act16 ドラゴニュート族のアクア
「あっ、ああああああああああああっ!」
怪しい液体を飲み干したかと思うと、アクアが両肩を抑えながら苦しみだした。
「うっ、うあああああああああああああ……」
肘から先に鱗のようなものが浮かび上がり、額の横あたりから角のような物が生え始める。
「ア、アクア! だ、大丈夫?」
僕と祖母ちゃんは傍に駆け寄る。
「大丈夫かい?」
「あっ、あっ、ああああああああああああああっ」
人魚族の特徴である腰から下の部分、両足が繋がり足先が鰭になっている部分が、先祖返りをしているかのように二つに分かれ、更に鰭が足先へと変わっていく。どうやら人魚かドラゴニュートに変化する場合は一度人間ぽい姿を経る必要があるようだ。
足が二股になったかと思ったら、膝から下に鱗のようなものが生え始める。
やってしまった。もう引き返せない、もう人魚の姿には戻れない。不可逆なのだ。
背中には翼竜のような羽が生え、側頭部には後ろに反り返るような角が完成し、とうとうアクアはドラゴニュート族の女性へと変身してしまった。
容姿は、正直、格好良くて美しい。手足の先と背中の羽、頭部はドラゴン族風だか。胸、顔、腹辺りは生身の人間風で、とてもセクシーで美しかった。
もし自分がドラゴニュート族の人間なら惚れてしまいそうな程魅力的だ。ドラゴニュート族の美的感覚は解らないけど。
「ふううううううううっ」
変身が落ち着き、アクアは大きく息を吐いた。
「だ、大丈夫かい?」
僕は問い掛ける。
「え、ええ……」
アクアは自らの体を確認する。
「ど、どう? 私の体、どこか変な部分はないかしら?」
「いや、大丈夫だと思う。完全にドラゴニュート族の体になっている。そして格好が良くて、とても美しいよ」
「良かった……」
アクアは安心したように大きく息を吐く。
「良くないよ! アクア! この馬鹿ちんが! 深い考えも無いまま衝動的な行動をして!」
祖母ちゃんは厳しい表情で苦言を言う。
「だ、だって先生……」
アクアは少し申し訳なさそうな顔を見せる。
「もう、人魚の姿には戻れないんだよ! 後悔する事があるかもしれないんだよ!」
「で、でも、私は覚悟を決めたから……」
それを聞いた祖母ちゃんは溜息を吐く。
「自分でそう決めたんだったら、責任感をもって生きていきな、もうあたしは何も言わないよ」
改まりアクアはフレデリック王子を見詰める。
「フレデリック様を助けないと」
アクアは拘束されているフレデリック王子に近づく。ビュルギャの真意は解らないが、その様子を黙って見ていた。
「フ、フレデリック様、大丈夫ですか? 今、お助けしますからね」
アクアはフレデリック王子の体を抱きしめ、体を起こすと顔を傾け熱い接吻をする。
ドラゴニュート族となったアクアとドラゴニュート族の王子の二人の接吻シーンは不思議な美しさがあった。
「フレデリック様、目を開けて」
アクアの問い掛けにフレデリック王子の体に変化が現れる。次第に体の色が薄くなっていくのだ。
薄くなる?
薄くなっていったかと思ったら、泡が弾けるようにポンと音を立てフレデリック王子は黒い鴉へと姿を変えた。
「フフフフ、アクア王女様、素敵な接吻をありがとう。吾輩はとても感動した。感動したよ」
「えっ?」
アクアは驚いた表情で固まっている。
「あ、あいつは!」
祖母ちゃんはハッとした顔をする。
「あの野郎! 使い魔の鴉じやねえか!」
バステトが叫ぶ。
鴉はいきなり体から紐のような物を放出し、アクアの体を拘束した。
「フ、フハハハハハハハハハハハハ! やった! とうとうやったよ! とうとう手に入れたよ!」
それを見たビュルギャは歓喜の声を上げた。
「これは一体、どういう事だ?」
ペーターは困惑した声を上げる。
「ビュルギャ! どういう事だい? お前は一体何を企んでいるんだ? 一体何がしたいんだ? アクアの拘束を解きなさい!」
祖母ちゃんが厳しく声を上げる。
「返すわけないだろう、あたしはこの状態のアクアを手に入れたかったんだから、自らの意志で姿を変えた人魚をね」
「な、何なんだ? 意味が解らないよ!」




