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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第十九話:オルフェアに到着

 昼過ぎ。

 俺たちは、ついにオルフェアの門をくぐった。

 街の中は、ヴァルセリア以上に賑やかだった。

 商人たちが大きな声で商品を売り込み、冒険者たちが武器や防具を見定めながら行き交っている。

 活気に満ちた街だ。

 そして――やはり、女性の姿も多い。

 商人の女性。

 冒険者の女性。

 普通に買い物をしている女性たち。

 以前なら、それだけで俺の足は止まっていただろう。

 だけど――。

「さて、まずはギルドに行くぞ」

 シエラさんが、俺を導いた。

「はい」

 俺は、シエラさんの後を追った。

 街を歩きながら、俺は周囲を見渡した。

 女性とすれ違う。

 心臓が、少しだけ速く打つ。

 だけど――以前ほど、体が硬くならなかった。

 自然と、前に進める。

(……変わった)

まだ怖さは残っている。けれど、前ほどじゃない。

 俺は、自分の変化に驚いていた。

 ヴァルセリアに初めて来た時は、女性を見るだけで体が硬直していた。

 シエラさんの背中にしがみつくように歩いていた。

 だけど、今は違う。

 緊張はする。

 だけど、歩ける。

 すれ違える。

「おっ」

 シエラさんが、不意に立ち止まった。

「どうしました?」

「いや、お前だよ」

 シエラさんは、俺を見て笑った。

「前より平気みたいだな。これも訓練のおかげか?」

「え……あ、はい」

 俺は、自分でも驚いた。

 確かに、以前よりは平気になっている。

「すれ違うだけなら、なんとか」

 俺は、正直に答えた。

「まだ、話しかけられたり、近づかれたりするのは無理ですけど……」

「それで十分だ」

 シエラさんは、満足そうに頷いた。

「少しずつでいい。焦るな」

「はい」

 俺は、安心した。

 シエラさんは、俺の成長を認めてくれている。

 それが、何よりも嬉しかった。

「この調子で、もっと慣れていけばいい」

 シエラさんは、続けた。

「お前は、確実に前に進んでる」

「ありがとうございます」

 俺は、深く頭を下げた。

 これも、シエラさんのおかげだ。

 この人がいなければ、俺はまだ王宮で怯えていただろう。

「さあ、行くぞ」

「はい」

 俺たちは、再び歩き出した。

 街の中を進んでいくと、大きな建物が見えてきた。

「あれが、オルフェアのギルドだ」

 シエラさんが、指差した。

「大きいですね……」

 俺は、建物を見上げた。

 ヴァルセリアのギルドよりも、明らかに一回り大きい。

 三階建てで、立派な造りだ。

 入り口も広く、多くの人が出入りしている。

「ああ。オルフェアは、交易の要所だからな」

 シエラさんは、説明を続けた。

「多くの冒険者が集まる場所だ。依頼も豊富だし、報酬も高い」

「そうなんですね……」

「それに、ここのギルドは設備もいい」

 シエラさんは、懐かしそうに建物を見つめた。

「昔、よく来たもんだ」

「昔の仲間と……ですか?」

「ああ」

 シエラさんは、静かに笑った。

「いい思い出がたくさんある場所だ」

「……」

 俺は、シエラさんの横顔を見た。

 どこか、寂しそうな、でも温かい表情をしていた。

「入るぞ」

「はい」

 俺たちは、ギルドの扉を開けた。

 広い――。

それが、ギルドに入った瞬間の率直な感想だった。

 受付カウンターが五つもあり、それぞれに受付嬢が立っている。

 その奥には、大きな依頼の掲示板がある。

 壁一面を使った、巨大な掲示板だ。

 多くの冒険者たちが、依頼を確認したり、報告をしたりしている。

 酒場のようなスペースもあり、冒険者たちが食事をしながら談笑していた。

 そして――やはり、女性の姿も多い。

 女性冒険者。

 女性の受付嬢。

 酒場で働く女性たち。

 俺は、少しだけ緊張したが、以前ほどではなかった。

(大丈夫だ……落ち着け)

 深呼吸をする。

 シエラさんがいる。

 すれ違うだけなら、なんとかなる。

「落ち着いてるな」

 シエラさんが、小声で言った。

「成長してる証拠だ」

「はい……」

 俺は、小さく頷いた。

 シエラさんの言葉が、俺を勇気づけてくれる。

「さて、あいつが来るまで依頼を確認するぞ」

 シエラさんが、掲示板の方を指差した。

「はい」

 俺たちは、掲示板へと向かった。

 掲示板の前には、すでに何人かの冒険者が立っていた。

 それぞれが、依頼書を見ながら、何かを相談している。

 俺たちも、その列に加わった。

 掲示板には、様々な依頼が貼られている。

 魔物討伐、護衛、採取、配達、調査。

 色々な種類の依頼があった。

 推奨ランクも、EランクからSランクまで、幅広い。

「どれにするか……」

 シエラさんが、掲示板を眺めながら呟いた。

 俺も、掲示板を見た。

 だけど、どの依頼が適切なのか、まだよくわからない。

 文字を追うだけで精一杯だ。

「シエラさん、どれがいいですか?」

 俺は、素直に尋ねた。

「そうだな……」

 シエラさんが、掲示板をゆっくりと見ていく。

 その目は、真剣だった。

「お前の訓練に適した依頼を選ばないとな」

「はい」

「人型魔物との戦闘を増やしたいところだが……」

 シエラさんは、呟きながら依頼書を見ていく。

「だが、いきなり強い相手は避けたい」

「……」

「ゴブリンか、コボルトあたりが妥当か」

 シエラさんは、考え込んでいる。

 俺は、黙ってその様子を見守った。

 シエラさんは、いつも俺のことを考えて依頼を選んでくれる。

 それが、本当にありがたい。

「そうだな……」

 シエラさんが、ある依頼書を指差そうとした、その時。

「お姉さん〜?」

 不意に、後ろから声がかかった。

 女性の声だ。

 明るくて、弾んだような声。

 語尾が、少し伸びている。

 俺は、反射的に体を硬くした。

(女性……!)

 心臓が、一気に速く打ち始める。

 呼吸が、浅くなる。

 だけど――足は、動く。

 逃げることはできる。

 シエラさんが、ゆっくりと振り返った。

 俺も、恐る恐る振り返ろうとした。

 だけど――怖い。

 どんな人が立っているのか。

 見るのが、怖い。

 シエラさんの表情を見ると、少し驚いたような、でもすぐに笑顔になった。

 知り合いなんだろうか。

 俺は、ゆっくりと、本当にゆっくりと、振り返った。

 そして――。

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