act17 人魚の魂とエリクサー
「意味が解らない? あたしの目的はずっと一貫しているよ、あたしの目的はエリクサーだ。傷を治して、ついでに強い魔力を手に入れたいと思っているだけだよ。ただね、エリクサーが中々手に入らなくて困っていただけさ」
「エリクサーを手に入れる事と、アクアを拘束する事、アクアがドラゴニュート族に変身する事に何の関係があるって言うんだい?」
「仕方が無いね、教えてあげるよ、あたしも最近になってようやく答えや手法が解った取っておきなんだけどね……」
勿体ぶった様子ながらビュルギャは話す。
「取っておき?」
「実はね、エリクサーは人魚の魂から生成されるんだよ」
「えっ」
「だけどね、そんな簡単には奪えなかった、人魚の魂は肉体から離すとすぐに泡になっちまうんだ。だから魂は普通には奪えなかったんだ。そんな人魚から魂を取り出すには、一度別の種族に変える必要があったのさ」
「そんな、エリクサーは存在するのかい、そして人魚の魂が原材料だっていうのかい?」
「そう、そうなんだよ、だからね、つまりは今のアクアの状態であればエリクサーを手に入れる事が出来るって事さ、アクアの魂はあたしの物さ! 色々と試行錯誤を繰り返したけど、ようやく手に入れたよ、アハハハハハハハハハハハハ!」
ビュルギャは興奮を滲ませ高笑いをする。
「私の魂を得るために、私を人魚以外の生き物の姿に変えたかったって事なの?」
アクアは困惑した顔で問い掛ける。
「言っておくけど、最終的に決断したのはアクア、お前自身だよ、お前自身が薬を飲んでドラゴニュート族に姿を変えたんだよ、あたしは強要なんて一切していないからね」
「で、でも、この鴉を使って小芝居をしたじゃないですか、酷いじゃないですか!」
アクアは自分の体を拘束している鴉に視線を送りながら声を上げる。
「いや、いずれにしてもお前は薬を飲んでドラゴニュート族に姿を変えていただろうよ、早いか遅いかだけの話だよ、そもそも、あたしは別に急いでなんかいなかったんだ。お前が姿を変えた後にゆっくりお前を手に入れようと思っていたんだ。だけど、お前が敵意丸出しの奴等を五人も連れてきたんで、あたしもさっさと怪我を直して、強い魔力を手に入れたいと思ったのさ、そう、あたしは別に慌ててなどいなかった。あたしにこういう動きをさせたのは、お前やそいつ等の所為だって事だよ」
ビュルギャは僕等に対して指を差す。僕等に対して非難しているかの如くに。
「そ、それは、お前の自分勝手な論理だよ、いずれにしてもアクアの魂を奪う気だったじゃないか! 人の所為にするんじゃないよ! 魂を奪うっていうのがどうやるかは知らないけど、アクアの魂は奪わせない! アクアは返してもらうよ!」
祖母ちゃんは杖を構える。
「ふん、アクアは渡さないよ、ゴブリン達、出ておいで、この侵入者たちを始末しておきな」
ビュルギャの後方の扉が開き、そこからぞろぞろと太い棍棒を手にしたゴブリン族が現れた。その数二十体位いる。
「じゃあ、奴らは頼んだよ」
そう言うと、ビュルギャとアクアを拘束した鴉は、ゴブリン達が出てきた後方の扉へと消えていった。
「くそっ、どうやって魂を奪うかは解らないけど、早くビュルギャの動きを阻止しないと……」
「ゴブ、ゴブブブブブブブブ、ゴブボー!」
リーダーぽいゴブリンが変な言葉で叫んだかと思うと僕等にこん棒の先を向けた。
「ゴボゴボ」
他のゴブリンが頷きこん棒を構える。
「向かって来る気みたいだね、さっさとあいつらを排除して奥の部屋に行くよ」
「ああ、了解だ」
ペーターは二本のダガーナイフを構える。
「アタシが薙ぎ払ってやるやるわよ!」
ハルシェシスもバスターソードを引き抜いた。
そうして、僕等のパーティーとゴブリン族の一団の戦いが始まった。とはいえ僕等は此処までかなり戦闘を経験している。ゴブリン族など大した敵ではない。すぐに蹴散らして奥の部屋へと入り込んだ。
奥の部屋には、鴉から放たれた紐のような物で拘束されているアクアに対して、ビュルギャが呪文を唱えているのが見えた。
呪文を唱えているビュルギャのやや上には、青白く半透明のビュルギャのような物が浮かんでおり、その半透明のビュルギャがアクアの胸辺りを掴み何かを引き摺り出そうとしていた。
「や、やめるんだよ!」
祖母ちゃんが大きな声で怒鳴りつける。
その声に反応したのか薄青白いビュルギャが此方を見て動きを止め、そして、その青白いビュルギャは下にあるビュルギャ本体に重なり一つになった。
「ちっ、もう来たのかい、役に立たない足止めだったね」
「お前にアクアの魂は奪わせないよ!」
「仕方が無い、お前達を殲滅してから、ゆっくりとエリクサーを手に入れるとするかね」
ビュルギャは改まって此方に体を向ける。魂を奪い取る動きは一旦止めたようだ。




