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ハンス・アンデルスンの異世界大冒険紀行  作者: Y・セイ
ーEpisode three 鳥と獣と蝙蝠と
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act4   鳥の国フゥル国

 大河の向こう側にニダヴェリールの土地が見えてきた。そして、その土地は不思議な景観をしていた。


 まるで茸のように幹がやや細く笠が大きい岩山が沢山聳え立っているのだ。また巨大な樹も沢山散見されるのだが、これまた上部が茸のような平たい形になっていた。全体的に茸だらけの場所といった雰囲気だった。


「いよいよ着いたね。鳥の国だよ」


 祖母ちゃんはニヤリと笑う。


「いやいや、鳥の国って、想像以上に不思議な景観の場所なんだね、それと、いきなり鳥の国に到着なんだね、てっきり僕はまた港町に着いて、そこから山を越えて国に入るのかと想像していたけど……」


 僕は周囲に広がる景観を見ながら答えた。


「ふっ、今回は川が国境みたいなもんだからね」


 祖母ちゃんは答えた。


 そんなこんなしているうちに、船はゆっくりと港に入っていった。


 到着した場所は港町という風ではなく、港がそのまま国の玄関部になっているような感じだった。


 僕等は船倉で寝ているペーターを起こしてから、下船用の通路を進んで行く。


「いやいや、乗船ありがとうございましたな、さあ、ニダヴェリールに到着だ。足元に気を付けて下船して下さいよ」


 船長のナマズ魚人が偉そうにお礼を述べてくる。


 乗客の一人がセイレーンに食い殺されたが、その辺りは特に触れられず、仕方が無い事故という片付けかたのようだ。


「ふぁああああああああああっ、俺、船の揺れと心地いい音楽が気持ちよくってさ、ずっと寝り込んでたよ、ははははははは」


 ぺーターは大欠伸をした後、目を擦りながら呟く。


 知らないとは幸せな事だ。危うく僕はセイレーンの餌になりかけたというのに。


「で、ハンス、希望通りに、ニダヴェリールに入ったけどさ、これからどうする予定なんだ?」


 ペーターが頭をボリボリ掻きながら聞いてくる。


「えっ」


 僕は一瞬考える。だけどそもそも深い考えはなかった。只々見学したいだけだ。


「とりあえず色々見学するんだよ」


「えっ、見学するだけなのか?」


 ペーターは顔を顰める。


「うん、どんな国なのか興味があるからね……」


「ふっ、まあ好きにしてもらって良いけど、ただダラダラと時間を無駄にするのだけは勘弁してくれよ」


 ペーターはまたボリボリ頭を掻いた。


「よーし、そうしたら、兎に角、酒場に行こうじゃないか! そこで情報収集だよ」


 祖母ちゃんはいつもの如くだ。


 とはいえ、町というか家があるのは茸型の岩山の笠の上ばかりだった。地面と呼べる部分に家は一切立っていない。


「ねえ、祖母ちゃん、なんで家とか全部上なの?」


「ふっ、多分習性だね、鳥だから高い所に巣を作るっていうね」


「なるほど、だけど、じゃあ、町というか酒場に行くんでも、木を登らないと駄目って事だよね?」


 僕は岩山の上部を見上げる。随分と高い。


「これは、どうやって登るの?」


「あたし等は飛べるけど、あんたはあれで……」


 祖母ちゃんの視線の先にあったのは、沢山の白鳥に繋がった籠だった。


「えっ、僕はあれに乗っていくって事なの?」


「そういった事だよ」


 なんか大袈裟な感じだ。とはいえ登らない訳にもいかないので、僕はお金を白鳥に払い白鳥の籠に乗る事になった。多分、地上で言う所の、お金を払って馬車にでも乗るような感覚なのだろう。


 籠はふわりと浮かび、どんどん上空へと上がっていく。


 茸状の岩山の上部まで登ると、頂上は平らになっていて、そこには、円形の天幕式住居風な家々が立ち並んでいた。いわゆる円形型テントだ。これまた自然素材で作られていて茸風だった。


 テント式住居の入口には宿屋や酒場や武器屋のマークが付いているから、酒場も当然ありそうだ。


「ああ、ようやく来れたね、じゃあ、あそこに入るよ」


 祖母ちゃんは酒屋を指差す。


「うん、もう仕方ないよね」


「だな……」


 そうして僕等は大型天幕テント仕立ての酒場へと入り込んだ。

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