act16 フレン・コシチェイとの闘い
外へ出た僕等はコシチェイの方へ向き直る。追ってきたフレン・コシチェイは歩を緩めた。
「貴様等、一体、何の真似だ? なぜ挑発をしながら逃げるような真似をする。そして、赤髪のお前…… 貴様、私の呪いを防ぐとはどういう事だ?」
コシチェイは納得ができないような顔で祖母ちゃんを見詰めている。
「あたしは魔法がまあまあ得意なんだよ、そう簡単にはお前の呪いは掛からないよ」
祖母ちゃんがコシチェイを牽制している陰で、僕は背中のリュックから予備のクロスボウを取り出し、それをメアリーに手渡した。
「メアリーさん、これで攻撃をして」
「は、はい」
魂の器が想像以上に小さいので、飛び道具の方が良いと考えたからだ。
「……もう一度だけ聞きたいんだけど、フレン・コシチェイさん、王子の呪いと、老人の魂の返還、それをお願い出来ないだろうかね?」
祖母ちゃんは改まり声を掛ける。
「くどい! ならんと言っておる」
ふうと祖母ちゃんは息を吐いた。
「……あんた頑固で嫌な奴だね……」
「フフフフフ、何故、私がお前などの言う事を聞かねばならぬのだ? 私は私の好きなように振舞うのだ。そう私は誰の意にも従わない。だから、その者達の呪いは解くつもりは一切ないのだ! それだけではなく、私に意見する小生意気なお前達にも呪いをかけてやろうぞ!」
再びフレン・コシチェイが杖を構え黒い霧を噴出し、僕等に放ってきた。先程より更に大きな霧だ。
「湧き上がれ、ヤイ・セイダマズル・ウェルザンディ・エルダー・ヴァーヴェル!」
祖母ちゃんが杖を構え、地面から沸き上がる炎の渦を発生させた。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
火柱はフレン・コシチェイだけでないく黒い霧も合わせて巻き上げ吹き飛ばす。さらに炎の渦が弱まるタイミングでペーターがダガーナイフでコシチェイの顔付近に切りかかった。
「ち、ちっ、くっ!」
コシチェイは仰け反り攻撃を避けるが、間髪入れず祖母ちゃんが、今度は炎の矢を放出する。コシチェイに体制を立て直す隙を与えない。
「くっ、くそっ、小賢しい、お、おのれええええええええええっ!」
ペースを掴めないコシチェイは苛立ち気味の声を上げる。
そんなコシチェイが祖母ちゃんに気を取られている隙に、僕とメアリーとミカエルで彼らの横に回り込み、コシチェイのやや後ろに陣取っている黒イタチにクロスボウに矢を番え構えて放った。ミカエルは牽制役だ。
「ギギギッ、ギギギ……」
黒イタチは矢を躱しながら牙を剝いて威嚇してくる。
「ミカエル、メアリーさん、作戦だ。ミカエルは黒イタチを驚かす役をやってもらって良い? 僕は最初に矢を放つ役をやる。メアリーさんは僕が放った矢を黒イタチが避けた場所に矢を放っ役をお願いするよ!」
「え、ええ」
「ああ、了解だ」
ミカエルは黒イタチを驚かせるべく接近した。そして、意外性を考えたのか手に持っていたスピアーをいきなり投げつける。黒イタチは驚いた様子でそれを躱す。
「よ、よし、今だ、喰らえ!」
僕は素早く番えて数本の矢を放った。
「ギ、ギ……」
黒イタチが飛び跳ねて矢を躱す。が、その飛び跳ねた場所へメアリーが矢を打ち込んだ。
「ギヤアアアアアアアッ!!!! ギギギッ……!」
矢が黒イタチの体を貫いた。
「や、やった!」
黒イタチは弱弱しく倒れる。そして、しばらくすると黒い煙になり、今度は中から黒い鳩が現れた。
「お、おおっ、獣の中の鳥だぞ……」
黒鳩は空へと舞い上がる。




