act17 進軍
鳥の国の軍勢は、基本は飛んで移動するようだ。しかし、飛んで移動するとはいえ高い山を越えるのは大変である。なのでルートは絞られてくると思われる。
「うむむむ、恐らく鳥の軍勢は、国境の中央付近の山が一番低くなっている所を超えて進軍するんじゃないかと思う。そのルートを追いかけてみるよ」
「そ、そうね、アタシでもそのルートを選ぶと思うわ」
そんな祖母ちゃんの声にハルシェシスも同意する。
そうして、僕等五人は東西に延びる国境の中央にある山脈が一番低くなっている部分から獣の国へと向かった。
しかし、進んで行くものの、鳥の軍勢の気配は全く見当たらない。
そんなこんなしていると、国境付近で、口論しているのか憂いあっているのか、鳥と獣が顔を近づけ何やら話をしているのを見掛けた。
「あっ、あいつ等に話を聞いてみようじゃないか!」
祖母ちゃんはその鳥と獣に近づいて行く。
「ねえ、あんた達、ちょっと聞きたいんだけどさ……」
よく見ると、その二人は雀とイタチで、涙を流しながら話をしていたようだ。
「あ、あんた等、鳥の軍勢が獣の国に攻め込んでいったって話を聞いたんだけど、この近くを通らなかったかい?」
祖母ちゃんが問い掛ける。
「……いえ、ここら辺は通っていませんね、もっとミッテン国側を通過したみたいですよ……」
雀が涙声で答える。
「そ、そうなのかい、ところであんた達は此処で何を?」
祖母ちゃんは二人の様子を窺いながら聞いた。
「僕達は友達同士なのですが、獣の国と鳥の国が戦争をすると聞いて、この友人であるガレ―ともう今後会えなくなるからと、最後のお別れをしていたのですよ」
ちょっと大きい体をした雀が答えてくる。
「そうなんだ、雀のコローネ君ともう会えなくなるかもしれないんだよ、ギョエーン、ギョエーン」
ガレーと呼ばれたイタチは目を擦り泣き始める。
「という事はあんた達は戦争に反対で、鳥と獣が揉めているのを憂いているって事かい?」
「そ、そうだヂュン!」
「そ、そうだギョン! ギョン!!」
ガレーとコローネは変な泣き声で同時に答えた。
そんな様子を、バステトとハルシェシスは申し訳なそうな表情で見ていた。自分達の関係性を重ねて見ているのかもしれない。
「あたし達はさ、鳥の国と獣の国の戦争を止めようとして動いているんだよ、何とか仲直りさせてみるから、そう泣きなさんな」
祖母ちゃんは彼等を慰める。
「そうだぜ、俺っちも親友のハルシェシスと仲良く出来る世界にしたいと思ってるんだ!」
「うん、そうね、アタシもバステトちゃんとずっと仲良くしていたいわね」
バステトとハルシェシスも二人に声を掛ける。
「あっ、あなた方は…… ハルシェシス様とバステト様じゃないですか!」
二人は驚いた顔をする。
「そ、そうか、二人は昔仲間だったと聞いた事があるぞ……」
イタチが思い出したような顔で声を上げる。
「そうよ、アタシ達は大親友なの、だから、そんな私達が気軽に会えなくなる事が出来なくなるような事にはさせないわよ」
ハルシェシスは強く言う。
「宜しくお願いします。頑張って下さい! 本当に宜しくお願いします!」
「おお、俺っち、努力するぜ」
バステトも力強く答える。
そんなこんなちょっとした出会いがあったものの、僕等はとにかく獣の国の王城を目指した。
獣の国は城塞国家だ。国土の中央付近は巨大な大円長城に囲まれている。外から攻めるにあたって城壁内に入り込むのは容易ではない。
そんな強固な城壁の南側城壁前に鳥の国の大軍が詰め寄っているのが見えてきた。
一方の獣の国の城壁の上には人が留まれるようになっている為か、そこには獣の国の兵隊が犇めいていた。
僕等が到着した時にはもうすでに臨戦態勢に入っていたのだ。
「やばいね、もう戦が始まる直前だよ」
祖母ちゃんは緊張した顔で呟く。
「おい、あんな所に、でっかい土塁というか、出丸みたいなのがあるぞ、前に来た時はあんなの無かった気がするが」
ペータが指を差しながら問い掛ける。
見ると、南城壁の手前に、土を盛り上げたような台状の山が築かれており、そこに武装した兵が犇めいていた。よく見るとその上に居るのは獣ではなく、爬虫類や蝙蝠などであった。
「あれって、ミッテン国の軍?」
思わず僕は呟く。
「ああ、そうだ、あれはミッテン国の軍勢だよ!」
祖母ちゃんは大きく頷く。
獣の国の城壁の正面からやや右側の小山に一万位のミッテン国の兵が犇めいているのだ。
「なんであんな所に……」
僕は首を傾げ問い掛ける。
「あれは防衛の拠点だよ。城壁を越えようとする敵に横から矢とか飛び道具を放てるし、逆にあれを攻略しないと城壁を破る事は出来ないって代物さ」
「なるほど……」
「ただ、あの場所は攻撃が集中するから、あの場所の兵は相当大変だろうね」
祖母ちゃんは顔を顰める。
「そんな重要な場所にミッテン国の軍を置くの?」
「恐らく理由は幾つかあるだろうね…… それは、獣の国の中にミッテン国の大軍を入れたくないという理由と、自軍の兵を余り犠牲にしたくないという理由とかだね、あそこの出丸だったら城壁の外だし、破られても城壁の防御が残っている。防衛の拠点ながらいつでも切り捨てられるから……」
「それはミッテン国の人達からしたら獣の国はズルくない? 上手く利用されているだけでなく、いざという時は捨て石にしようとしているみたいじゃない?」
「ああ、酷いね、だけど、城壁内に入れる訳にもいかないから仕方が無いとも言えるかな……」
祖母ちゃんはふうと息を吐いた。




