺を「競うべき相手」に据えた。

 そのひび割れた心の隙間から、新しいパーティの形が、少しずつ見え始めていた。

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