act13 海の魔女との問答
アクアは鞄から怪しい色をした丸い薬のような物を取り出した。
「それじゃあ、最初に私から質問なんですけど、前にビュルギャ様から、ドラゴニュートになる事が出来るという薬を頂いたんですけど、私は飲むつもりだったのですが皆が飲むのを止めるように言ってくるんです。一応、飲む前に、これってどういう薬なのかを知りたいんですけど」
「ああ、それは、飲む者が成りたいと願った姿になれる薬だわよ、アクア、あんたがドラゴニュートになりたいと言っていたからあげたのさ」
貰った薬は、酒場の人魚の老婆が言っていた成りたい姿になれるという薬だったようだ。
「成りたい姿になれる薬? ドラゴニュートになれる薬じゃないんですか?」
「同じ事だろ。あんたはドラゴニュートになりたいと思っているんだったら、ドラゴニュートになれるんだよ、正にそうなれる薬じゃないか、間違ってないだろ?」
「で、でも、その説明は聞いてませんよ」
不満げにアクアは呟く。
「文句があるなら返しておくれよ、無理に使えとなんて言ってないしね、あんたが愛しいドラゴニュートの王子様と仲良くなりたいっていうから、態々用意してあげたのに、酷い言われようだね」
ビュルギャは返せとばかりに手を差し伸べる。
「い、いえ、文句がある訳じゃないです。ちょっと説明が足りないと思っただけで…… だ、だって飲んだ時に別の姿をイメージしていたらそれになっちゃうって事でしょ、それじゃ困るじゃない!」
アクアは薬を引っ込める。まだ諦めきれれていないようだ。
「それと、もう一つ聞きたいんですが、やっぱり元の姿には戻れなくなるんですか?」
「ああ、それは残念だけど、元には戻れなくなるね、そして、その薬を飲めるのは生涯に一度きりだ。もう一度飲んで人魚に戻るなんて真似も当然出来ない。ただね、それでも、どうしても愛を添い遂げたいなら飲むべきなんじゃないかと思うよ、恋愛は同じ種族になった方が何かと上手くいくだろうしね」
嫌らしい表情を浮かべビュルギャは言及する。
「…………」
動揺したアクアは言葉を詰まらせる。
「じゃあさ、今度はあたし達から質問しても良いかい?」
祖母ちゃんが手を挙げる。
「何だい? 一応話は聞くけど、お前達からはあたしに対する敵意のようなモノを感じるよ、不快だねえ、とても不快だね」
ビュルギャは鋭い視線で僕等を見る。
「じゃあ、あたし達の質問には答えてくれないって事かい?」
「いや、答えても良いと思う事は答えるよ、それは、あたし次第だからね」
僕等を睥睨しながらビュルギャは言及する。
「ふ~ん、まあ、取り敢えずそれでも良いかな」
祖母ちゃんは仕方が無いといった表情でふうと息を吐いた。
「そうしたら、まず最初の質問なんだけど、妖精の国の沖合いと人魚の国の沖合で略奪行為を続けていたフック海賊団というのがいたんだけど、実はあたし達がそのフック海賊団を退治したんだよ」
瞬間、ビュルギャの顔が僅かに歪む。
「だけど、この人魚の国では、ビュルギャさん、あんたが倒した事になっていた。どうしてそうなったのか知らないかなと思って」
「残念ながら、知らないね」
しばらくビュルギャと祖母ちゃんが目線を突き合わす。
「そのフック海賊団の船長フックは妖精の国でアダーストーンを手に入れた。それをビュルギャ様に届けると言っていた。その辺りの心当たりってあるのかな?」
「知らないね」
感情の無い声でビュルギャは答えた。知らぬ存ぜぬを貫くようだ。
「じゃあ、ビュルージャ・バートリーという名前に心当たりはないかな?」
またビュルギャは僅かに顔を顰める。
「…………何か質問の仕方がムカつくね」
「ムカつくって事は心当たりはあるの?」
「…………」
もう返答は無くなった。




