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ハンス・アンデルスンの異世界大冒険紀行  作者: Y・セイ
ーPrologue   豆の木の上へ
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act3  祖母ちゃん若返る

 天に伸びた木というか新芽はこちらに都合よく成長を止めてくれた訳ではなかった。そんなのもあり僕等がしがみ付いていた場所は空の大地を通過して更に100メートル程上の高さだった。随分と高い。


 そこから見える景色は、地上のそれとは少し趣が違っていた。


 空の大陸には地上と同じように平原があり、山脈があり、森林があり、大きな湖があり、大地を分けるように走る太い川があった。よく見ると町や道らしきものもある。


 ただ平らな土地の為なのか地平線が確認出来ず、遠いものは霞んで見えていた。


「ね、ねえ、祖母ちゃん、この空の上の大陸って、一体どの位の広さがあるのかな?」


 僕は周囲を見回しながら問い掛ける。横に見える景色も正面の景色も相当な広さを感じる。


「何でもヨーロッパ全域と同じぐらいの広さがあるみたいだよ」


「えっ、そ、そんなに広いの?」


「ああ、前に来た時にそう聞いたわね」


「そ、それはやばいね……」


 空の上にそんな巨大な物が浮かんでいるなんて……。


「さてと、下に降りて空の大地を踏みしめようじゃないか」


「あっ、うん」


 祖母ちゃんに促され、僕は木を伝い下へと降りていった。


 伸びた樹の蔓と空の大地の高さが同じになっている所まで降りていくと、雲のような上部に、土というか大地があった。


 その大地には草や木も生えていて、そこへ移ってみると普通に地上の森にいるような感じだった。


「さてと、じゃあ、どこかの王国にでも行こうかね」


「王国?」


「ああ、この上には、あたしらが住んでたヨーロッパと同じように幾つもの国や幾つもの王国があるんだよ」


「へえ~」


「一応、王都とか人の暮らしている場所は比較的平和なんだけど、それ以外の場所はかなり無秩序地帯なんだよ、森とか林なんかは特にね。なんで油断は禁物だからね」


 祖母ちゃんはそう説明しながら厳しめな表情を作り上げる。


「わ、わかったよ、祖母ばあちゃん……」


 伝って降りた天空の大地は、高い木々が眼前の視界を塞ぎ、欝蒼感が強かった。100メートル上の豆の木から見る景色とは随分と違がう。ちょっと怖さも感じる。


「と、とにかく、早く、その王国だかに進もうよ!」


 僕は不安な気持ちになり先を促す。


「そうさね、明るいうちには着きたいね」


 そんなこんなで、しばらく森を掻き分け進んで行くと、岩肌から水が染み出し、その下に泉が出来ている場所に至った。とても澄んだ綺麗な泉だった。


「おや、こんなところに泉があるよ、折角だから、ここで水分補給をしようかね。それと水筒に水を足しておこうじゃないか」


 確かにヨトゥンヘイム山登山の後半ぐらいから、水の補給も出来ず、余り水を飲んでいなかった。


「そうだね」


 僕は泉の淵に近づき水を手酌で掬い喉を潤す。


 水は水なのだが何やら清涼で高貴な感じの味がした。さすが空の大陸の水だ。


「祖母ちゃん、な、なんか、僕、元気が出てきた気がするよ」


 五臓六腑に水が染みわたったせいか、疲れが消え、何やら元気が湧いてくる。


 そして、ほぼ空になっている水筒にもその水を汲んでいく。


「さてと、あたしも喉を潤しておくかね」


 僕の横で祖母ちゃんも手酌で水を口にする。


「ん? あら、この感じ…… なんか変だわね…… 若しかして、これ…… あら、あら、あら……」


 なにか様子が変だ。祖母ちゃんの声が段々と甲高くなっていく。


「ど、どうしたの祖母ちゃん?」


 僕は横をみて唖然とした。


「おっ、おわああああああああああああっ! ど、ど、ど、どうしたの祖母ちゃん! 何なの! その姿は一体?」


 赤かった。バサバサの白髪だった髪の毛が、艶やかな赤毛になっていた。そして、肌がぷりぷりになっていて皺が全て消えていた。


「こ、これは……」


「ば、祖母ちゃん! どうしたんだよ、若返ちゃってるよ!」


 正直二十代の年齢だ。髪や肌が若返っているだけじゃなく、線も細くなり若い女性の体付きになっていた。胸もかなり豊満で立派だ。正直綺麗で可愛い。本当に可愛い。


「あら、あら、あら、これはウルズの泉だったみたいだね」


「な、なんだよ、そのウルズって!」


 僕は余りの変化に声が上擦ってしまう。


「ウルズの泉は強力な復活浄化作用があって、体力とか怪我を回復させてくれる効果があるんだよ、そして稀に若返り効果も……」


「若返り?」


 マジか。その作用で祖母ちゃんが若返った。二十代位に。


 凄い……。いや、とんでもないぞ。


 僕は唖然としたまま祖母ちゃんを見詰める。


「あら、良いわね、あたし若返っちゃったわ、ラッキー! うふふふふ」


 本気で若いぞ、もう婆ちゃんではない。完全に若い娘だ。


「確かに、良かったね。祖母ばあちゃんって、若返ると綺麗だったんだね」


「ハンス! あたしゃ、若返る前から綺麗だったでしょうが!」


 切れ気味に言ってくる。


「え、ああ、一応、綺麗だったかな、年相応にだけど……」


 僕は取り繕う。


「とにかく儲けものね、若いと動きとか体のキレも違うからね……」


 体力も回復し、更に祖母ちゃんは若返るというとんでもないことが起こったが、僕らは先を進んで行く。


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― 新着の感想 ―
はじめまして!「英雄は夕陽に輝く君のために」を書いているYAMATOと申します!2話まで読ませていただきました。読んでいてこれからが楽しみな展開でした!これからも頑張って下さい!ブックマーク、星評価し…
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