act10 今後の方針
その後、僕等は再び僕等は借りている酒場の厨房に戻った。
「いやいや、お城では色々な情報を得られたね。だけど、問題点がいくつも見えてきたよ」
祖母ちゃんは椅子に腰を下ろしたと同時にふうと息を吐く。
「そうだね、ビュルギャ・コシチェイが偽情報を流している事とか、ビュルギャ・コシチェイはそこまで王族との繋がりがある訳じゃない事、エリクサーは無いと言っていたけど、恐らく存在するんじゃないかという事、そして、アクアがドラゴニュート族のフレデリック王子と付き合う事も、ドラゴニュート族になる事も、人魚の国では認められそうにないという事が解った気がするよ」
僕も素直に思ったことを言及する。
「ああ、その辺りは、かなり厳しい状況だね」
祖母ちゃんは顔を横に振った。
「な、なんでですか! そ、そんな事ないですよ。私がフレデリック様と付き合う事とか、付き合って結ばれる為にドラゴニュート族になる事も平気です!」
アクアは必死な表情で訴えてくる。
「いや、さっきの王様の話を聞いた限りじゃ、かなり厳しいよ、まず一番大きな問題は、アクアが王女様だって事だね、それも王位継承権がかなり上の方だっていう事が……」
祖母ちゃんがアクアに改まって質問する。
「アクアには姉妹がいるんだろ? 全部で何人いるんだい?」
「えっ、私の上にはマリン姉さまがいるだけだけど……」
「おおっ、王位継承権第二位かい…… そして一位と二位しか居ないと……」
「で、でも、次の王はマリン姉さまが女王になれば良いじゃないですか?」
「じゃあ、マリン姉さんの次の代はどうするんだい?」
祖母ちゃんの問い掛けにアクアは必死な顔で答える。
「マリン姉さまの子供が継ぐわ!」
「じゃあ、マリン姉さまが子宝に恵まれなかったら?」
「えっ……」
アクアは固まる。
「その場合は?」
「そ、その場合は…… 私?」
「ご名答だよ、その場合はマリン姉さまに何かがあったら次はアクアあんたが女王になる。そしてマリン姉さまに子供が出来なかったらアクアの子供が王か女王になる訳だ」
「…………」
アクアは納得できないような表情で僕等を見ている。
「だから、アクアは人魚の夫を迎えて、人魚の子供を産む必要があるんだ。王国としてはドラゴニュートになっている場合じゃないんだよ」
「で、でも、お父様とお母様も頑張って男の子を授かろうとしているわ、マリン姉さまもミッチェルと付き合っているから子供だって出来るわよ、別に私じゃ無くたって」
恋人の名前はミッチェルというのか。そしてあの老体をまだまだ頑張らせようというのか……。
「まあ、本当にそれで子供が産まれてくれば、アクアは自由にしていいと言ってくれるかもしれないけど、だとしてもドラゴニュートなるのは流石に反対されそうな気がするよ、それだけじゃなくそのドラゴニュートになれるって薬も怪しい感じだしさ……」
祖母ちゃんは包み隠さず本音を言う。
「ちょっと、ちょっと待って、そ、その件は一旦ちょっと置いて於いて、ビュルギャ様が偽情報を流しているというのはどういう意味なんですか? 余り変な事言うなら、いくら先生でも私も怒りますよ」
アクアがムキになって言う。
「いやさ、フック海賊団をビュルギャが退治したみたいな話を王様が言っていたろ?」
「え、ええ」
「実はフック海賊団を倒したのはあたし達なんだよ」
「えっ?」
「いや、だからフック海賊団を倒したのはあたし達で、実際の所はフック海賊団ってのはビュルギャ・コシチェイの部下みたいな存在だったんだよ」
アクアは手で口を押えて唖然とした表情だ。
「そ、そんな事って……」
「それで、フック海賊団はビュルギャ・コシチェイにエリクサーを献上しようとして略奪行為をしていたんだ。だから色々変な感じなんだよ、王様はエリクサーは無いと言っていたけど、ありそうな気配があるしさ」
「そ、そうですね…… 今の話を聞いている限りでは、真偽の程はビュルギャ様に直接会って問い質す必要があると思うけど」
アクアは顔を強張らせている。
「そうだろう。あたしもそう思うんだよ、そして、ビュルギャ・コシチェイに話を聞いて問題がありそうなら、倒さなければならないと考えているよ。王様も仰っていたけど、相談役や占い師として、困った時は指南をうけるような感じらしいけど、王国として必ず居なければならない存在まではいかないようだし、実際の所、多くの人に害を齎す悪の存在だったとしたら倒して後で、事情や状況を説明すれば理解を得られると思うんだよ」
熱く説明する祖母ちゃんの横でハルシェシスも声を上げる。
「そうね、もう、そろそろそういった段階まで来た気がするわね、色々な状況の確認をする必要がね……」
「まあな、もう本人に話を聞くのが一番手っ取り早いよな」
バステトはうんうん頷く。
「じゃあ、今後の動きとしては、バトモス島に行ってビュルギャ・コシチェイと直接話をする感じで良いかい?」
祖母ちゃんが全員に視線を送って確認するように問い掛ける。
「祖母ちゃん、それはいつにする気?」
僕は問い掛ける。
「じゃあ、明日なんてどうだい?」
祖母ちゃんの声に皆は小さく頷いた。その上でペータが手を挙げ発言する。
「ただ、戦闘になる可能性もあるし、相手は強いと思われるし、武器や道具や薬なんかは揃えておいた方が良いと思うぞ」
「ああ、準備を整えるのは必須だね。この後の時間はそれに当てよう。バトモス島までの船の手配もしなきゃだし、じゃあ明日、バトモス島に行くよアクアは良いかい?」
「は、はい、先生、私もビュルギャ様に貰った薬の事とか色々聞きたいと思います」
アクアは真剣な顔で答えた。
そんなこんな、明日、僕等はバトモス島へ赴く事になったのである。




