ヲタッキーズ167 萌えるラギィ Part-1
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第167話「萌えるラギィ Part-1」。さて、今回は主人公のSFに影響を受けたスーパーヒロインの連続殺人鬼が現れます。
カメレオンのようにヲタクになりすます犯人に捜査は難航しますが、犯人が主人公のSFに影響を受けている事がわかり突破口が。しかし、その時既に犯人は…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 宇宙女刑事ギャバ子 vs メトロ戦隊ちかてつジャー
市場があった頃、アキバは夜の早い街だったけど、国際観光都市となった今は、摩天楼を中心に"不夜城化"が著しい。
その摩天楼の谷間に万世橋警察署はアル。
「OK、完璧だ。契約してくれ。ありがと、ポルラ…うん、君もね」
敏腕警部ラギィのデスクにコーヒー持参で遊びに逝く。
「あら?合同捜査案件もないのに、何でテリィたんが、こんな時間まで署にいるの?」
「エージェントのポルラから"宇宙女刑事ギャバ子"について良い知らせがあった。何だか当ててみて」
「興味がナイわ」
気のない素振り。
「ヒントをあげるょ!明日の"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"のトップ見出しはこうだ。"テリィのベストセラー、映画館で冗着!"」
「げ!まさか"宇宙女刑事ギャバ子"が映画化されるの?」
「そして、ラギィは銀幕に永遠に残るヒロインとなるのだ!シネコンで僕と握手!」
ウンザリ顔のラギィ←
「私じゃなくて、ギャバ子がね」
「でも、あくまでインスピレーションは君だ。で、誰に演じて欲しい?」
「えええっ!ホントに"ギャバ子"が映画に?」
色めき立つヲタッキーズのエアリ&マリレ。因みに、2人はメイド服だ。だって何と逝っても、ココはアキバだからね!
「ほら、コレが正しい反応と逝うモノだ」
「おめでとう、テリィたん!」
「thank you」
エアリ&マリレは、早速互いの"予想女優"を妄想。
「私の役は、橋本旦那かな。1000年に1人の美少女!」
「私は綾瀬ぱるか。ミユリ姉様より巨乳だし」
「はい。もしもし…」
ラギィ警部のスマホが鳴る。
「殺人が起きたわ」
「…住所は?」
「言ったら楽しくナイでしょ?」
ラギィが指を鳴らす。直ちに逆探知が始まる。
「ソレもそうだわ。で、貴女は?」
「"宇宙女刑事"のファンょ」
「素敵。推しは誰?教えて」
アキバによくいる構ってちゃん系の厄介女子だw
「先ず犯人は私。ヒントは以上ょ」
「…逆探知成功。神田同朋町42」
「地下鉄超特急のグランド末広町ステーション構内ね」
全員が立ち上がる。
「行くわょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
グランド末広町ステーション。ブース型のシェアオフィスが並ぶビジネスセンターに非常線。背広姿のメガネ男の死体。
「奥から2つ目の個室ブース」
先行したマリレが指差す。鑑識のフラッシュ。制服警官が黄色い規制線のテープを張り交通整理。早くも集まる野次馬。
そして…遺体はストレッチャーの上だ。
「ヲタッキーズ、財布だ」
鑑識がビニール袋に入れた財布をエアリに渡す。
「ありがとう…アレク・ピタマ?現金はあるから、強盗ではなさそうね」
「神田花房町在住…あら?弁護士だわ」
「帰宅途中かしら」
財布に入ってた秋葉原D.A.の写真付きIDを確認。
「銃槍はどう?ルイナ?」
「胸を5発。でも、45口径Hzだから、結構な銃声だったと思うの。ホントに現場、誰も聞いてないの?」
「サイレンサーか地下鉄新幹線のリニア音で消したか、どっちかね」
ルイナは、車椅子の超天才でラボから"リモート鑑識"で手伝ってくれる。本職はD.A.の首席補佐官で超多忙なのだがw
「そもそもヲタクは見ざる聞かざるだしね。検視で何かわかったら共有スルね」
「thanks ルイナ。ところで、君の役は誰に演じて欲しい?」
「藤口ニコル」
僕は、ラギィを振り返る。
「ホラ、みんな即答だぞ」
「テリィたん、何の話ょ?」
「君は誰が良い?麻丘めぐみ?」
無視するラギィ。ヲタッキーズが戻る。
「何かわかった?」
「8時45分頃、女性が大きな音を聞いてる。その女性はアラサー女子が足早に42丁目の出口に向かって走って行くのを見た」
「黒のコートに帽子、サングラス。絶対領域アリ」
うなずくラギィ。
「その男を見た人がいないか、似顔絵を作成して被害者の家族に確認してもらって。知人かもしれない」
「何か?」
「犯人が自ら通報して来たのょ。ソレにあの声…楽しんでやってたわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラと居心地良くて常連が沈殿、客回転も収益率も急降下だ。
で、今宵の"潜り酒場"は…
「おかえり、テリィたん。お疲れ…てる?」
「ヘトヘトだょ検視局でラギィ達とデートだった…あれ?2人で何か悪企みしてる?僕の誕生日かな(半年以上、先だけどw)」
「スピア、テリィ様にもお話ししたら?タマには良い意見もお持ちだし」
推しのミユリさんがカウンターの中から絡む。
スピアはハッカーで、超天才ルイナの相棒だ。
「ミユリさん、タマに、かな?せめて、しばしば?」
「うーんテリィたん。でも、茶化すのは絶対NGだから」
「わかった。サメの如く真面目モード」
すると、スピアは深呼吸してから小さな声でつぶやく。
「同棲スルの」
えええっ。ハッキリ逝って面食らうw
「そうょね?早過ぎるわょね?付き合って未だ2週間だし。でも、アラサー女子には時間がナイの。同棲のプラス面とマイナス面を整理した。結果、プラス面の方が多い」
メールが転送されて来る。"真面目"に読み上げる僕。
「彼といると若返る」←
「そうなの!」
「今だって若いわ(私よりw)」
ミユリさんから(棘のアル)コメント。
「マイナスは…男の部屋に住みたくない?」
「だって、彼がどんな奇癖の持ち主か分からないし」
「どっちにしろ応援スルょ。確か前の同棲相手には、全財産だまし取られてたょな?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署の地下にある検視局。モニター画面の中には超天才ルイナの画像。引き続き"リモート鑑識"のお時間だ。
「検視結果によると、死ぬ1時間前にマティーニを飲んでる。他に注目すべき点は無いわ」
「え。じゃナゼ呼んだの?」
「銃弾ょ。底に何か刻まれてる」
モニター画像は、弾丸底部のUP。
「製造印では?」
「いいえ。手彫りょ。並べると、ノ・π・カ?円周率?数学の謎かけかしら?
「違うと思うな。ソレはπじゃない。元、だ。並べ替えると…元・カ・ノかな」
鋭く断言スル僕。
「コレは、元カノに捧げる殺人だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「警部。遺族に似顔絵を見せたけど、知人ではないとのコトでした!」
「鑑識はどうなの?」
「個室オフィスからは、指紋1200個を採取、DNAサンプルも760個以上出て、現在絞り込み中です。相当時間がかかるでしょう」
渋い顔のラギィ。スマホが鳴動。
「警部。"宇宙女刑事ギャバ子"宛に電話です」
スマホを渡される。
「ラギィょ」
「ギャバ子、私のメッセージは?」
「見たわ」
瞬間、間が空く。
「OK。お次は芳林パークのメリーゴーランドょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
芳林パークは、再開発が進んだ結果、摩天楼群に囲まれた、NYのセントラル・パークみたいな公園になっている。
メリーゴーランドは、パークの外れにアルが、芝生に覆面パトカー2台で乗り上げ、全員が拳銃を抜いて降り立つ。
「ヲタッキーズは、反対側から回って!」
リズミカルに上下スル木馬に隠れ、奥が見渡せない。拳銃に点灯したハンドライトを添え慎重に奥へと踏み込むw
パイプオルガンのメロディが流れる中、その死体は木馬に縛りつけられたママ、虚ろな目をして上下に揺れてる。
まるで、メリーゴーランドを楽しむかのように。
第2章 メトロ戦隊ちかてつジャー
早朝なので高齢男性の野次馬が多い。暇なのだw
「手口は同じ。45口径Hzで4発撃たれてる。左の脇腹に打撲症があった。犯人が銃で突いた痕だと思う。つまり"私の犯人は左利き"」
「銃弾は鑑識が?」
「また文字が刻まれてたわ。いずれ」
考え込むラギィ。
「メッセージのつもりね。"元カノはいずれ…"何かしら」
「うーん何もヒラメかナイ」
「あら。小説家にとって連続殺人は聖杯でしょ?」
ラギィが冷やかす。僕は溜め息だ。
「ギャバ子が関わってなければノンキに構えるトコロだけど、何か責任を感じルンだょなw」
「何で?水戸黄門のファンが殺人を犯しても、助さん格さんに責任は無いわ(何だソレ?)犯人は、結局、別の理由を見つけて殺人を犯すだけ」
「とにかく"宇宙女刑事ギャバ子"が原因ナンだ」
ソコへ、黒いSUVの車列が続々到着。一斉にドアが開いて次々と降り立つのは黒レオタードに網タイツ…女戦闘員?
赤いネッカチーフに赤い腰布。昭和レトロだw
「UFOでも墜落したのかな?MIBのお出ましだ」
「ソレかSATOが管轄権の行使をしたかどっちかね」
「回転木馬で網タイツ合コンの線も捨て難いな」
女戦闘員は仮面ながら黒レオタードで、根拠のナイ美人オーラが出てるが、指揮官の女幹部だけキャリア風の黒スーツ。
「メリーゴーランドの周辺を立入禁止にして。それから6番街から82丁目までを完全封鎖。神田リバー水上空港、グランド末広町ステーションは、別命あるまで全便出発を凍結」
「キーッ(悪の組織風の"了解"だw)」
「所轄の方?貴女が噂の"宇宙女刑事ギャバ子"のインスピレーションね?私達は、秘密組織"WIB(women in black)"」
え。"MIB(men in black)"なら知ってるけど(Ⅱは駄作だったわ)女子版があったのね?知らなかったわ…
そう思いながら、握手を交わすラギィ。黒スーツの女幹部はヒロピンAVの人妻ヒロイン的な風格がアルw
「私は万世橋警察署のラギィ警部」
「ネットニュースで知ってるわ。そして、貴方がオマケのテリィたんね。私はショア・ダジョ」
「ショア・ダジョ?絞殺魔"いろは"を2022年に捕まえた?」
"いろは"は、連続殺人を犯したスーパーヒロインだ。
「YES。特技はクロスワードパズル。自己紹介は以上。死体はどこ?」
「私のチームが捜査を始めてる。鑑識が動いてるし、聞き込みにも入った。寒いトコロを網タイツで大勢来てもらったのに悪いけど、貴女達の仕事はないわ」
「警部。私は、スーパーヒロインの連続殺人鬼を逮捕スルために呼ばれたの。所轄が協力しようとしまいと捜査はスルから。死体はどこ?」
ヤバい雰囲気。ココは"笑い"が必要だ。
「おっと!今のセリフ、シビれたな。映画で使いたいから、最初からもう1回言ってみて」
僕はメモ帳を取り出し、ヲタッキーズに目配せ。
「みんな!ゴミ箱に被害者のハンドバッグが捨てられてた。中に入ってたIDによれば、被害者はミシェ・ルルス」
「職業は、犬の散歩代行」
「ハンドバッグに指紋がついてたけど、被害者のにしては大きいと思うの。ラボに…」
ヲタッキーズのエアリとマリレがカワリバンコに盛り上げるが、ショアはソレを遮るようにスマホを抜き指紋にかざす。
「何?」
「ウチのラボに送ったわ。目下、データ照合中ょ。御社より遥かに速いし…とにかく、スーツも汚れないわ」
「すんげー。ソレってアプリ?」
正直、驚く(ラギィもw)。ショアは微笑みながら、僕達にスマホ、と逝うか、デバイスを見せるが不思議と嫌味がナイ。
「実はね。私もこーゆーオモチャに惹かれてWIBに入ったのょ。死体を見せてもらうわ…え。テリィたん、何?」
「coolだ!ソレ、ちょっち見せてょ」
「テリィたん、ヤメて!」
ラギィは…ホンキで怒ってるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に戻ると、捜査本部にはジャンパー姿の電器屋さん?が溢れ、何やら色々家電製品を持ち込んでゴッタ返してるw
「何が始まるンだ?」
「作戦本部だわ」
「作戦本部?」
明らかにイライラしてるラギィ。
「ねぇショアって一体何者なの?」
「いわばラギィのWIB版だ。若干25才でスーパーヒロインで絞殺魔の"いろは"を逮捕。決め手は…」
「決め手は違反切符でしょ?彼女が"いろは"の車種を突き止めた。後部座席には美少女が乗ってて…」
有名な事件で、解決に至るまで何度も世間を騒がし、報道もされたが、ショアの名は表には出ズ真相を知る者は限定的。
「でも、実際はショアが少女の命を救ったンだ」
「テリィたんは、ショアに会ってズッと興奮してるね」
「まさか。でも、確かに少しは感心してるカモ」
"電器屋さん(実はWIBのオペレーターだろう)"が透明アクリル板を運び込む。春から1人暮らしを始める女子大生のお引っ越しみたいだが…恐らくアレは噂のスマートボードだw
「ラギィ!ちょっちウォールームを見て来て良い?」
「何でょテリィたんまで?浮気者!」
「コマンダー、オールシステムisグリーン…WIBラボとのデータリンク・オープンです!」
浮気者って何だか良くわからないが、ウォールームに入るとヤタラSFチックな言葉が飛び交ってる。ショアに話を聞く。
「もう事件を分析してるのか?」
「システムがね。とりあえず、2つの現場で検出した証拠で容疑者35人をUPしたわ。今、ウチのデータベースと照合してる。マトリックスから、被害者達の共通点がわかるわ。犯人の狙いや傾向も見えて来る」
運び込まれた透明のアクリル板には、今や無数の文字や数列が明滅を繰り返している。
恐らく、ソレらは膨大なデータ処理の状況をリアルタイムで伝えて来てくれてるのだ。
試しに小さなウィンドウをスワイプしてみる。
スワイプした先に新しいウインドウが現れる。
「この2人の共通点は、同じジムに通い、MOMA美術館のメンバーで、同じ施設で犬を引き取った?ラギィ、スゴいぞ」
「げ。勝手にAIが仕事をしてるの?」
「そうょラギィ警部。でも、AIはデータ照合は出来るけど、考えるコトは未だ苦手。人間を逮捕スルには、ヤハリ頭脳が必要なのょ例えば彼」
スロットマシンの数字のように、いつ果てるともなく流れる顔写真の中から1枚スワイプ。そのママ隣のボードに移すw
「彼は、自分で犯罪を通報し、人の多い場所で犯行に及ぶ。ストーカーには靴紐も結べないような人が多いけど、彼は違う。賢いわ」
「ねぇ犯人を賞賛してルンじゃないの?」
「ジョーズでも鮫狩りの達人が鮫を賞賛する。同じょ。相手を知ることが先ず大事」
なるほど納得だ。
「執筆と似てるな。犯人に共感しないと、急速に作品から信憑性が失せる」
「因みに、スワイプした彼は、騒ぎを好む傾向がある。そもそも、彼が"宇宙女刑事ギャバ子"に惹かれたのは…」
「あれ?気持ちは嬉しいが、ショア。なぜ"ギャバ子"を大量にお買い上げ?」
見ると、箱詰めで"ギャバ子"が運び込まれてる。
「犯人がファンなら、私達もファンになる必要があるわ。エボリ。あらすじをお願い」
エボリは、褐色肌のアジアンだ。
「不動産王が殺害される。宇宙女刑事ギャバ子は、被害者に恨みを持つ人々を捜査。容疑者として浮上したのは、若い美人妻や危険なマフィアで…」
「失礼。一応ベストセラーだ。そんなにドライな感じで読む必要ないだろ。頼むぜ」
エボリは咳払いし、急に感情を込めて話し出すw
「記者のジムズ・ルックは取材のためにギャバ子に同行。衝突を送り返す2人だが、第11章では、恋を認め合いセックスをする」
ウォールームの全員がラギィを見るw
「フィクションです!」
「最終的に犯人は、実は…」
「おいおいおい。ネタがバレる!」
ラギィと僕の慌てぶりに満足したか、ショアが仕切る。
「じゃあみんなキャッスルの感性に敬意を表しながら、この本の中に犯人のヒントを探して頂戴」
「あとサイン本にしたい人は1列に並んで!」
「ショア捜査官!ミシェのハンドバッグに付いてた指紋は、ドルド・ソルトと判明。逮捕2度。故殺罪。2020年に仮出所。最初の現場でも、彼の小指の指紋の1部を採取」
ショアが立ち上がる。
「やはり被害者のバックに触れたのね。行くわょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕達を載せた黒のSUVが急停車。
「…わかった。今、到着したわ」
「了解。4 」
「あそこがソルトのアパート。職場に聞いたら1時間前に出たそうだから、もう帰宅してるハズょ。突入チームが来るまで待つわ…何やってるの?」
僕は、車内の備品をチェック中w
「テリィたんは、何でも触らないと気が済まないの」
「スーパーの主婦みたいね」
「暗視ゴーグルだ!僕も持ってる。ギャバ子の3冊目に登場させよう。美人で冷血なプロファイラー役と一緒に」
僕は、ショアに視線を投げる。すると…
「貴女達は、いつからデキてるの?」
狭い車内でラギィを振り返る。
「デキてナイわ。テリィたんが私をリサーチしてるだけ」
「よーくリサーチされているみたいね」
「セックスはしてない。2番目の推しと同じだ」
が、ショアは引かない。
「プロファイラーの私が間違えると?」
「ソレについては確実に間違い」
「デキてないなら、なぜ現場に同行させるの?」
ラギィは即答。
「意外と使えるのょ」
「意外なのか?」
「ホントかしら。ヤメて。そのテーザー銃、下ろして頂戴」
言う通りにする。テーザー銃はスタンガンの一種だ。
「突入チームが来たわ」
黒のSUVが2台。ショアが僕を振り返る。
「テリィたん。貴方は車にいて」
「おいおいおい…わかったょ。でも、窓は開けてくれ」
「ショア捜査官、突入準備完了」
対テレパス用ヘッドギア、防弾ベスト着用の突入チームが短機関銃を構えアパートに入る。最後尾にショア。ところが…
反対側から白い有料コンビニ袋を提げた男が帰って来るw
「…待ちなさい!」
ショアが叫ぶ。買い物袋を落とし逃げる男。よりによって…僕の方へwコレはチャンス!1度撃ってみたかったンだw
目の前を走り抜ける男をやり過ごし、ゆっくりドアを開けて必死に走る背中に向けてテーザー銃を発射!電極が命中←
「✖️◇√Å£●々〓」
全身痙攣して倒れる男。突入班が取り押さえる。
「な?使えるだろ?」
「OK。後でブラックパンダー、買ってあげるから」
「ショア捜査官、問題ょ。彼には小指がないわ」
ナゼかドヤ顔のラギィ。痙攣しながらもニヤリと笑う男。
「で、どっちの子がギャバ子だ?」
ラギィは、溜め息をつく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「物々交換のサイトで見つけたんだ。まぁ何を探してたかは関係ない。"貴方の指、高値で買い取ります"って奴だ」
「高値とはいくら?」
「聞いて驚くな!50万円だ!」
包帯を巻いた小指付きの手を見せる男。ドヤ顔w
「…安くない?」
「おい!腎臓より高いぞ。だから、メールで俺は条件に合うと売り込んだんだ」
「え。どんな条件があったのょ」
ショアもラギィも呆れ顔だw
「提示された条件は、先ず"重罪を犯したコト"だ。コレは問題がねぇ。次は"仮出所中の人"。まさに、俺にぴったりだ。あと"宇宙女刑事ギャバ子"が誤認逮捕しに来るから楽しみに待ってろと言われた。でも、変な野郎がテーザー銃で撃って来るとは聞いてなかった」
「殺人現場にギャバ子が現れると知ってたのね」
「因みに、俺にはアリバイがある。行きつけのバーに閉店時間までいたんだ。小指をそいつに売ってたからな」
ショアとラギィが先を争って画像を示す。
「この男かしら?」
「うーんマジわかんねぇ。ソイツも帽子にサングラスをかけてたからな」
「包帯を巻いたのは誰?」
すると、男はニヤリと笑う。
「ソイツはギャバ子なら気づくと言っていた。だから、優しくしてくれょギャバ子」
「嫌ょ」
「つれねぇな。そっちのギャバ子は?」
問答無用。ラギィが男の小指の包帯を解くと…数字だw
「暗号かしら」
「指の切断に秘密の暗号。まるで、ミステリーだ」
「首のすげ替え事件とかね」
ショアが一言挟む。
「乙女ロードで起きた事件か?アレも君が捜査を?」
「ショア捜査官、技術班が解読法は全て試したけれど、この暗号だけは解読出来ないと言って来ました」
「つまり?」
乙女ロードの事件もショアが関わってたのか。エボリはアタッシュに埋め込んだPCのキーボードを叩きながら応える。
「この暗号を破るには、何らかのカギが必要です」
「ラギィ警部。全ては"宇宙女刑事ギャバ子"へと導くためだった。つまり今、貴女の頭脳が試されてるの。解読のカギは貴女が知っているハズ」
「でも、可能性は無限大ょw」
エボリが打ち込んだデータがスゴい勢いで解析されてる。僕は、激しく明滅を繰り返す文字式をボンヤリと眺めている。
「左の列の数字は300以下。右の列の数字は260以下だ。きっと左右の列の組み合わせが座標になって、意味のある言葉を表すと思う…実は、ギャバ子にも登場した暗号だ」
作家の常識をフル動員w
「1ページは大抵300word。最初の数字は…ページ番号で、次の数字は多分言葉だな。"私は"かな?次は殺人を背負う?」
「140 5-204?犯す、じゃないかしら?エボリさん、何とかなる?」
「今、お2人の話していたコトをプログラムに落としてアップロードしています」
瞬く間に文章が流れる。
「私は殺人を犯す。今夜0時までにお前が止めなければ」
「タイヘン!0時まであと8時間ょ!」
「やっぱり、犯人は私に挑戦してルンだわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"秋葉原マンハッタン"の夜。不夜城となってアキバの夜景に屹立スル摩天楼。その谷間にある万世橋の捜査本部。
SFチックなウォールームを出ると、本部の反対側の隅でホワイトボードの前で腰を下ろし考え込んでいるラギィ。
「古風だな」
「テリィたん?ホワイトボードで充分よ。路線図を見てたの。グランド末広町ステーションから芳林パークの回転木馬をたどれば、次の現場が見えて来ると思ったんだけど…」
「被害者にもパターンがナイかな?男の次は女。弁護士の次は犬の散歩係」
試しに逝ってみたけど、早々にサジを投げる僕。
「無理か。パターンは見えないし、次の現場もわからない」
「もう9時よ。時間が迫っている。"宇宙女刑事ギャバ子"に宛てた殺人なのに、インスピレーションの私には推理が出来ない」
「ファンが人を殺しても水戸黄門に責任は無いょ」
その時、網タイツの女戦闘員の1団が駆け込んで来る。
「ショア捜査官、進展がありました。ソルトの包帯からエタノールとホルムアルデヒドを検出」
「遺体防腐剤?」
「YES。ホルムアルデヒドは末広町ステーション、エタノールは芳林パークの回転木馬からも検出されてる」
僕は頭をヒネる。
「葬儀場で働く奴かな?」
「病院や遺体安置所カモしれないわ」
「うーんテリィたんの仮説を採用!葬儀場から調べて!」
エボリが悲鳴を上げる。
「D.A.だけで100カ所以上もあります。間に合いません」
「じゃ葬儀場の従業員と前歴者をクロスチェックしてょ」
「試します…6人」
僕の的確を極めたアドバイス(単なる思いつきw)。
「全員6時までに勾留して…テリィたん、確かに使えるわ」
ショアはラギィに囁く。ラギィは、意味不なドヤ顔でうなずきながらも、なぜだかフト寂しそうな表情を浮かべる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。マジックミラー越しに喪服の男達を見る。
「アレが6人全部?葬儀屋なの?」
「YES。全員が、人を殺してコレ以上、仕事を増やしたくナイと言ってます」
「時間の無駄だわ…」
電話が鳴る。
「ラギィ。外線で"宇宙女刑事ギャバ子"に代われと。逆探知してる」
「…はい。万世橋警察署のラギィ警部ょ。ギャバ子じゃなくてゴメンね」
「ギャバ子。何で私を止めないの?私、貴女に止めて欲しかったわ。なぜ、この私にスーパーヒロイン殺しを続けさせるの?」
スーパーヒロインを殺した?コレから殺す?どっちだ?
「どこにいるの?」
「1人で来て」
「わかった。1人で行くわ。貴女を助けたい。だから、私を信じて」
必死の説得だが、虚しい。
「ねぇギャバ子、教えて。貴女の負けょ。私に敗北した気分はどう?」
通話切断。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原37番地。雑居ビルの地下駐車場に、謎の秘密組織の黒のSUVが殺到。フロアの闇の中にスマホが落ちてる。
「階段を調べて!屋上も建物の隅々まで調べて!」
「…遺体がアルとすれば、この近くのハズょ」
「ココだ!ラギィ、大量の血を発見!」
ヲタッキーズのマリレがライトでフロアを照らす。
「ヒールの折れた靴もある。髪の毛も。抵抗したのね」
「薬莢が4つ落ちてる。ショア捜査官、犠牲者が助かった可能性は、かなり低いわ。前は遺体を現場に残してたのに…」
「ソレに人気の有名な場所を選んでた。手口を変えたのね…
コレで予測不可能になったわ」
ショアは…お手上げポーズだw
「確認しました。何処にも遺体はありません」
「どこに消えたのかしら」
「車のトランクに入れてる。血痕はここまでょ」
ラギィがフロアの血痕を照らす。
「犯人は、車をアイドリングさせて待っていた。そして、遺体をトランクに入れて走り去った?」
「駐車場に出入りした車のリストと防犯カメラをチェック!
駐車場の契約者も全員洗って。大至急!」
「きっと盗難車ょ」
ラギィのつぶやきにショアが振り向く…怒ってるw
「私のチームが調べてる。貴女達より余程早いわょアキバP.D.ラギィ警部。貴女は帰って休んで。貴女に警備をつけます。疲れたら使えない。さらにクタバッたらコッチが困るわ」
ショアは歩き去る。
第3章 パンケーキは恋のメッセージ
その夜の"潜り酒場"。
御帰宅スルと、みんなで"シン謎の円盤UFO"を見てる。
ムーンベース指揮官がミユリさんに似てるけど…まさかw
「みんな、寝ないのか?」
「色々悩んじゃって眠れナイ。決断出来なくて」
「おお!ムーンブラックサンダー!」
第3話"猫の目は火星人"だ!大好きなエピソードだ。
「冒頭の月面戦闘シーンは"2001年"を超えてるね…ソレで同棲はどーするの?」
「そもそもカレとの同棲は、私が落ち着くまでの一時的な処置だったの」
「(え。どーゆー意味だろうw)ウチの女性陣は、いつも心に忠実だからな」
適当に答えてたら、スピアが鋭く絡んで来る。
「どうしたの平気?テリィたん、元気ナイ」
「僕のSF小説のせいで事件が起きてる」
「ソレって作家の責任なの?」
カウンターの中のミユリさんも心配顔だ。
「…まさか、ソレで執筆を辞めるとでも?」
「ソレはナイ。ただ、ラギィを危険な目に合わせてルンだ」
「ラギィは、自分の身を守るコトの出来る人です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃?、ラギィは自室で新秋楼の炒飯を食べている。
物音がして炒飯を床に置く。引き出しから拳銃を抜き…
ドアをオープン!
「テリィたん!何しにきたの?」
「ご覧の通りワインの試飲だ。護衛はどこにいるんだ?」
「私が帰っていいって言ったの」
お約束の殺人フラグだなw
「ダメ?だって、鍵はかけてあるし、武器もあるわ…犯人は今まで殺害現場に死体を残してきたのに、なぜ今回は駐車場になかったのかしら」
「だから、手口を変えたんだろ?…飲む?」
「要らない」
そもそも、まだ僕に拳銃をつきつけてるしw
「ソレこそダメだ。ミユリさんが休めって。緊張をほぐすには2000年物のシャトルブパフェが1番だって」
「そうね。ミユリ姉様が言うなら間違いナイわ」
「僕が逝うなら間違いばかりか…乾杯」
2つのワイングラスがチリンと音を立てる。
ソレを合図に日頃の鬱憤を吐き出すラギィw
「あのね!捜査官のショアの話を聞いたり、秘密兵器を見る時のテリィたんの目が異常ょ。ねぇ私のホワイトボードじゃダメなの?」
「な、何だ?…まさか嫉妬してたのか?」
「違う、違うわ。恥ずかしいだけ。テリィたんがアンマリはしゃぐから。データマトリックスってスゴーイ、ショア捜査官、もっと僕に教えてぇーとか」
意外な展開。とりあえずのハグ。
「馬鹿げてるょラギィ」
「だって、彼女と妄想してた!」
「妄想?」
ハグされながらブツブツ文句を逝うラギィw
「とにかく、私と捜査して。もっと私をオカズにしてょ!…じゃなかった、私のチームでいてょ!妄想も仮説も立てる時は私と立てるべきょ」
「うーん万世橋の全員がチームだからな」
「そうだけど、ただ何か閃いたら、先ず私に言うべきなの!」
こりゃ全部吐き出させようw
「そうする。じゃミユリさんのワイン、も少し飲もう」
「疲れたから、もう寝るわ」←
「上等だ。でも、僕は帰らないぞ。今宵の僕はラギィを護る騎士だ。ナイトはナイト、なんちゃって」
ニコリともしないw
「親父ギャグじゃスーパーヒロインの連続殺人鬼を撃退出来ないわ」
「でも、僕のSFのせいで君は命を狙われた。僕には、ラギィを護る責任がアル」
「もういいわ。疲れた。でも、忘れないで。私は、もう元カノだから。寝室のドアを開けたら生きて帰れない。私には音波銃がある」
僕は、枕と毛布でソファに巣穴を作る。
「ROG」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバの夜明け。朝焼けが窓を染めて逝く。スッキリ目覚めたラギィが寝室から出ると…ソファは空で甘い香りが漂う。
「テリィたん、何処?…え。パンケーキ焼いてるの?」
「YES。だって、卵は賞味期限切れ。ベーコンは…何かが生えてた」
「だって、自炊しないから…」
僕が指差す先に、大量の空になったテイクアウト容器の山w
「コーヒーを淹れたらフィルターが壊れてたから、新しいフィルタをMAmazonに注文しといたょ(朝早く僕を起こしに来たミユリさんがw)」
「スゴい!完璧だわ(きっとミユリ姉様が来たンだわヤバw)」
「さぁイングリッシュブレックファーストだ。召し上がれ」
パンケーキをひっくり返しながら声をかける。ところが…
「テリィたん。悪いけど時間がナイわ。早く死体を見つけなきゃ!」
ラギィがドアを開けたら…死体が転がり込んで来るw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一転、ラギィの部屋は殺人現場だw
両手を広げ転がってる女子の死体←
「ラギィ。貴女が起きた直後に発見したの?そう、テリィたんが朝食を作ってくれてたのね?メニューは?」
「え。何でメニュー?」
「良いから!テリィたんは、何を作ってたの?」
エアリ&マリレの事情聴取にラギィは怪訝な顔だ。
「パンケーキだけど…」
「パンケーキ!甘いわ。かなり親密な様子ね」
「何言ってんの?とにかく!新聞は4時に来る。私が起きたのは7時だから、その空白の3時間の間に犯人は遺体を置いたのょ!」
誰も聞いてナイw
「で、テリィたんとベッドに入ったのは何時?」
「芸能ニュースのパパラッチ?あのね…」
「目が覚めたら、彼氏はパンケーキを焼いてて、テーブルにはワイングラス…」
待ってくれ!
「ホントに何もなかったょ。ラギィとは、昨日の関係と何1つ変わらない!」
「おや?貴方は、パンケーキを焼いてたテリィたんね?」
「(実はミユリさんだけどw)はい、そーです。でも、タダの朝食ナンだょ!」
エアリとマリレは、揃って首を横に振る。
「違うの。パンケーキはタダの朝食じゃないわ。メッセージょ。昨夜はありがとう、素敵だったと言うメッセージだわ。キャー!」
「テリィたん。私達のボスでしょ?話してょ」
「わかった。じゃあ来いょ」
メイド2人の肩に手を回す。そして、耳元で…
「詳細とかねぇし!!!」
「テリィたんのコト、見損なったわ」
「目撃者は証言を拒否と」
何を記録してルンだ?!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
遺体に屈み込むショア。
「連続殺人鬼は、私の住所を知っている。コレは、明らかに脅迫ょ」
「ソレに、彼は新たに失望してる。せっかく警告したのに、彼女を止める能力がなかった。アンタ達が、もっと賢ければ殺すコトはなかった。私が殺したのは、アンタ達のせいだと言っているわ」
「…」
黙り込むラギィ。目の前には証拠品用のビニール袋。中には犯人の似顔絵入りの新聞。見出しは大きく"再び殺人を?"
「犯人をプロファイリングしてるだけょ。相手はイカレてる奴なの。だから、気にしないで」
「被害者は誰?」
「まだ身元不明。財布はナイし失踪届も出てナイ。今から死体を検視局に運ぶわ。銃槍は4カ所。検視局で弾丸を調べる。今までのパターンなら、何かメッセージが刻まれてるハズょ。2人も遺体と一緒に検視局へ行ってくれる?…先ずは着替えてからねw」
ブツブツつぶやくラギィ。
「私こそ、犯人にメッセージがアルのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視局は地下にアル。僕のタブレットをハッキングし今回も"リモート鑑識"で手伝ってくれる超天才ルイナ。
「Hi。パンケーキを作ってたんだって?」
「あのね。テリィたんとは何もなかったから」
「ふーん?」
まるで信じてナイ。僕が死んだ魚の目で尋ねる。
「状況はどうかな、ルイナ」
「今回も弾丸の底に文字が彫ってあった。今回は、e、m、o」
「エモ?"元カノはエモい"だったのか!」
苦笑スルD.A.首席補佐官w
「萌えでしょ?"元カノはいずれ萌える"だと思うけど」
「…被害者の身元の手がかりは?」
「ホルムアルデヒドが付着してたわ」
車の排気ガスに含まれる有害物質だw
「犯人の残留物ょ。爪の間や髪にも大量に…防腐剤を使う職業ね。あと動物の血も検出した。さて!彼女の職業は何でしょう?」
「剥製士だ!」
「剥製士ょ!」
僕とラギィは異口同音。呆れるルイナ。
「もぉ仲良しナンだから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部のウォールーム。
「剥製士?」
思い切り変な顔をするショア。勢いづくラギィ。
「防腐剤に獣の毛も検出された。他の現場で防腐剤が見つかったのは決して偶然じゃなかった」
「つまり、犯人と彼女はつながってるってコト?」
「YES。D.A.にアル剥製店は7軒で、今、ヲタッキーズが調べてるわ。同じ仕事のつながりとかより、もっと複雑なつながりだと思うの。頭脳の出番だわ」
苦笑するショア。エボリ捜査官が叫ぶ。
「3番目の被害者の身元が判明。サドラ・ケラァ。剥製店の店員でした。データベースとの照合結果、来ました」
ウォールームのモニターにサドラの画像がUPされる。
「似顔絵に似た女子とトラブルがありました。その女子は、愛犬を公園で大型犬に噛み殺されています。しかし、半額を払って死んだ犬を剥製にしたが、結局残金を支払えズ、サドラ・ケラァが完成した剥製の受け渡しを拒否すると、激怒して店を飛び出した。2日後、店に強盗が入り、愛犬の剥製と防腐剤が盗まれています」
「だから、現場に防腐剤が発見されたのね」
「強盗時に店のPCも荒らされて顧客データが消えてます。2番目の被害者、犬の散歩係ミシェに関する聞き込み情報に、顧客によると、彼女が散歩させていた大型犬ロットワイラーが暴走、別の犬を噛み殺したとの記述があります」
コレは…犬の飼主同士の殺人だったのか?
「その愛犬が犯人の犬ってコト?」
「そのようだ。悲しみに暮れた犯人は、ミシェとサドラに恨みを抱き、復讐を開始スル…」
「待って!たかが犬ょ?」
言い出しっぺのラギィも半信半疑。確かに、コレじゃ犬の鳴き声がうるさくて殺しちゃいました式の御近所系の事件だw
「いや、犬は引き金に過ぎない。きっと同時期に僕の"宇宙女刑事ギャバ子"を読んで、ギャバ子に責任を投影したのだろう(話してて自分で意味不明w)」
「無理がアルわ…」
「ラギィ。貴女って猫派?連続殺人鬼にとって、殺す理由なんて何でも良かったのょ」
珍しくヲタッキーズからマトモな質問が飛ぶ。
「でも、最初の被害者とはどう繋がってるの?」
「わかった!弁護士アレク・ピタマは、わんわん裁判で犬を裁こうとしてたんだ」
「"わんわん裁判"なるキーワードは84.32%の確率で存在しません(100%じゃナイのかw)。ただし、アレクの1月のメモに関連記述がヒット。"愛犬の訴訟についてミシェ・ルルス氏から依頼あり"。ですが、結局アレクは、このオファを受けていません」
WIBって個人の手帳までデータ化してるのか?
「十分だ!パズルは完成した」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一気に活気づくウォールーム。
「件の剥製士ペンコ・ラッドの情報は?」
「運転免許を所持。陸運局の顔画像をハッキング中」
「似顔絵と比較して」
スマートボード上をスワイプし2つの画像を並べるショア。
「ようやく見つけたわ。ペンコ・ラッド」
ボード上の全似顔絵が免許証の顔画像に置き換わる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"秋葉原マンハッタン"のガラス壁面に映る流れ逝く雲。
その谷間に黒いSUVが続々停車、女戦闘員が降り立つw
最後にスマホしながら降りてくる黒スーツのショア。
「…わかったわ。今からママは逮捕だから。夕飯までには戻るからね。ママも大好きょ。じゃあね」
スマホを切るショア。
「お子さんがいるの?」
「いるわ。ラギィ、音波銃はしまって。貴女は待機ょ」
「ココまで来て?彼女が可哀想だ」
ショアの待機指示に僕が抗議。
「ショアは正しいわ。犯人の狙いは私。私が行けばチームが危うくなる」
「貴女が逮捕したコトにスルから」
「じゃ僕も待機かw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
狭い指令車内。
「ショアが母親だなんて驚いたな。家族を持つ時間は無いかと思ってたのに(多分シングルマザーだとは思うけどw)」
「まぁ万事がラギィのWIB版だと思うけどね…え。ペンコ・ラッドからだわ…もしもし?ラギィょ」
「甘く見ないで。正体がわかった位で、私に勝ったと思っているの?」
犯人?続々アパートに突入して逝くWIBの女戦闘員達。
「(突入がバレてる?)もう終わりょペンコ。諦めて」
「いいえ。終わりなんかじゃない。コレは始まりょ」
「聞いて。貴女は囲まれてる。音波銃を下ろして」
指令車から出てターゲットの雑居ビルを見上げると、窓から音波銃を構えて外をチラ見する人影。アレがペンコなのか?
「ペンコ。手を上げて部屋を出なさい。部屋を出て」
「ソレは出来ない相談ね。私の小説では、どちらかが死ななきゃナラナイの。そして、私は死ぬ必要は無い」
「そうょペンコ。誰も死ぬ必要はナイわ」
ペンコの乾いた笑い。ドアの左右に突入チームがつく。
「いいえ。必ず誰かが死ぬのょ。死ぬのがギャバ子じゃナイのなら…」
窓辺の人影は、銃口がラッパ型に開いた音波銃を頭に当てて消える。特有の甲高い発射音。ドアの外でショアが叫ぶ。
「GO!」
ドアを蹴破って、続々と突入して逝く女戦闘員。
目の前に頭を撃ち抜いたペンコ・ラッドの死体。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
頭を撃ち抜かれたペンコの死体を見下ろす僕達。
「45口径Hz。きっと被害者達も、みんなこの音波銃で撃たれた。一応、弾道分析には出すけど」
「そして、ラギィ。君も撃たれるトコロだった」
「違うわ。貴女にはもっと壮大なプランが用意されてた」
思わせぶりなショアの言葉。機械部品が満載の机を指差す。
「携帯電話?起爆装置を作ってた?」
「盗んだホルムアルデヒドでサイクロナイト爆弾を作ってた。コレは、その図面ょ。貴女だけじゃなく、万世橋警察署も一緒に吹き飛ばそうとしてた」
「"さよなら、ギャバ子。さよなら、ギャバ子、さよならギャバ子、さよなら…"」
小声でエンドレスに続く機械音声。不気味w
「"いずれ元カノは萌える"か。詩心のある犯人だ。恐ろしく殺人的なポエムだけど。でも、自殺するタイプには見えナイけどな」
「でも、私達に正体を見破られて自殺スルしかなかったのょ。コレで裁判の手間も省けて、私の介入も終了だわ」
「とにかく、事件が解決して何よりだわ」
第4章 エピローグから幕は開いて
聖地の夜明け。摩天楼から登る太陽はオレンジ色だ。
「あれ?ミユリさん、未だ起きてた?」
「テリィ様こそ。眠れナイのですか?もう事件は解決したのでしょ?」
「でも、脱稿した時のような高揚感はゼロさ。ミユリさんはスピアの同棲話が眠れない原因かな?」
万事片付けて万世橋を出たのが朝方。何となく御帰宅したらミユリさんがカウンターに座ってて、僕を見て苦笑いスル。
「スピアが明日出て逝くと思うと…最初の頃、テリィ様の元カノ会の会長さんが御屋敷の常連にいるのは、スゴい変な感じだったけど、今は一緒にいない方が変なのです」
「うーんコレもアキバだ。近しい推しが去るのもアキバ。出禁にされて良いなら粘着スルけど、ソレは違法だからな。だが、スピアなら半年後には戻ってくるさ」
「テリィたん、いたのね?引っ越しスルから持って行くモノを選ぶの手伝って。ミユリ姉様も手を貸して!」
賑やかに僕の元カノ会長のお出ましだ…にしても"手"?
「どーしたの?テリィたん」
「2人目の被害者の打撲傷だけど…確か犯人は左手を使ってたょな。あれ?違ったかな」
「ソレ、描いた人は左利きょ。4と6に特徴がアルでしょ?」
僕の肩越しにスマホの鑑識画像を見て断言するスピア。
「でも、ペンコは右手で頭を撃ち抜いてルンだ。現場で撮られた写真にバッチリ写ってる。ほら!」
「ホントだ。この死体、右手に音波銃を持ってるわ」
「でも、窓から見えた人影は左手に音波銃を持ってた。その人影がペンコを撃ったンだ。ペンコは犯人じゃない。僕達が窓越しに見た人影に撃たれたンだ。僕達は、真犯人に遊ばれてたw」
地団駄を踏む。
「でも、テリィたん。さっきの鑑識の写真は…」
「ペンコを犯人に見せかけるためにワザと置いたんだ。事件は解決と思わせ、僕達を油断させた」
「でも、何で油断させるのでしょう」
ミユリさんが絡んで来て…自分で答えを出す。
「次のたくらみを起こすために。"元カノは萌える"でしたっけ。スピアはココにいるし…ラギィ?」
「え。タイヘン!」
「しまった!警備はいないから、ラギィは1人だ!」
ミユリさんがスマホを抜く。
「テリィ様。誰も出ません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィは、熱いシャワーを浴びている。スマホが鳴動しミユリさんのコールサインが明滅スルが、ラギィは気づかない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィ様、変身します。御一緒に!」
「ROG!スピア、万世橋に電話して緊急展開チームを向かわせろ。御屋敷を施錠して誰も入れるな。ちくしょう、ハメられた。犯人は生きてる!」
「テリィ様、参ります!」
ミユリさんのスーパーヒロインver.ムーンライトセレナーダーは、ロケットパンツ装備で空を飛ぶコトが出来るのだ。
「何で出ない?ラギィ、電話に出てくれ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シャワールームから顔をのぞかせるラギィ。濡れた髪をタオルで巻いて、スマホを取りに逝く。コールサインを確認。
「ミユリ姉様?何なの?」
「ペンコじゃなかったの!死んだペンコは犯人じゃなかった。他にいたの。犯人は生きてるわ」
「げ。マジ?」
不気味な機械音声が流れるw
「"さよなら、ギャバ子。さよなら、ギャバ子、さよならギャバ子、さよなら…"」
次の瞬間、マンションが大爆発、窓という窓から焔がドッと噴き出す。破片が飛び散り、爆炎がメラメラと萌え上がる…
おしまい(Part-2に続く)
今回は、海外ドラマによく登場する"作品どおりの殺人"をテーマに、SF作家である主人公のエージェント、連続殺人鬼の被害者である弁護士・犬の散歩係・剥製士、謎の組織の女捜査官、その相棒、スーパーヒロインの連続殺人鬼を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公の元カノの同棲騒ぎなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりインバウンドのファミリータウンと化した秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。