act4 デュラハン
「さてと、ティンカーベルさんや、その首から上のない騎士が何者か知っているかい? いつからそこに居て、何処から来て、何でそこに居るのかなんだけど……」
祖母ちゃんはティンカーベルに質問をする。
「えーっとね、現れたのは三か月位前で、何か、ずっとそこに留まっているんだよ。で、あたい達妖精は困ってるわけ、その首から上の無い騎士の正体を知っているかって? そんなん知る訳ないじゃない、正直、こっちが知りたい位だよ」
ティンカーベルはエールを飲みながら答えた。それを聞いた祖母ちゃんが少し考える。
「う~ん、正体がよく解らないか…… じゃあ、その首から上が無い騎士の魔物の目的は、自分の首を探しているって事なのかね? それとも無念の死を迎えて、死にきれなくて霊になって現れているとか……」
祖母ちゃんは小さく呟く。
「いや、ちょっと待ってくれ、その首無し騎士ってのがデュラハンだったとしたら、そいつは妖精だと思うぞ」
祖母ちゃんとティンカーベルの問答を聞いていたペーターが指摘する。
「首無し騎士が妖精?」
「ああ、デュラハンって奴は墓場付近に住んでいる死神みたいな妖精なんだけど、そいつの姿は騎士の姿で小脇に頭を抱え馬に乗っているって言われているんだ。そのデュラハンは、これから死んでしまう人や死んでしまった人がいる家に現れるみたいな話を聞いたことがあるぞ」
「死神みたいな存在か…… という事は死者の魂を冥界へ送り届けるような役割も担っているって事かな? だから墓場に住んでいると……」
「そこら辺は、俺には解らないけどな……」
ベータ―は顔を横に振る。
「ドリュアス様の話によると、その首のない騎士が現れてから、墓に埋葬された妖精のオドが神樹に戻れなくなって困っていると言っていたよね、だから退治して欲しいと…… って事は死んだ妖精の魂をワザと神樹に戻さず、邪魔をしている可能性があるって事だね」
祖母ちゃんが少し整理しながら言及する。
「そうか成程ね、妖精の国としては死後の魂は神樹に戻るとされているから、デュラハンに魂を冥界とかに連れていかれると困るって事かしら……」
ハルシェシスは腕を組んで考えながら祖母ちゃんに質問する。
「本能的に死者の魂を冥界に連れて行こうとしているなら、まだ勘違いって事になるけど、敢えて妖精の魂が欲しくて神樹に戻さない様にしているって可能性もあるね。その場合は陰謀の匂いがするよ……」
祖母ちゃんも猜疑的な顔をする。そしてティンカーベルの方へ視線を送る。
「ティンカーベル、妖精の魂って狙われやすいのかな?」
祖母ちゃんの問い掛けにティンカーベルは頷く。
「そりゃあ、貴重だから、狙っている奴は多いよ、そんなの当たり前じゃない」
「じゃあさ、それは、どう貴重なの? 妖精の魂は何に利用出来たり、妖精の魂は何が出来るの?」
「え~とね、単体だと余り意味はないらしいんだけど、沢山、物凄おおおおおおおおく沢山集まると、賢者の石になると聞いたことがあるけどね……」
ティンカーベルは顎に指を立て答える。
「賢者の石か…… 成程、話が繋がってきたね。となるとデュラハンは陰謀を企んでいる奴の仲間だとか手先だという可能性が高くなってくるね、若しかしたらフックっていう海賊の手先の可能性も……」
祖母ちゃんはそう言いながら酒場の店主に視線を送る。
「ねえ店主さん、確かあんたから聞いた話だと、フックという海賊はアダーストーンを狙っているって言っていたよね?」
「あっ、ああ、噂だけど、その為に略奪を繰り返してるって聞いたぜ」
ノーム族の店主は、少し離れたカウンター越しに返事をしてくれた。
「アダーストーンも賢者の石も同じような効果がある。下手をしたら同一の物だって説もある。だから狙われていると……」
「つまり、アダーストーンや賢者の石を守る為に、アタシ達はデュラハンを退治するって事なのね」
ハルシェシスが言い放つ。
「そういう事みたいだね」
祖母ちゃんは納得顔で頷いた。
「さてと、じゃあ、情報も集まったし、ティンカーベル、そのデュラハンの居るっていう墓地へ案内してもらうよ」
「ようやく行く気になったんだね、了解、案内するよ」




