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ハンス・アンデルスンの異世界大冒険紀行  作者: Y・セイ
ーEpisode one カエルの王子様
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act11  金の斧を選んだ男

 その北部の村は家が二十軒位の規模の村だった。


 とはいえ宿屋、飯屋、武器屋、道具屋、質屋などは揃っており、特に不自由な部分は感じられない。


「ねえ、ちょっと武器屋を見て行って良いかな?」


 祖母ちゃんが僕等に問い掛けてくる。


「ああ、別に構わないけど……」


 そんなこんな祖母ちゃんに引き連れられて僕等は武器屋に入った。とはいえ王都に近い武器屋で取り敢えずの武器と防具は揃えた筈だ。


 北部の村の武器屋にはそれなりの武器が並んでいた。剣や盾、防具、杖、スピアー等々だ。


「う~ん、小さい村の武器屋だから、残念ながら、良い杖は無いんだね……」


 祖母ばあちゃんはぼそりと呟く。


「ん、アンナは杖を探してるのか?」


 ペーターが首を傾げながら問い掛ける。


「ああ、魔法の杖は魔法力を増幅してくれるものだからね、自分に相性が良くて尚且つ増幅力が高いのが欲しいんだよ、王子に呪いを掛けた魔法使いと闘う事になるからね」


「因みに、どういったのが良い杖なんだ?」


「そうだね、先端に付いている法玉が大きい方が増幅力が高いんだよ、そして法玉の色によっても属性がかわってくる。赤は炎系、青は水や氷系とかね、自分の得意な属性じゃないと頑張っても効果が薄かったりもするのさ。あと、魔法は杖無しでも放てるけど、面積が掌サイズしか放てないし、命中率が低いんだよ、杖がある事によって命中率、集束力が明らかに向上する。そんなんもあって芯の部分も重要なのさ……」


「なるほどな」


 ペーターは興味深げに聞いている。


「あたしが得意なのは炎系だから王都で中古の赤い法玉が付いた杖を買ったんだけど、相手が強いならもっと高性能な杖を手に入れたくてね……」


「で、ここには無かったと……」


「そういう事」


 結局、より良い武器というのは見付からないないまま僕等は武器屋を後にした。


 その後、情報収集の為にと腹ごしらえを含み飯屋へと入り込む。そして、毎度のことながら蜜酒と芋料理、揚げた鳥、揚げた魚料理なんかを頼んでいった。


「それで、どうだい、メアリーさん、冒険旅行は?」


 蜜酒を片手に祖母ちゃんは問い掛ける。


「ええ、色々と頑張っていますよ」


 メアリーは笑顔で答える。


「それで、カエルがヘンリック王子だというのは信じられてきたかい?」


 祖母ちゃんの問い掛けにメアリーは少し考える。


「そうですね、色々と話していて、過去の話とかを聞いていると、確かにヘンリック様なんじゃないかなとは思い始めています」


 ミカエルは横でうんうん頷いている。


 二人きりの時間は多く作った。懐かしい話をする時間は沢山あった。二人の仲はかなり良くなった筈だ。


「因みにメアリーさんはヘンリックを王の座に戻してあげたいとは思うかい?」


「ええ、それは当然です。その為に一緒に着いてきたのですからね、私、頑張りますよ」


 大分仕上がってきたようだ。だが、愛や好きという部分に関しては、これだといった切っ掛けがまだ足りないようだ。


 そんな話をしていると、隣に狩猟を生業としている様子の村人三人組が席に付いた。


「いやあ、今日の鹿は中々だったな、これで当分は鹿肉には困らないだろうぜ、半分はそのまま、半分は燻製にしようじゃねえか!」


 どうやら地元の狩人みたいで、酒を頼んで今日の狩猟の成果で盛り上がっているようだ。


「ねえ、あんた達、この辺りの人かい?」


 祖母ちゃんが徐に問い掛ける。


「ああ、そうだが、あんた達は冒険者かい?」


 探るような視線で狩人達は僕等を見てきた。


「あたしら、人探しの旅をしていてね、もし知っていたら教えて欲しいんだけど、この近くに魔法使いが住んでいるって話を聞いた事ないかなと思ってさ」


「魔法使い?」


「そう、魔法使いだよ。知らないかな?」


 そんな祖母ちゃんの問い掛けに、一番若そうなのが声を上げる。


「残念だけど、おいらは魔法使いの噂なんて聞いた事ないな…… この近くでの話だろ?」


「そうか…… 知らないか……」


「ふふふふ、俺の方は知っているぜ、ただ俺はその話をずっと空想話かなんかだと思っていたがな……」


 一番体が大きい男が少し笑いながら答えた。


「ん? 空想話?」


「ああ、空想話だ。魔法使いに魂を取られちまったって話だよ」


「魔法使いに魂を取られた? その話を聞かせとくれ」


 祖母ちゃんは身を乗り出す。


「ああ、良いぜ、え~と、とある木樵が、この村の北に広がる黒い森に入り込んで、木を切り倒していたんだ。だが、力を込めた所為で手元の斧がすっぽ抜け、斧が池に落っこっちまった。斧が池に沈んでしまって困っていると、池の中から、女神が現れたんだ。その片手には普通の斧、もう片方の手には黄金の斧が握られていたと……」


 何やら興味深い話だ。


「女神は木樵に問い掛けてきた。あなたの落としたのはこの金の斧ですか? それともこちらの普通の斧ですか? と。その木樵は眩い黄金に魅せられ、黄金の斧が欲しくなってしまった。そして、嘘を付いてちまった。自分の落としたのは金の斧だと答えた……」


 ヤバい展開だ。


「すると女神は突然姿を変えた。フードを被った黒い魔法使いへと姿を変えたんだ。そして、お前は嘘を付いた。嘘を付いたお前からは代償として魂を頂くと言い、木樵の魂を奪ったって話だぜ……」


 どこか似た話だ。禁忌を犯して代償を払わされている所がだ。


「何であんたはその話を空想話だと思ったんだい?」


 男は笑い出す。


「噓っぽいからだ。それと俺はそいつが信じられないからだ」


「そいつ? えっ、知り合いなのかい? その木樵と?」


「ああ、知っている。そこにいるそいつだよ」


 飯屋の端の一人掛けの席に、生気がない青白い顔をした老人が座っていた。


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