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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第十六話:克服の壁

 ヴァルセリアに戻り、依頼の報告を済ませた後。

 俺たちは、宿に戻った。

 ギルドでの報告は、シエラさんが全て行ってくれた。

 俺は、ただ黙って横に立っているだけだった。

 部屋に入ると、俺は荷物を置いて、ベッドに座り込んだ。

 体は疲れていた。

 だけど、それ以上に心が疲れていた。

「ライト」

 シエラさんが、俺の部屋のドアをノックした。

「少し話してもいいか?」

「はい……どうぞ」

 シエラさんが、部屋に入ってきた。

 そして、俺の向かいの椅子に座った。

「どうだった?」

 シエラさんが、単刀直入に聞いてきた。

「どう……ですか?」

「今日の戦闘だ」

 シエラさんは、真剣な目で俺を見た。

「人型魔物と戦った感想を聞かせてくれ」

「……」

 俺は、少し考えた。

 どう答えればいいのか。

「正直に言ってくれ」

 シエラさんが、優しく言った。

「お前が何を感じたか、俺は知りたい」

「……はい」

 俺は、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

「やっぱり……人型には、躊躇してしまいました」

「そうか」

「スモール・ボア相手だと、剣を振ることに抵抗はなかったんです」

 俺は、自分の手を見つめた。

「でも、ゴブリン相手だと……どうしても、力が入らなかった」

「人間に見えたか?」

「……はい」

 俺は、正直に答えた。

「ゴブリンは、確かに魔物です。顔も醜いし、人間とは違う」

「だが?」

「でも……体格が、人間に近くて」

 俺は、拳を握りしめた。

「剣を振るたびに、あの日の記憶が蘇ってきました」

「そうか……」

 シエラさんは、静かに頷いた。

「それで、力が入らなかったんだな」

「はい……」

「だが、お前は戦った」

 シエラさんは、俺の肩を叩いた。

「躊躇しながらも、剣を振り続けた」

「でも……」

「俺が手を出したのは、一体だけだ」

 シエラさんは、続けた。

「残りの四体は、全部お前が倒した」

「それは……ゴブリンが弱かったからです」

 俺は、自嘲気味に言った。

「俺の弱い剣でも、倒せるほど弱かったんです」

「それでも、お前は倒した。弱い敵で練習できるうちに、その感触を体に刻むしかねえ」

 シエラさんは、真剣な目で俺を見た。

「それが事実だ」

「……」

「人型魔物と戦って、躊躇しながらも勝利した」

 シエラさんは、立ち上がった。

「それが、お前の現在地だ」

「現在地……」

「ああ。お前は、今ここにいる」

 シエラさんは、窓の外を見た。

「まだ完璧じゃない。だが、確実に前に進んでる」

「でも、俺は……」

「まあ、しょうがない」

 シエラさんは、肩をすくめた。

「人型魔物には、まだ躊躇する。それは事実だ」

「……」

「だが、それを克服するには時間がかかる」

 シエラさんは、俺の方を向いた。

「まだまだこれからだな」

「これから……」

「ああ。お前には、まだ伸びしろがある」

 シエラさんは、笑った。

「今日の戦闘で、お前の課題が明確になった」

「課題……」

「人型魔物に対する躊躇。それを克服することだ」

 シエラさんは、説明を続けた。

「スモール・ボア相手なら、お前は躊躇なく剣を振れる」

「はい……」

「だが、人型魔物相手だと、躊躇が出る」

「はい」

「なら、これから人型魔物との戦闘を増やしていく」

 シエラさんは、真剣な目で俺を見た。

「少しずつ、慣れていけばいい」

「慣れる……」

「ああ。最初は弱いゴブリンから」

 シエラさんは、続けた。

「次は、もう少し強い人型魔物。そうやって、段階的に慣れていく」

「わかりました……」

 俺は、頷いた。

「だが、焦るな」

 シエラさんは、俺の肩を叩いた。

「お前のペースで、前に進んでいけばいい」

「はい」

「それに、俺がついてる」

 シエラさんは、自信に満ちた表情で言った。

「お前が危なくなったら、俺が守る。それは変わらない」

「ありがとうございます……」

 俺は、心から感謝した。

「さて、今日はゆっくり休め」

 シエラさんが、部屋を出ようとした。

「明日は、また別の依頼を受ける」

「はい」

「今日の戦闘を、よく思い返しておけ」

 シエラさんは、ドアの前で振り返った。

「何が良くて、何が悪かったか。それを分析するんだ」

「わかりました」

「おう、じゃあまた明日な」

 シエラさんが、部屋を出ていった。

 俺は、一人になった部屋で、今日の戦闘を思い返した。

 ゴブリンとの戦闘。

 俺は、確かに躊躇した。

 剣を振る力が弱かった。

 だけど――それでも、俺は戦った。

 五体のゴブリンのうち、四体を俺が倒した。

 弱かったとはいえ、人型魔物を倒すことができた。

(これが、俺の現在地か)

 シエラさんの言葉が、胸に響く。

 まだ完璧じゃない。

 だけど、確実に前に進んでいる。

 俺は、自分の手を見つめた。

 この手で、ゴブリンを倒した。

 躊躇しながらも、剣を振った。

 それが、俺の第二歩だ。

(次は、もっと上手く戦えるように)

 俺は、そう心に誓った。

 一歩ずつ、前に進んでいく。

 シエラさんと共に。

 俺は、ベッドに横になった。

 体は疲れていたが、心は少しだけ軽くなっていた。

 今日の戦闘は、完璧じゃなかった。

 だけど、俺は逃げなかった。

 それが、何よりも大切なことだ。

(明日も、頑張ろう)

 そう思いながら、俺は目を閉じた。

 だけど、すぐには眠れなかった。

 今日の戦闘が、頭の中で何度も繰り返される。

 ゴブリンの姿。

 剣を振る感触。

 躊躇する自分。

 全てが、鮮明に思い出される。

(俺は、本当に強くなれるのか?)

 不安が、胸の奥に広がる。

 だけど――シエラさんの言葉を思い出す。

「まだまだこれからだな」

 そうだ。

 まだまだ、これからだ。

 焦る必要はない。

 一歩ずつ、前に進んでいけばいい。

 俺は、深呼吸をした。

 そして、ゆっくりと眠りについた。

 翌朝。

 俺は、シエラさんに起こされた。

「おう、起きたか」

「はい……おはようございます」

「朝食を食べたら、また訓練だ」

 シエラさんは、いつもの調子で言った。

「今日は、昨日の反省を踏まえて、剣の訓練をする」

「剣の訓練……」

「ああ。お前の剣に、もっと力を込められるようにする」

 シエラさんは、説明を始めた。

「躊躇を完全に消すのは難しい。だが、躊躇しながらも、ちゃんと力を込められるようにする」

「わかりました」

 俺は、力強く頷いた。

「よし、じゃあ準備しろ」

「はい!」

 俺は、荷物をまとめて、シエラさんと共に部屋を出た。

 今日も、訓練が待っている。

 だけど、それが嬉しかった。

 シエラさんと共に、俺は確実に成長している。

 まだまだ先は長い。

 だけど、この人と一緒なら、きっと乗り越えられる。

 そう信じて、俺は前に進んでいく。

 一歩ずつ。

 確実に。

 俺の剣は、少しずつ強くなっている。

 そして、いつか――この剣で、誰かを守れる日が来る。

 そう信じて、俺は歩き続けた。



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