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20 愛、解放




【リリー。ここからは、逃げは無しだ】

【うにゃあ】


 シュッ、という風切り音と同時に、初撃から華城の横っつらを猫パンチが捉えた。

 勢いそのままに水平回転して、回し蹴りと猫パンチを目にも止まらぬ速さで打ち分ける。一発の威力は低いようだが速度域は八雲先生と遜色ないレベルで、華城はまるで回避できていない。


【……! この】


 ようやく華城の(うめ)きを引き出すことができたと喜んだ矢先、リリーの視覚はまたもや廊下の床を映す。

 ステータス欄には「|Restoration 7sec《復元完了まで7秒》」と表示され、復元までのカウントダウンが始まっていた。視界の端のアバターは、綺麗に袈裟斬りで真っ二つ。

 

【っっ……このバカチンが。マジで鬱陶しいなこの技、何回あたしのことこんな姿にする気にゃ!?】

【リリー。あいつの技、全く見えないし全然正体がわかんないんだけど。いったいどうやってるんだろ……】

【あたしの見立てで言うと、おそらく見たものを真っ二つにする能力にゃ】

【どういうこと? 剣じゃないの? だって『竜殺しの聖剣(アスカロン)』って言われてるんだよ?】

【剣は今までのところ一回も見えてないよね。あたしがやられる前には必ずあいつの瞳が光ってて、その直後に分断される。その状況がそっくりそのまま技だと仮定すると、『目で見たものを分断する能力』ってことになるにゃん】


 なんだよそのチート技。

 つまり、華城の視界に入ったら負け確定ってこと?

 リリーを具現化させてる本体の僕は、華城に見つかった時点で全部終わりと思っていいだろう。


【ねえリリー。君の『誘惑(テンプテーション)』と『着せ替え人形(コスプレイヤー)』は同時発動できないの? そうすれば勝てると思うんだけど】

【ステータス欄を見てて】


 復元を完了させたリリーは、とんでもなく太くなった太ももの筋力を全開放して一直線に華城へと襲いかかった。目で追える領域を完全に超える神速だ。

 が、今度は一撃すら入れることなくリリーは分断されて沈んだ。


 復元しては殴りかかるを繰り返す。

 ステータス欄に意識をやると、斬られていない間は緑文字が二段縦並びで二つ表示されていた。

 一つはエロ猫獣人だが、その下にあるのは「誘惑(テンプテーション)−性奴隷ver.」だ。

 見る限り、どうやら既に同時発動していたらしいが……


【さっきからずっとやってるけどダメなんだ】

【どういうこと?】

【普通の人間に発動するのと違って、ヒーロー同士の場合はTP値が相手を上回らないと効き目が極端に弱まるんだ。エネルギーの強いほうが勝っちゃうんだよ】


 くっそ。そう都合よくいかないか。

 しかしそれは、僕のTPが華城のTPを上回らない限り勝てないことを意味している。

 絶望的なほど現実的な戦闘。ヒーロー同士で戦うってのは、こういうことなのか。

 リリーを分断させた華城は、復元を待たずに先を急ごうとする。


【おい待てってトップヒーローくん。女の子をこんな姿にしといて放っていくっての?】

【君はエネルギー体だからいくら攻撃しても死なない。倒すには、本体である星井を殺すしかないんだろ】

【バレてたにゃん☆】

【復元までは7秒くらいか。その度にこうやって追いかけられるのは面倒臭いが、何度やろうが俺のことは倒せない。星井を見つけて先に全てを終わらせるのは俺だ】


 人間の動体視力ではどうにもできない速度域にも対応するところからして、目で動きを捉えることは能力発動の条件ではないらしい。見えない範囲に隠れれば攻撃してこないから、視界が関係しているのは間違いないと思うけど……

 つまり、視界に居るだけ(・・・・)でダメなんだ。もしかすると全自動照準(オートエイミング)なのかもしれない。


「どうしたの、ユウキ」


 薄暗い体育倉庫で僕を呼びかけるハナの声。

 華城との死闘に向いていた僕の意識を、ハナが優しく引き戻す。

 2000万超えのTP値でも瞬殺かぁ……。


「うん……やっぱ華城は強いなって」

「ねぇユウキ、私といるときにあいつの名前を出すのやめようよ。全然未練があるとかじゃないけど、私たちの時間にあいつが割り込んでくること自体がクソじゃない? 二人でいる時は私のことだけ見てほしいんだ」

「そう……だね。クソって。ハナって普段清純そうに見えるのにギャップがすごいよね」

「そう? でもそれって周りの人が勝手に作った私の印象でしょ」

「まあ、確かに」

「こんな私、嫌い?」

「ううん。すごい好き」

「私も、ユウキのこと、大好き、だよ」

 

 顔が熱くなる。

 普段エロ動画を見ている時とはまた違う、彼女のことが(いと)しくなる感情。

 

「だから、もっと色々言っていいよ。私のこと、どうしたいか。ううん、命令して。(しつ)けてください……」


 なんちゅう従順な目で僕を見るんだ。

 そういやさっきも「どうしたら悦んでくれるか知りたい」だなんて言っていた。

 この子こんなクソレベルのMだったんだ。ずっと自分のことMだと思ってきたけどなんかこの子のせいで妙なところが開発される。

 あれ? ということは、メイド服なんか着せて、僕の欲望のままこの()に色々と命令して奉仕させることも……?

 

 ギィン!


 TP値は性的興奮度によってなかなか激しく上下する。でも、思念の解放率ソーツ・リリース・レートと呼ばれるTRRに関しては今までほとんど動かなかった。三人の不良を倒したあの時に5%へ上がったっきり、ずっと上昇しなかったんだ。

 そのTRRが、今、ようやく変動を始めた。

 現在数値は20%だ。

 

【ぐはあああっ】


 苦しそうな華城の叫び。

 リリーのボディブローが深々と華城の横っ腹に突き刺さっている。今度の攻撃はさっきまでより重そうだ。速さはそのままに威力がズシッときてる感じ。

 リリーの視界に見える彼女の体は、露出の激しい猫獣人のものじゃない。でもどこかエロくて。

 完全に知ってる。これも大好きなアニメのキャラだから。


 黒ベースに白エプロンみたいなヒラヒラがついた、誰が見てもメイドな彼女に。

 ミニな感じのスカートとタイツの間にはガーターベルトが見えている。

 

【くっそ……また姿が変わった? まさか、こ】


 ボディブローからの返す刀でリリーの拳が華城の顔面にめり込む。トップヒーローが纏うエネルギーオーラの鎧ですら防御しきれなかったらしい。

 つまりそれは銃弾をはるかに超える殴打の証明だ。まともに受けた華城は、血を撒き散らしながら廊下を20m以上吹っ飛んだ。

 僕にはわかる。これは「愛」だ。ハナのことを(いと)しいと思う気持ちがTRR値を動かした。 

 

【キミだけの着せ替え人形(コスプレイヤー)★mode:暗黒メイド・ルルカ】


 それによって変化したTP値は現在9000万を突き抜けた。

 リリーは仰向けに倒れた華城の頬をグリグリと(かかと)で踏み(にじ)り、パンツが見られるのを気にも留めずに見下した。

 

【奴隷風情が生意気な。ご主人様に散々盾突いたお仕置きをたっぷりして差し上げなくてはね?】



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