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ちょこっとポンコツな ハンス・アンデルスン15才の異世界見聞録  作者: Y・セイ
ーEpisode one カエルの王子
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act5  旅の仲間はピーターパン?

 国と国の境は連なった山だった。


 僕たちは山と山の間になる低い部分を超えるべく進んで行く。


 しばらくすると僕らは山間地にある湿地帯に入った。広大な湿地帯だ。そこは地面がぬかるんだ浅い沼のような場所で、歩く際には膝位まで水に足が浸かってしまう。


「むむ、ここはやばい感じがするねえ……」


 祖母ちゃんが表情を曇らせる。


「は、はい、嫌な気配がします。私の体に怖気が立っていますよ……」


 カエルは怯えた表情を浮かべる。呪いで姿を変えられた存在だとはいえカエルだ。本来なら水気のある場所は得意な筈だ。水掻きもあるし。


「う、うわっ」


 突然僕は足を取られた。何かが足に絡みついたような感じだ。


 僕の足に絡みついた何かは沼の陰になっている部分へと僕の足を引っぱっているようだ。


「う、うっ、うわあああああああああああっ 何かに足が引っ張られて……」


 そんな最中ちらりと水面から何かの背中らしき部分が見えた。濃い黒と白の斑模様をした太い綱のようだった。いや、綱どころか木のような太さがある。


 それを見たカエルは顔を青ざめさせて言った。


「こ…… こいつは…… ニーズヘッグじゃないか!」


「ニーズヘッグって魔獣の大蛇かい?」


「え、ええ……」


「強敵じゃないか! ちょっとやばいかも……」


 蛇に睨まれたカエルとはこの事なのか、恐怖に慄いたのかカエルは竦んで動きが極端に鈍くなった。


「良いかいハンス! 絡んでいる足付近をピッケルで叩きまくれ!」


「うん!」


 僕は祖母ちゃんの指示に従い、絡まれている付近をピッケルで必死に叩く。数討てば当たるではないが、叩いた内の一発に手応えがあった。


 その瞬間絡んでいた力が弱まり、僕は急いで足を引き抜いた。


「よし、離れたよ!」


「ハンス! こっちに来な! カエルも! 三人で背中合わせで円になるんだよ!」


「う、うん!」


「ゲッ、ゲッ、ゲロオオオッ……」


「馬鹿ちんが! 恐怖でカエル語になっちまってるよ! しゃんとしな!」


「ケッ、い、いや、は、はい、済みません!」


 カエルはナイフを杖に括り付けた槍を身構える。


 三人は背中合わせになり全方位を警戒する。


 水面が静まり返る。僕らは動かず波を立てないように気を付けている。水面に現れる僅かな波紋を見逃さないようにしているのだ。


 カエルの前方三メートル程の所に僅かな水の動きが現れた。かと思ったら水中から巨大な蛇が飛び出し大きな口を開けて襲い掛かってきた。


「うわあああああああああああああああああっ!」


 恐怖に慄いた表情ながらもカエルは勇敢に槍を構え突き出す。


 僕もナイフ付ピッケルを構え、祖母ちゃんは魔法だ。


「けえええええええい!」


 蛇の顎がカエルに及ぶ前に、カエルは杖の先にナイフを付けた自作の槍を大蛇の喉元に突き上げる。


「ギッ、シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 大蛇が唸り声をあげた。


 しかし、大蛇が激しく身を捩ったせいか杖からナイフが外れてしまった。だがナイフは突き刺さったままで首からは血が流れている。


「今だ!」


 僕はピッケルの先端に付いたナイフで蛇の胴を突き刺し、祖母ちゃんが駄目押しとばかりに炎の攻撃をぶち当てる。


「シャア、アアアアアアッ……」


 祖母ちゃんの炎が効いたのか、大蛇は力なく沼に倒れ込み、左右に大きな水飛沫を上げた。


「はあ、はあ、はあ、はあ……」


 カエルも僕も祖母ちゃんも呼吸が激しく乱れまくりだ。


「いやったああああああああああ!」


 僕たちは歓喜の声を上げた。襲ってきたニーズヘッグを返り討ちにしたのだ。


「良かった、良かったよ、倒せて……」


 カエルはまだ緊張が解けていない様子だった。


「やったじゃないか、あんた!」


「もう夢中でしたよ! やった! 私、やりましたよ!」


 カエルは興奮冷めやらない様子で叫ぶ。


「……ん? あれ…… あんたの槍…… なんで杖にナイフがくっ付いたままなのさ?」


 祖母ちゃんが質問する。


 改まって見るとカエルの武器はそのままだった。血すら付いてない。


「あれ、本当だ…… どうしてだ?」


「……変だね、大蛇の首元に刺さっているあのナイフは何? あれはあんたの槍先じゃなかったってことなのかい?」


 ニーズヘッグの遺体に近づいて喉元のナイフを改めて確認すると、見覚えのないナイフが突き刺さっていた。


「一体、どういうことだいこれは?」


 理解が追い付かない。


 そんな時、背後の木の上の方から微かにくすりと笑う声が聞こえた。


「むっ、だ、誰だい! そこに居るのは!」


 祖母ちゃんが笑い声がした方に鋭く声を掛ける。


「ふっ、はははははははははははははは、あんた等が大変そうだったから、さり気なく手助けしようと思ったんだが、気が付かれちまったぜ……」


 木の上には小柄な少年のような者がいた。ピエロのような三角帽子を被り、狩人のような服装をしている。


「お前は…… い、いや、あんたが、あたし達を助けてくれたのかい? どうしてだい? そして、あんたは一体誰なんだい?」


 少年は木から降りて来ながら返事をしてくる。


「ふふふ、俺かい? 俺はペーターポーンって名前の小人族だよ、仲間の仇を討つために旅をしていてさ…… アンタ達がちょっと危なそうだったからナイフを投げちゃったんだよね」


「そ、そうだったのかい……」


 祖母ちゃんは腑に落ちない感じの表情を浮かべるも、何度も頷いた。


「い、いや、お蔭で助かったよ、恩にきるよ」


「どういたしまして……」


 ペーターは何て事はないといった様子で答える。


 そんな問答をしていると、僕らが、いや僕らとペーターが倒したニーズヘッグの遺体は煙のように消え、かなり大きな魔宝石へと姿を変えた。


 祖母ちゃんはその魔宝石を拾うとペーターに渡した。


「はい、これは、あんたのだよ、実質はあんたが倒したようなもんだからね……」


「良いのかい? とどめを刺したのは君達だぜ」


「いや、あたし達だけじゃ危なかったと思う、あんたのお陰だよ」


「くれると言うなら貰うけどさ……」


 ペーターは受け取った魔宝石を腰のポケットらしき場所に仕舞った。


「ところで、ペーターさん、あんたかなり強いわね、余裕すら感じるし、土地勘もありそうだし…… 」


「いやいや、それほどでもねえよ」


 ペーターは謙遜する。


「ねえ、助けてもらったついでで申し訳ないんだけど、もう少しあたし達を助けてくれやしないかい?」


「ん? もう少し、あんた達を助けるだって?」


「ああ、あたし達も、このカエルを助けている途中でさ、実はこのカエル、山向こうの国の王子様だっていうんだよ、呪いを解いて元の人間の姿に戻れたら、お礼をしてくれるって事になっていてね、あんたは強そうだし一緒に助けてあげてもらえないかな?」


 祖母ちゃんは問い掛ける。


「へえ~、意外と興味深い話だね、それに褒美までもえらるんだ……」


 ペーターが少し喰い付いてきたのを見計らって、祖母ちゃんは話を続ける。


「それと、あんた、ほら仲間の仇を討つとか言っていたじゃないか、今回の件が終わったら、今度はあたしらがあんたのそれを手伝うよ、そんな感じだったらどうだい?」


 ぺーターは少し考え込む。


「……別に構わないぜ、仲間の仇に関してもまだ情報が少なくて辿り着けそうにねえし、別に急いでいる訳でもない。あんたらに付き合って手助けしてやるよ」


「本当かい? 良いね、本気で助かるね」


 祖母ちゃんはお礼を述べる。


「あっ、そうだ、自己紹介がまだだったね、あたしはアンナ、でこっちは弟のハンス、あと元王子のカエルだ」


 おいおい、祖母ちゃん…… 僕は弟じゃないぞ…… 嘘は駄目だろ。


「へ~、あんたら兄弟だったんだ? でも、さっき、祖母ばあちゃんって呼んでなかったかい?」


 ぺーターは首を傾げる。


「やーねえ、気のせいよ、あいつはあたしの事を偶にババアとか失礼な事を言うのよ」


 祖母ちゃんは誤魔化す様に言った。


「まあいいや、俺としては別にその辺りはどうでもいいし……」


 ペーターは適当そうに答えた。


 そんなこんなでペーターポーンが仲間になった。。


 その後ペーターを含め、巨大な蜘蛛などを退治しながら、国境の尾根を抜けて行った。


 いよいよ、カエルの王子の国だ。

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