act8 海の魔女
「因みに、その薬って誰から入手したんだい? 信用できる出所からの物なんだろうね? 薬ってやつは副作用とかがあるから怖いよ、それとその薬は元に戻れるのかい?」
祖母ちゃんは忠告と質問をする。
「ええ、効果はあると思います。魔女からもらった物ですから。まあ副作用とかはよく解りませんけど…… ただ、残念ながら変身したらもう元には戻れないって聞いてます」
「えっ、魔女だって、その薬は魔女から入手したのかい?」
祖母ちゃんは驚きの声を上げる。
「ええ」
「まさかと思うけど、そ、その魔女の名前は、ビュルギャ・コシチェイって名前じゃあないだろうね?」
祖母ちゃんは危機感を表情に現しながらアクアに問い掛ける。
「ええ、そうです。ビュルギャ様という人魚の国に住んでいる海の魔女で、占いをしてくれたり、人魚の願い事を聞いてくれたりしている存在です。私の話を聞いてその薬を用意してくれました」
アクアは危機感が無さそうな表情で答えた。
「海の魔女…… その魔女は人魚の国ではどういった位置づけなんだい?」
「位置づけですか…… まあ、人魚族全体の相談役といった感じでしょうか、呪師とかそんな感じです」
「な、なるほどね…… ただ一応、言っておくけど、その薬を飲むことをあたしは反対をするよ」
「えっ」
祖母ちゃんの声にアクアは何故といった表情で首を傾げた。
「あたし等はこの人魚の国に来る前に、この世界で暗躍をしているコシチェイと名前が付く者達に遭遇していてね、そいつらは色々な国を混乱させようとしていたんだ、ある所では王子をカエルの姿に変えたり、ある所では森林を氾濫させて国を滅ぼそうとしていたり、またある所では獣と鳥を喧嘩させて両方の国を弱らそうとしていたんだよ」
「コシチェイと名乗る者達が悪い事をしていたと言うのですか……」
「うん、それだけじゃなくて、ビュルギャ・コシチェイという人物はペーターの仇なんだ。ペーターの親友を殺されたっていうね」
祖母ちゃんはペーターに視線を送る。
「えっ、ビュルギャ様はペーターさんの親友の仇なんですか?」
「ああ、その辺りはペーターから聞いた方が良いと思うよ」
祖母ちゃんは手招きでペーターを呼ぶ。
ペーターは厳しい表情をしながら近づいてきた。
「ああ、アクアさん、俺もその薬を飲むことは反対だし、かつて俺が知っているビュルギャ・コシチェイという奴は、触媒となる人間を集める為に学園を経営してしていたんだ。学園長という立場でな、それで俺の親友はその暗部を明かす為にビュルギャ・コシチェイに詰め寄った所、殺されてしまった。だが、親友が反射呪文を使ったことで、ビュルギャ・コシチェイは大怪我を負って姿を消した……」
「そんな事が…… 確かに海の魔女ビュルギャ様はちょっと前に大怪我をしたという話を聞いたことがあったけど……」
アクアは思い返すような顔で答えた。
「そうか、矢張り大怪我をしていたのか……」
ペーターは納得した様子で頷く。
「ねえ、アクアさん、ビュルギャ・コシチェイという存在は信用できないよ、あんたがドラゴニュート族になる薬をもらった件も何か裏の企みなんかがありそうだよ、若しかしたら人魚の国を崩壊させるような事を企んでいるかもしれない」
改まって祖母ちゃんが言及する。
「そ、そこまでは考えすぎじゃないですか? ビュルギャ様は優しい人でしたよ、そんな事を企んでいるとはとても思えませんでしたけど……」
アクアは会った時の印象を思い返しているような顔で答える。
「まあ、海の魔女の正体の見極めにはもう少し時間がいるかもしれない。だけど、そんな怪しげな薬は飲んじゃ駄目だよ、本当に油断は禁物だからね」
祖母ちゃんは厳しい顔でアクアに詰め寄る。
「…………わ、解りました。先生がそこまで言うなら従います」
アクアは渋りながらも同意した。
「ああ、そうしておくれ、本当に危ないからね」
その返事を貰った祖母ちゃんは少し安堵の表情を見せた。




