表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/156

第四十三話:レイナの才能と高圧的な態度

 アルケインに戻った数日後、俺たちは再びギルドからの依頼を受けていた。

「今日の依頼はこれだ。上級魔物キメラの討伐。ライト、お前の負担は昨日の比じゃないぞ」

 シエラさんの警告に、俺は光を練る手に力を込めた。

 森の最奥、巨躯を誇るキメラが咆哮を上げる。獅子の頭が牙を剥き、蛇の尾が鎌首をもたげた。

「ライト、展開しろ!」

「はい! ――中級《光結界ルミナス・バリア》!」

 俺が魔法防御に優れた黄金の膜を広げた瞬間、キメラの獅子が極太の火炎を吹き付けた。当然、防げるはず――そう確信した次の瞬間、熱風が結界を透過し、俺の肌を焼き焦がした。

「熱っ!? なんで……結界が効かない!?」

「バカね! 勇者のくせにそんなことも分からないの!?」

 背後からレイナさんの冷徹な罵声が飛ぶ。

「炎は魔法じゃない! 物理よ! だから結界が効かないの! 《光護壁ホーリー・バリア》に切り替えなさい!」

 切り替えろ!? そんなの無理だ。今の俺は、一つの魔法を維持するのが精一杯。護壁に切り替えれば、周囲に漂う「山羊の腐食毒(魔法)」が、結界なしの俺たちを直撃する。

「無理です! 護壁に変えたら、この毒の霧が――」

「なら、その一瞬で張り替えなさいよ! 勇者ならそれくらい気合でやりなさい! あたしの魔法を邪魔する気?」

 無理難題だ。彼女は俺の限界など知る気もない。俺は、腐食毒を防ぐ《光結界》をギリギリまで維持し、キメラの炎(物理)が着弾する直前のコンマ数秒で《光護壁》へと無理やり張り替えた。

 ガガガッ! と光が軋み、衝撃波が骨を震わせる。切り替えの隙間に毒が入り込み、喉が焼けるように痛む。さらに蛇の尾が放った麻痺針が、光の揺らぎを突いて左腕をかすめた。

「っ……左腕が……痺れる……!」

「死ぬ気で耐えなさい! あんたが盾なんだから、あたしが最高の一撃を放つまで場所を動くんじゃないわよ!」

 彼女は一度も、俺の苦悶を振り返らなかった。

 俺は物理と魔法の狭間で、吐き気を催すほどの速度で「張り替え」を繰り返す。脳が焼き切れるような感覚。膝が震え、視界が白く霞む。

「これで終わりよ! ――火上級《流星炎舞メテオ・ストライク》!」

 空から降り注いだ巨大な炎の塊が、キメラを粉砕した。

 ドオォォォォォン!!

 俺は血を吐くような思いで《光結界》を張り直し、その爆圧を封じ込めた。

 魔力回路が悲鳴を上げ、内側から焼き切れるような熱感。残存魔力がゼロになる感覚と共に、意識の端が暗転しかける。炎が晴れたとき、そこには炭化したキメラの死骸があった。

 俺は糸が切れたようにその場に崩れ落ち、震える腕で地面を這った。

「ふん、当然の結果ね。あたしの魔法を邪魔せずに守りきったことだけは褒めてあげるわ」

 満足そうに微笑むレイナに対し、シエラさんは立ち上がれない俺を一瞥し、彼女の前に立ち塞がった。

「レイナ、お前の火力は素晴らしい。……だが、次からはもう少し言い方を考えろ。ライトは命令を聞くためのゴーレムじゃない。仲間だ」

「何が問題なの? 私の指示は的確だったし、ライトもその通りに動いた。効率を考えたらこれが最善でしょ? それに、勇者ならこれくらいできて当然じゃない」

 レイナは心底理解できないというように首を傾げた。その瞳にあるのは、自分と他者の才能を絶対的な序列で切り分ける、残酷なまでの無邪気さだった。

「効率、か。……いいか、レイナ。次に同じことをやったら、俺が前に立つ。仲間を使い潰す戦い方は、パーティーじゃない」

 シエラさんの重い警告。それに、レイナは初めて反論できない空気に押され、納得していない目をしながらも口を閉ざした。

「……勇者なら、当然……か」

 俺は痺れる腕を抱え、小さく呟いた。

 彼女の指示は正しかった。でも、こんな綱渡りのような「張り替え」を、いつまで俺の身体と心が持ちこたえられるのか、誰にもわからなかった。

 帰り道。夕闇に染まる森を、レイナさんは鼻歌混じりに一人で歩いていく。

 俺は、彼女が「勇者」という役割の向こう側に、俺という一人の人間を見ているのか、怖くて確かめることができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ