〝プリシラ〟の話
「まぁ、いいけどさ。話に出たから、あえて聞くけど。パメラ、恋人とか戦場で亡くしてない?」
「うん、一回、身受けしてもらう直前まで行った人がいるのよ。ご家族とも顔合わせも成功して、あとは身受け金の支払いだけというところまで来たんだけど――」
「死んじゃったんだ」
「うん、ランストラル山岳回廊撤退戦っていう事件、300人近い部隊が1人だけ残して全滅したって事件があったの。遺体の回収もままならなくて片見分けすらもらえなかったわ」
「お身請けの話は?」
「当然なかったことになったわ。死亡一時金を半分もらえたからまあ多少は良かったけど。残されたご両親は見ちゃいられないほどだったわ」
「そう――、でもそれだけの思いをしても、軍人さんとか、傭兵さんとか、相手するのやめられないんでしょ?」
「当然じゃない! だってこの国で暮らす私たちを守ってくれているのは間違いなくあの人たちなんだから。そういう人たちの〝無聊〟を慰めるのは私たちの役目だわ」
「そうね」
「それに体力すごいから、あっちの相手しててもやりがいあるのよね!」
「いい話ししてたと思ったらやっぱりそうなるか」
「あっはは! 当たり前じゃない!」
「体力あるのはいいけど、ガサツすぎる人だとガツンガッツン腰振るだけで痛くてダメなのよね」
「あ、それはあるかも。せめて濡れてから入れてよっていうのはあるよ」
「パメラ、そういう時何使うの?」
「んー、オリーブオイル使うかな。サーシャは?」
「私は海の海藻ね。乾燥させて粉にしたやつをお湯で溶くの」
「へぇ、」
「オリーブオイルは肌に合わないみたいで後から腫れてくるの。そしたら〝あの子〟が代わりになるもの調べて取り寄せてくれたのよ」
「あの子って?」
「忘れちゃった? プリシラ」
「あ? ああ! いたいた! あのすごい頭のいい子でしょ?」
「そう、女将さんに連れられてきて下働きの事務をやってた子。みんな本当重宝してたのよ」
「客に騙されて借金の保証人にされた子を借金の証文を無効化して助けたなんてこともあったわね」
「酔っ払った客をあしらって叩き出すのは大抵あの子だったわよね」
「普通できないわよ」
「それはあたしも思った。でも素性について聞くだけ野暮ってもんよ」
「そうね、ここを離れて幸せにやっていたらいいんだけど」
「大丈夫よあの子だったら」