act1 ニダヴェリールへ
ミズガルズの大森林地帯を東に抜けると巨大なヨルムンガンド川が流れており、その先はニダヴェリールという妖精や鳥獣達の領域になるらしい。
「でね、次にあたしらが向かう先は、ニダヴェリールにしようと思うんだ。位置的に近いし、ハンスがそっちに行ってみたいと希望しているのもあるし……」
傍らで僕はうんうん頷く。正直、動物達の国を見てみたいと思っている。
「まあ、良いんじゃないか? アンナ達と一緒にいるにあたって、徐々に俺の仇に近づいている気もするしな…… 俺はどこへ行くでも構わないぜ」
ペーターは今の流れのままで良いと思っているらしい。まあ、すでに二人のコシチェイに出会っているし、一人は倒し、一人は封印した。実際に仇のコスチェイに会った時の模擬戦をこなしているようなものだ。丁度良いと考えているのだろう。
「よし、ぺーターの同意も得られた事だし、東に抜けよう。ここから東に抜けた先に、ニノシュークという港町がある。そこから船がニダヴェリールに向かって渡っている。それに乗って行こうじゃないか」
「ああ、了解だ」
「うん、宜しくお願いします」
ペーターと僕は返事をする。
大森林地帯の東に連なる尾根を越えると、木々の先に視界が開けた。その先には湖かと思うような太い大河が広がっていた。ただ湖と違うのは巨大な蛇を思わせるように横に長いのだ。果てしなく続いているかのように大地に横たわっている。
僕等は尾根を下り、そんなミズガルズとニダヴェリールの境を目指していく。途中魔獣も出現し、それを退治しながら進んで行った。
山を降りヨルムンガンド川沿いまで至ると、木々は少なくなっていき随分と歩きやすくなってきた。改めて河を眺めると川幅は恐ろしく広く、対岸は相当先だった。
「一応だけど、川には恐ろしい生き物なんかが生息しているんだよ。クラーケンとかセイレーンとかね」
「ちょっと待って、ク、クラーケンって海にいるんじゃないの?」
僕はその大きさを想像してちょっとビビッてしまう。
「このイルミンスール大陸だと大河にいるんだよ、だから泳いで渡ろうとかは、ほぼ無理だと考えた方が良いからね」
「い、いや、この幅だから全然泳いでとかは考えないけどさ、小舟とかじゃヤバそうだよね」
僕は顔を強張らせる。
「一応、渡河船は200人位乗れる大きいものだから。安心してなよ」
祖母ちゃんはニヤリと笑う。
しばらく歩き進んで行くと、前方に港町らしき場所が見えてきた。何やら随分と賑わっている様子だ。
「到着したね、此処がニノシューク港町だよ」
見ると市場とか酒場とか宿屋とか薬屋とかいろいろな建物があった。規模に関しては城下町を除いて今まで寄った町とは比べ物にならない程に大きかった。また船着場を見ると、大きな帆船がニ艘停泊していた。明日はあれに乗ってニダヴェリールに向かう事になるようだ。中々に楽しみである。
そのニノシュークという町はミズガルズとニダヴェリールの渡河町だけあって、獣人、鳥人、獣、鳥、妖精とかが多い、勿論、僕等のような普通の人間も沢山いるけど。
「凄いね、祖母ちゃん、色々な人々がいるよ」
「そりゃ、そうさ、ここは港だからね、まあ、ニダヴェリール側に渡ればもっと獣人、鳥人、獣、鳥、妖精の比率が高くなるよ、正直この辺りはまだまだ甘いかな~」
先輩面して祖母ちゃんが言ってくる。
「さてさて、今日は、このニノシュークの宿屋に泊まって、明日、渡河船に乗り込む事にするよ。で、今日中に明日の渡河船の予約を入れておくって感じでどうだろうね」
「うん、そんな感じで良いと思うよ」
「俺は何でも構わないよ、只々アンナ達についていくだけだ」
祖母ちゃんの提案に僕とぺーターは頷いた。
で、僕等は武器屋を覗いて、波止場で渡河船を予約して、宿屋で今夜の宿を確保して、夕方に飯屋兼酒場に入った。




