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♠アンデルセンログ 異世界見聞録  作者: Y・セイ
♠Episodeー five 人魚国と海の魔女
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act9  人魚王との謁見

  いずれにしても、フレデリック王子とアクア王女の恋は芽生え、二人はデートを繰り返していた。完全に付き合っている状態だ。


そんな舞台裏で僕等はビュルギャ・コシチェイの事を探っていった。貸してもらっている酒場の調理場でアクアに教える料理のレシピを考えながらだ。


 因みに海の魔女は矢張り人魚の国の沖に浮かぶバトモス島という島に住んでいるようだ。ただ妖精の国の方でアダーストーンを部下を使い奪おうとした事や、人魚の国にあるというエリクサーを奪おうとしているような噂は聞こえて来なかった。


 ただビュルギャは体の半身に火傷のような傷を負っていて、それを治療しようとしているような話は入ってくる。


「う~ん、状況を確認すると、ビュルギャはまだ怪我が治っていない状態で、それを直す為にアダースト―ンやエリクサーが必要だと考えているって事だね……」


 祖母ちゃんはヴィーテを右手に顎に左手を添えながら考え込んでいる。


「とはいえ、祖母ちゃん、人魚の国にエリクサーが有るのか無いのかという部分は不明なままなんだよね」


 そんな僕の一言を受けたペーターが声を上げる。


「確かに、そこら辺はアクアとかアクアの両親の王や王妃に聞くしかないだろう。妖精の国ではアダーストーンが奪われそうになって大変な事になっているって伝えて、もし人魚の国にエリクサーがあるなら厳重に保管をするように伝えるとか」


「まあね、とにかく、一度王様にお目通りをお願いしたい所だね、エリクサーの事、ビュルギャをどう思っているかとかの事、アクアの将来をどう考えているのかとかの事を聞きたいしさ」


「となると、アクアは王女なんだからアクアに引率してのが一番早いと思うけど……」


 ペーターが腕を組みながら呟く。


「そうだね、アクアに促してみようかね」


 そんなこんなで、祖母ちゃんはアクアに王に会いたい旨を告げた。


 しかし、アクアは何やら後ろめたい気持ちがあるのか中々うんと言わず渋っている。


 結局、ドラゴニュート族という言葉は一切言わないという強い口留めを強いられた上で、何とか王への謁見に納得してくれ引率してもらう運びとなったのだ。


「いやいや、人魚のお城って、どんな感じなんだろう、ワクワクするね」


 遠浅の海の中を歩き進みながら僕は言及する。僕等の目の前には水晶で出来ているという半透明なお城が聳え立っていた。


 人魚族にとっては水は道であり、濡れる事に躊躇いのない人魚には桟橋や橋は余り必要ない物なのである。僕等は大変だが。


 サブサブと水の中を進み、僕等はいよいよ人魚の城の入口までやってきた。


「絶対に口を滑らしたら駄目だからね、皆、気を付けてよ、先生もお願いしますよ」


 アクアは厳しい顔で注意してくる。


「わ、解ってますよ、大丈夫ですよアクアさん、そこの所は言いませんから」


 僕はアクアを安心させるように伝える。


 水晶の城、いや氷の城といった雰囲気の城の内部へと足を踏み入れる。透き通る光、高く響く音、神聖な神殿といった雰囲気だ。幅の広い透明な水晶の廊下を進み、大扉を抜けると、王座の間といった場所に至った。


「お父様、お母様、知り合いになった冒険者が、是非、王と王妃に挨拶をしたいって言ってるので連れて来ました。中々凄いのよ、南ニダヴェリールで鳥と獣が戦争になりそうになったのを止めたり、妖精の国ではデュラハン退治をしたりと活躍をしたみたいで……」


 アクアが僕達の事を紹介してくれる。


 奥の段の上には、大きな王冠を被った男人魚と小さな王冠を被った女人魚が並んで立派な椅子に座っていた。二人とも体には色々な装飾品が施されており、胸辺りは鎧のような物を身に付けている。


 そんな王と王妃の斜め前には髭を生やした年寄り風の人魚が立っていた。


「こちらに居られるのは、人魚の国の王オケアヌス様と王妃テティス様で御座います。皆さま頭をお下げください」


 髭を生やした執事風の人魚が僕等に促してくる。


「はっ、王並び王妃様、この度はお目通りを許可して頂き感謝致します」


  祖母ちゃんが頭を下げ丁寧な口調で感謝の意を口にする。


「ほう、戦争を止めたり出来るとは、中々優秀な者達のようじゃのう。武力……戦闘力…… に優れているといった感じかのう」


 王は僕等を睥睨しながら声を掛けてくる。


「ええ、紛争や揉め事を治めるのは得意です。人魚の国で気になる事がありましたら是非解決致しますので何なりとお教えくださいませ」


 祖母ちゃんはビュルギャ・コシチェイとの接点を意識してなのかそんな声掛けをする。


「紛争や揉め事か…… 人魚の国は平和だからのう、特にそういったことは無いが……」


 揉め事はないのか?


「先だって、妖精の国を通った際、妖精族の方から、人魚の国と妖精の国の沖合で海賊一味が略奪行為をして迷惑しているという話を聞きましたが、こちらではその辺りの影響はありませんでしょうか?」


 祖母ちゃんは探りを入れるように質問する。実際の所は既に僕等が海賊一味を倒してしまった状況だけど。


「いや、少し前にそういった事があったが、我が国の沖合いに住む、海の魔女が海賊を退治したと聞いておる。なので現在は特に問題はないが……」


 そうきたか、フック海賊団は海の魔女の手下だ。海の魔女の指示で略奪行為をしていたのだ。そして退治したのは僕等であって海の魔女ではない。


 魔女の都合の良いように話を摩り替えられているようだ。


「そ、そうなのですか、ところで、その海の魔女様というのはどういった方なのでしょうか? 海賊団を退治するとは随分お強いように感じますが……」


 祖母ちゃんは敢えて事実を伝えず質問を続ける。


「うむ、昔から人魚の国の沖にあるバトモス島という所に住んでおり、一応、呪い師や占い師、魔法使いといった存在じゃ、まあ常にバトモス島にいる訳じゃなくどこか違う場所に住んでいる事もあるらしいがのう」


「違う場所に住んでいる? じゃあずっと人魚の国に住んでいる訳じゃないのですか?」


「うむう、しばらく前は別の場所に行っていて、10年程不在だった時期もあったのう」


「なるほどです……」


 祖母ちゃんは顎に手を添えて少し考えてから言葉を発した。


「その海賊一味の目的の物なのですが、なんでもエリクサーという妙薬を求めていたとか、となりますとエリクサーは海の魔女のお陰で無事だったということですか」


 その祖母ちゃんの一言にオケアノス王の顔色が変わった。


「むむむ、海賊がエリクサーを奪おうとしていたというのは本当なのか?」


「ええ、妖精の国の方ではアダーストーンが奪われそうになっていましたし、その事は事実だと思います」


「むむむむむむ……」


 オケアノスは顔を顰めて唸り声を上げる。


「因みに、アダーストーンもエリクサーも伝説級の代物といわれていますが、妖精の国にはアダーストンがありました。人魚の国にはエリクサーがあったりはするのでしょうか?」


 祖母ちゃんはさりげなく問い掛ける。


「い、いや、エリクサーなどというものは、この人魚の国には存在せん。海賊共め、へ、変な噂に惑わされおって……」


 動揺を隠しきれていない様子でオケアノス王は答える。


 だが、その言い方を聞いた僕は嘘だと感じた。


「そうなのですか、エリクサーは存在しないと……」


 祖母ちゃんは感情の無い声で呟く。


「ああ、そうじゃ」


「まあ、いずれにしても海の魔女のお陰で海賊は退治されたとのことですので、現在は憂いは無いという事なのですね、ところで、海の魔女は、海賊退治以外でも何かこの国の為に尽力されたことなどはあられるのでしょうか?」


「ああ、占い師や呪い師として、色々アドバイスをくれておるぞ、呪いを解いてくれたり、不漁の際の解決法を教えてくれたりのう」


「なるほどです」


 フック海賊団退治は実際に行っていないとなると、他は大した事はしていないようだ。


「となりますと、海の魔女は人魚の国にとっては居てもらわねばならない貴重な存在という位置付けなのでしょうか?」


「まあ、そこまでではないが、いざという時は相談役として話を聞いて欲しい存在ではあるな、こちらの知らない知識をもって解決策を見出してくれたりするのでな」


 オケアノス王は軽く笑う。


「なるほどです」


 祖母ちゃんは頷いた後に改まり話を切り替える。


「恐れ入りますが、私達は王女アクア様とお近づきになれ、色々仲良くさせて頂いておりますが、アクア王女様は将来王族として重要なお立場になられる予定で御座いますか?」


 傍にいるアクアは表情を堅くした。


「ああ、今後アクアの弟、次代の王が生まれてくれば、王の補佐の立場、もし生まれて来なければ女王としてこの人魚の国の長として収まり、子を成して次世代の王を育成してもらわねばならんと考えておる。他に王女もおるがその者が子を成せるとは限らんのでな」


 つまり王と王妃の間に王子が生まれて来なければ女王として君臨する必要があるという事だ。ドラゴニュート族になんて成って良い状況とはとても思えない。


 その王の言葉を受けた祖母ちゃんは小さく何度も頷く。横ではアクアが緊張した面持ちを見せている。


「畏まりました。色々お話を聞かせて頂きありがとうございます。いずれにしても、私達は紛争や揉め事を治めたりは得意分野でございます。人魚の国滞在中は色々とお手伝いを致しますので何なりとご指示くださいませ」


「ああ、そういった場合は相談させてもらおう、まあ、我が国の滞在を楽しんでくれ」


「はっ」


 そんなこんな、王との謁見は終了し、僕等は王座を後にした。



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