act21 ペーターの状態
「ぺ、ペーターはどうなったんだろう?」
僕は戸惑いつつ問い掛ける。その答えが望まないものだと何となくは解っているが聞かずにはいられない。
「……あたしらの体は元に戻っているって所をみると、ペーターも元の姿に戻ったって事だろ。そして、ペーターの体はあたしだった……。あたしはペーターの姿で魔法反射を行ったんだ。そしてビュルギャの放った強大な魔法を跳ね返した。若しかしたら跳ね返しきれないで魔法を受けちまったのかもしれない」
祖母ちゃんは呟く。
「受けたって事はどうなるって事なの?」
「恐らくビュルギャの放った魔法は消滅呪文だ。跳ね返しきれず受けたとしたら消滅してしまったかも……」
「消滅?」
「ああ、ペーターの親友のマシューがビュルギャと対峙した時のように消滅呪文の余波を受けてしまった可能性が……」
「そ、そんな…… そんな……」
僕はそれ以上声が出ない。
しばらくすると、どこからともなく声が聞こえてきた。
『……ハンス…… 気にしなくて大丈夫だよ、俺としてはビュルギャと刺し違えられたんなら本望だよ……』
「えっ」
僕だけでなく、皆、周囲を見回す。
よく見ると薄ぼんやりとした何かが近くに漂っていた。
「も、もしかして、ペーターなのかい?」
祖母ちゃんがそれに問い掛ける。
『ああ、そうだ。俺だ』
「そ、そんな…… そ、そうなんだね……」
祖母ちゃんは口を手で押さえる。
『どうやら、俺の肉体は吹っ飛んじまったようだ。魂だけ残って、行き場所がないから漂っている状態みたいだ。だけど、段々意識が遠のいていっているから、すぐに消えてしまいそうだ。消える前に、皆にお礼をしておきたかった。皆、本当にありがとぅ。お陰で敵討ちが出来たよ……」
「で、でも、お前が死んじまったら駄目じゃないか!」
祖母ちゃんは顔を横に振る。
『いや、俺は刺し違えてても良いと思っていた。ビュルギャさえ倒せればそれで良いと…… だから、もう満足したよ」
「で、でもさ……」
『良いんだよ、アンナ、俺は満足したんだ。満足したんだから……」
その声を聞いた祖母ちゃんは口を押える。
『アンナ、ハンス、ハルシェシス、バステト、お前達と、一緒に旅が出来て楽しかったよ、そして、深く感謝しているよ ……じ、じゃあ…… もう、意識が消えそうだ…… じゃあ、さよならだぜ……』
そう言い残したと同時に薄ぼんやりとした魂らしきものは消えていった。
「ペーター? ねえ、ペーターっ!」
僕は呼びかける。でも、もうその返事は無かった。
「くっ、ぺ、ペーター……」
祖母ちゃんは拳を握りしめ声を漏らす。
「き、消えちまった……」
バステトは中空を見詰める。
「ええ、完全に気配が消えてしまったわね……」
ハルシェシスも呟く。
「ペーターの残留思念があたし達に自分の気持ちを伝えに来てくれたんだね…… ペーターは満足していたと言っていたけど、あたし達としては無念が残るよ……」
祖母ちゃんは大きく嘆息する。
僕等はその場でしばらくどうして良いのか解らず、只々立ち尽くしていた。




