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レモネード  作者: 深海松
7/7

ほかほか

「聞こえてた?」

「……うん」

「そっか、うちの親声大きいんだよね」

「……そう」

「もう会うなって言われたよ」

「……そう」

 私たちの足音だけがぱたぱた鳴っている。

「なんかごめんね、帰ってれば良かったのに」

「私も帰ろうと思った」

「ふーん、でも帰らなかったんだ」

「……帰れなかった。泣いてたから」

「なんで泣くんだよー、私だって泣いてないぜ?」

「――泣いてた癖に」

「バレてたか」

公園に着いた。梅雨ちゃんが友達を辞めようと言ってきた公園に。そこでは今日も宝石のような夜景が見えた。

「私が泣いてたのは、世界が理不尽過ぎたから、梅雨ちゃんの親を世界と言うのはおかしいかもしれないけど。――私が泣いてたのは、不幸過ぎたから。私たちが、可哀想過ぎたから」

 さっきまで軽快な受け答えをしていた梅雨ちゃんが、黙った。


「違う」


「私は可哀想じゃない。不幸じゃない。――だって、今隣に彩月が居るから。好きな人が居るから」

 前ここに来た時は貴女は泣いていた。

 大きなその瞳に溢れんばかりの涙を溜めていた。

 でも今私の横にいる貴女は、強く挑戦的な輝く瞳を携えてフェンスに体重を預けている。

 煌めく夜景に包まれながら私が思ったことは一つ。いつも梅雨ちゃんは、

 

「――綺麗だ」

 

「だよね」

「夜景のことじゃないよ……」

「あ、そっか……あ! 知ってる? そこの自販機にホットレモンがあるんだよ! 飲もう?」


 頬はまだひりひりしていたが、心と身体だけぽかぽかしていた。

 私は今、とても幸福だ。

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