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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第百九話:究極の防御連携《永護》

 「……いけます。僕の頭は、まだ、止まってなんかいません」

 血に染まったアルトが、震える足で立ち上がる。その瞳には、かつてないほど濃密な蒼い閃光――演算魔法の極致が宿っていた。

 ライトの白銀の剣が作り出した、わずか数ミリの隙間。クロノスの《時間遡行》が一時的な拒絶反応を起こしているその「記述の空白」に、アルトは全てを賭けようとしていた。

「シエラさん……僕の無限魔力を、ステファニーさんの《生護》に直結させます。二重連結デュアル・コネクトを、全開で」

「……理屈は通ってる。だが代償が重すぎる。精神と魔力の同期がわずかでも崩れれば、お前の人格ごと焼き切れるぞ」

 シエラの言葉は、かつての訓練よりも遥かに厳しい現実を突きつけた。だが、今のアルトは自分が壊れる未来さえ、計算結果として受け入れていた。

「やるしか、ないんです。僕が、僕の魔力が続く限り支えれば、みんなは……!」

「アルトさん」

 悲痛な決意で叫ぼうとしたアルトの肩を、温かい手が包み込んだ。

 ステファニーだった。彼女の指先は微かに震えている。

「……正直、怖いです。でも――一人で急がないでください。私と一緒に、作りましょう?」

 その言葉に、アルトの呼吸がわずかに落ち着く。二人の手が重なり、光の奔流が二人を繋いだ。アルトから溢れる膨大な魔力が、かつてない純度でステファニーへと流れ込む。

「これ……! 供給と消費が、完全に釣り合っています……。アルトさん、大丈夫。今の貴方の波形、私にはとっても優しく聴こえます」

「ステファニーさん……。お願いします、世界から……僕たちを隔離してください!」

 ステファニーが杖を高く掲げ、祈りを捧げる。

「不変、不滅、不動の城塞となれ。この一秒を――《永護パーペチュアル・ガーディアン》ッ!!」

 次の瞬間、淡い黄金のドームが四人を包み込んだ。外界の時間軸から完全に切り離された「隔離空間」。

『……座標の絶対固定による、事象の拒絶か』

 クロノスの声に、わずかな歪みが混じった。漆黒の大鎌を振り下ろす。あらゆる物質を遡行させ、消滅させる神の刃。

 だが――キィィィィィィィンッ!!

 

 神の鎌が、神ならざる理に弾かれた、あまりに硬質な音が響く。

『……時間遡行が、機能しない。理解不能な拒絶だと……!?』

「そうです。隔離されたこの空間を、あなたに遡行させることはできない……!」

 アルトが叫び、再び次の一手を絞り出そうと脳を酷使し始めた。「……まだ、計算が枝分かれして――」と血の気の引いた顔で呟く。その思考の暴走を、ステファニーの腕が優しく止めた。

「アルトさん……」

 耳元で、聖母のような声が響く。

「私の盾の中で、少し休みませんか?」

 その一言で、アルトの張り詰めていた緊張が、ぷつりと切れた。

 ドームの中には、嘘のような静寂が満ちていた。外ではクロノスが時間を加速させ、猛然と鎌を叩きつけているが、ドームは揺らぎすらしない。

「……あ……」

 アルトは初めて、自分の肩が激しく震えていたことに気づいた。ライトは歯を食いしばり、白銀の剣を強く握り直してアルトを見つめている。レイナもまた、杖を握る拳に力を込め、何も言わずに力強く頷いた。

「……すみません。僕、また……一人でやろうとしてました」

「いいんです。ここは、アルトさんの『帰る場所』でもあるんですから」

 ステファニーの言葉に、シエラもまた、剣を収めはしないものの、不敵に笑った。

「アルト。お前がここで休んでる間に、俺たちが外の時間の化け物をどう壊すか、ゆっくり考えてやるよ。お前の演算があれば、不可能じゃねえんだろ?」

 アルトの瞳に、ようやく「知性」と「落ち着き」が戻る。

「……ありがとうございます。皆さん。少しだけ……時間をください。この《永護》という完璧な隔離空間の中で、あいつを解体する『一秒』を組み立てます」

 黄金のドームの中で、絶望は消え、静かなる闘志が灯る。

 この瞬間、誰一人欠けることなく、勇者パーティは真に一つになった。

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