act19 北部の村
こうして、ヘンリック王子に掛けられた呪いは解け、僕達は目的を果たすことに成功した。
「ア、アンナさん、ペーターさん、ハンスさん、ありがとうございました。お陰様で私は、私は元の姿に戻れましたよ」
ヘンリック王子は改めてお礼を言ってくる。
「お礼なら、メアリーに言ってあげな、あんたが元の姿に戻れたのはメアリーがキスをしてくれたからだ。仮に、その後にコシチェイを倒した事により呪いが解けたかもしれないけど、実際に直接呪いを解いてくれたのはメアリーだ。感謝はメアリーにするんだね……」
「勿論、メアリーには呪いを解いてもらったり、命を救ってもらって感謝をしてもしきれないです。でも、そこに至る過程を色々助けて頂いたのは皆さんです。皆さんには感謝してもしきれないです。本当にありがとうございました」
ヘンリック王子は深々と頭を下げる。
「ふ~ん、じゃあ、お礼を期待するからね、100倍だよ」
「それは勿論です」
祖母ちゃんは冗談を言いつつも、改まってふうと息を吐く。
「……ただね、まだ終わったわけじゃないんだよ、王都に帰って、あんたが王子なり王なりの座に戻ってこそ、ようやく終わったことになるからね」
その説明を聞いたヘンリックまた僅かに表情を曇らせる。
「まあ、此処まできたんだ。出来るだけ、立派な雰囲気を作り上げ、堂々と凱旋しようじゃないか、王なり王子が国に戻ってきた事を国民にしらしめるようにね」
祖母ちゃんは安心させるようになのか優しく笑った。
「は、はい、頑張りますし、宜しくお願いします」
ヘンリック王子はまた深々と頭を下げてくる。
そんなこんな、僕達は池の中の小島にあるコシチェイの館を後にし、小舟に乗って元の岸を目指して漕いでいく。
そんな時、上空を飛んでいた尾羽がちょっと変てこりんな鴉が、僕等に対してなのか声を発している。本体は黒いのだか尾羽だけが赤や緑や青などの色々な羽色をしていた。
「……こりゃあ、まじぃいな…… フレン様が殺られちまったよ、ったくコールガ様にどう伝えればいいんだよ……」
「な、なんだあれは?」
その鴉を見留めたペーターが顔を顰める。
「……まずはフレン様の事を報告して……カー、ヵー」
鴉は物々言いながら上空へと遠ざかっていく。
「……あの鴉の正体が何か解らないけど、もう捕まえるのは無理だね……」
祖母ちゃんは呟く。
鴉は豆粒位の大きさになり、そのうち見えなくなってしまった。
そんなこんな湖畔まで辿り着いた僕達は、更に黒い森を抜け北部の村へと戻り着いた。
その北部の村は最初に立ち寄った時とは何だか様子が違かった。
「お、お帰りなさいませ、いや、いや、いや、大変な事が起こったんですよ」
小柄で若そうな狩人が僕等を出迎えながら興奮気味に言及してくる。
「大変な事って、あの老人が元気になった事ですか?」
僕は聞き返す。
フレン・コシチェイを倒した事により魂が戻った筈だから。あの老人は元気にはなる予定だが。
「おう、おう、一応、そうなんだが、ちげーんだよ、とにかく、見てやってくれ、俺が間違っていたぜ、あいつは嘘を言っていなかったんだ」
体の大きな狩人も急かすように促してくる。
その体の大きな狩人に連れられ酒場へと赴くと、中から妙に元気な声が聞こえて来る。
「おっ、おおおおおおおっ、あなた達は…… あの魔法使いを探していた旅の方々、やってくれたのですね、お陰様で私には魂が戻りましたよおおおおおおおおおおおおっ!」
あの魂を奪われた老人だった。いや、老人ではなく今はおじさんだった。
「あ、あれれ、若返ってない?」
土気色していた肌は健康な肌色に、こけた頬は張りを取り戻し、どうみても十歳位若返っている。
「そうなんですよおおおおおお、私ってば、魂を取り戻し、生気が、生気が溢れ返っているんですよおおおおおおおおおっ」
つやつやした顔でおじさんは笑顔を振り撒いてくる。
「そ、それは良かったね」
余りの豹変ぶりに祖母ちゃんは引いている。
「私は、私は、貴方達にお礼がしたいです。この度は本当に、本当にありがとうございました」
それを聞いた祖母ちゃんは少し考える。
「そうしたら、皆に協力してもらおうかな……」
「是非是非、何でも言ってください」
「実はさ……」
祖母ちゃんがヘンリック王子を前に押し出す。
「彼は、この国の王子であるヘンリック王子なんだよ……」
「えっ」
傍に集まって人達は皆驚いた表情をする。
「実は、湖に住んでいる魔法使いに呪いを掛けられてカエルの姿に変えられてしまっていたんだよ、そんなんで魔法使いが死んで呪いが解けて王子の姿に戻れたって状況でね……」
「お、おおおおおおおおおおおっ! 王子様! 王子さまでしたか! ははっ」
皆は慌てた様子で頭を下げて謙る。
「あ、いや、君達、急にそんなに謙らなくて良いよ……」
ヘンリックは困った様子を見せる。その様子をメアリーは嬉しさと安堵さが入り混じったような表情で見ていた。
「んでね、カエルの姿になっている間に、死んだことにされちゃって、この国は今は軍隊が政権を取っている状態なんだよ、ただ元々は王国だった訳だし、王子は死んでいなかった訳だから、元の姿に戻すべきだと思うんだよね」
「おおっ、そうだ、確かにそうだ王子様が生きているなら王子様が王様になってこの国を治めるべきだ!」
皆は我々の考えに理解を示してくれる。
「そんなんで、これから王都に凱旋帰国をしたいと思うんだけど、ほら、人数が少ないと威厳がないじゃない」
祖母ちゃんは皆を見る。
「確かにですね」
「なんで、この北部の村の人々に兵の格好をしてもらって出来るだけ多い人数で王都に凱旋したいんだよ、そこんとこ協力してもらっても良いかな?」
「ええ、勿論ですよ、私は志願しますよおおおおおおっ!」
呪いが解け若返った老人は一番に手を挙げる。
「おおおおおおお、俺達も協力するぜ! 王子様!」
体の大きな狩人も声をあげた。
「じゃあ、明日の朝、この村を発ち王都へと向かおうと思うんだけど、出来るだけ武装をして集まってもらって良いかい?」
「ははっ!」
皆は一斉にいい返事をして頭を下げてきた。




