act22 戦いの末
そんなこんなしていると、アクアの居る方から小さな呻き声が聞こえてきた。
「うっ…… ううううっ……」
「あっ、アクアの意識が戻ったようだね、行こう」
祖母ちゃんに促された僕等はアクアの傍へと歩み寄る。近寄ってみると横たわっているアクアの瞼がピクピクしていた。
「アクア、アクアっ、大丈夫? 目を開けて!」
僕は肩を揺さぶり声を掛ける。
「んっ、んっ、ううっ、あっ、あああっ……」
そうして、アクアはゆっくりと目を開いた。
「……あっ、ああっ…… ハ、ハンスさん、先生…… バステトさん、ハルシェシスさん……」
アクアは完全に意識を取り戻す。
「大丈夫かい、アクア?」
祖母ちゃんが声を掛ける。
「え、ええ、だ、大丈夫です……」
そう呟きながら周囲を見回す。
「私…… 意識を失っていたみたいですね、状況は? どうなったんですか? ビュルギャ様は……」
「ビュルギャは死んだよ」
「し、死んだ? 倒したんですか?」
アクアは驚き顔を見せる。
「倒したというよりかは、あたし等がやられそうになった所で、魔法を跳ね返した事でビュルギャが致命傷を負ったって感じかな……」
「それじゃ、ビュルギャ様は自爆したって事なのですか?」
「そんな所だね、正直、あたし等の方がヤバかったからね」
それを聞いたアクアは思い返すように天を仰いた。
「……確か、ビュルギャ様が私をドラゴニュートに変えたかったのは、私の、いえ、人魚の魂が欲しかったからでしたよね…… 人魚の魂から取れるエリクサーを手に入れる為に…… そして、あのフレデリック様は偽物だった」
「ああ、騙されていたね、あれはアクアをドラゴニュートに変身させる為の罠だった……」
祖母ちゃんの一言を聞いたアクアは大きく頷いた。
「そして、私はビュルギャ様の望み通りに人魚ではなくなった。だけど、私はフレデリック様と同じ姿になった事を後悔はしていないです…… それは私が望んだ事ですから」
アクアは改まって笑顔で僕等を見た。とても美しい表情だった。
「なので私は納得してます。この姿で生きていきます」
「ああ、もう戻れないんだ。前に進んでいくしかないね」
祖母ちゃんは切り替え促す。
「ええ、私、頑張ります」
アクアは再度頷いた。
その上で、アクアが改まって聞いてくる。
「あれっ、そういえば、ペーターさんの姿が見えませんが、とちらに?」
「……あ、ああ、ペーターか…… ペ、ペーターは消滅しちまったんだよ」
祖母ちゃんが言い辛そうに説明する。
「消滅? えっ、消滅した?」
アクアは理解できないといった表情で問い返してくる。
「ビュルギャの消滅呪文の余波を受けてね、消滅しちまったんだよ……」
「そ、そんな……」
アクアは手で口を押える。
「……それって、私の所為ですよね、私を助けようとして、ペーターさんが犠牲になってしまった……」
「いや、違うよ、ペーターは自分の身がどうなろうともビュルギャに一矢報いたいと思っていたんだ。だから本望だと言っていたんだ。だから、アクア、お前の所為じゃない、ペーターも自分の望みを果たしただけだよ」
祖母ちゃんが顔を横に振り、アクアを安心させるように少しだけ笑いながら説明する。
「で、でも……」
「良いんだよ、お前もペーターも望みを果たしたんだよ、そうなんだよ、難しく考るのおよし」
祖母ちゃんはそう言いながらアクアの肩にそっと手を添える。
「え、ええ」
「さあ、帰ろう…… 人魚の国には戻れないかもしれないけど、あのフレデリック王子と会っていた泉に戻ろうよ」
「はい……」
そうして、僕等は島の洞窟から出た。気が付くと日は随分傾いており、周囲は茜色に染まっていた。
カシオスが迎えに来てくれる予定の岸壁へと向かうと、約束通りの時間に迎えがやって来た。
僕等は船に乗り込みバトモス島を後にしたのだった。




