act5 恋愛講義 その1
「まあ、慌てるんじゃないよ、お酒を飲みながら話そうじゃないか、恋の話って奴は大体酒なんかを飲みながらするものさ」
祖母ちゃんはアクアを制しながら言った。そんな事を言ったら未成年の場合はどうすんだろう?
そして場の雰囲気を楽しむかの如く小さく鼻歌をふんふん歌っている。
「お待たせしました、ヴィーテを6つに、貝と海藻のサラダ、貝の炙り焼きで御座います」
ふわりと良い匂いが鼻につく。とても美味しそうだ。
「じゃあ、人魚の国に乾杯だ!」
「良いわね、パステトちゃん乾杯よ」
ハルシェシスがグラスを差し出す。
「えっ、お前とかよ、仕方がねえな……」
僕はペーターにグラスを向ける。
「ペーター乾杯だ」
「ああ、乾杯!」
ペーターは面倒くさそうにしながらもグラスを合わせてくれた。祖母ちゃんはアクアとグラスを合わせている。
「おっ、この酒は凄く甘いね、甘くて香りがとても良いよ」
酒に口を付けた祖母ちゃんが声を上げる。
「確かに甘いわ、だけど凄く美味しいわよ」
ハルシェシスは微笑む。
「さてと、それじゃあ、ヴィーテもきたし、恋愛テクニックの講義に移るとしようかね」
祖母ちゃんはニヤリと笑う。
「それじゃあ先ずは状況確認をしとこうかね、因みにアクアさんがどの辺りまで望んでいるかなんだけど?」
「どの辺りまで望んでいる? それはどういう意味ですか?」
アクアは解らないといった表情で首を傾げる。
「いや、付き合ってデートを重ねキスをしてって所位までなのか、その先の結婚するまでを考えているのか、その辺りなんだけどさ……」
確かに一生添い遂げるまでいくと相当難しくなりそうだ。
「私は結婚まで考えているわ」
アクアは即座に自信満々に答える。相当難しい方だった。
「そ、そこまで本気なのかい、凄いね……」
祖母ちゃんは頭を掻く。
「デートを重ねキスをするまでだったら比較的簡単なんだけど、結婚までいくとなると随分厄介だね……」
「どうしてですか?」
「いやいや、ちょっと考えてみなさい!」
「えっ?」
「種族の問題があるでしょ、種族の問題がさ!」
アクアは、ああそれか、といった表情をする。
「そんな事は気にしてません、愛があれば大丈夫です」
「いや、愛だけじゃどうにもならん問題もあるでしょ!」
祖母ちゃんは熱く説明する。
「どうにもならん問題? 何それ?」
「ほ、ほら、子供とかだよう」
言い辛そうに祖母ちゃんが伝える。
「大丈夫です。愛があれば出来ます」
「えっ、ほ、本当かい?」
「ええ」
アクアの答えに、祖母ちゃんは諦め気味にふうと息を吐いた。
「な、なら、そこん所はあたしからはもう何も言わないよ、じゃあ、取り敢えずデートを重ねてキスをするまでに持っていこうじゃないか」
祖母ちゃんはもう種族の話をするのを諦めたようだ。そして、グラスに残るヴィーテをグイッと飲み干す。
「兎に角、先ずはお礼をしたいと伝えて二人きりで会う事から始めよう。それで確認なんだけど、ドラゴニュート族も人魚の国に入るのに制限があったりするのかい?」
「ええ、あるわ、だから私はあの芝居を人魚の国を出た所でやっていたんじゃない」
「成程ね、じゃあ、次に会う場所も人魚の国以外だね。何だったらあたし等のメンバーが使者として行っても良いと思っているんだけど」
「その辺りは是非お願いするわ」
アクアは頷く。やらせる気満々だった。
「よし、じゃあ、第一弾は褒め~る大作戦だよ」
「褒め~る大作戦? 何ですかそれ?」
アクアはキョトンとした表情だ。
「良いかい、褒められて嫌な奴はいない。どんな奴でも褒められれば喜ぶ。先ずは褒めて褒めて褒めまくって、気に入られるんだよ、そして、あのフレデリックとかいう王子の好きな事、好きな物、好きな食べ物なんかを聞き出すんだよ」
「成程……」
「そして、聞き出したその好きなものもまた褒める。褒めて褒めて褒めまくるんだ」
「た、確かに、私がそれをされたら、その人の事を人として好きになっちゃうかもしれないわ」
祖母ちゃんの説明を聞いていたアクアは納得気味にうんうん頷いた。その声を聞いた祖母ちゃんは手を叩く。
「だろう! そうなんだよ、先ずは異性として好きにならせるんじゃなくて、人として好きにならせるんだよ解ったかい?」
「はい、先生」
とうとうアクアが祖母ちゃんの事を先生と呼び始めたぞ。




