〝軍人さん〟の話
「パメラったら、ずいぶんそっち押すのね?」
「うん。確かにガサツだしデリカシーない人も多いけど、それを差し引いても相手をしてあげる価値はある人たちよ。知ってる? 同じ上流階級でも、軍人上がりの候族の人たちって、娼婦上がりの女性を奥さんや側室に入れてる人が多いの」
「あ、言えばそれどっかで聞いたわね」
「うん、肌を重ねて情が深くなってくるとそれを大切にしてくれるのよ、あの人たちって。そしてある程度歳を重ねてくると、残りの人生を面倒見てくれるのよ」
「あ、確かに言われればこの界隈、軍人さんとかに見受けされる人って多いわね」
「でしょ? でもそれにはもう一つ理由があるんだって」
「え?」
「ほら、軍人さんにしろ、傭兵さんにしろ、体使うから体力有り余ってるでしょ? 当然性欲だって強いわけよ」
「まぁ、そうね。だからこそ私らみたいの商売の女のところでも来るわけだし」
「でしょでしょ? そういう人が男性経験の浅いお上品な女性と添い遂げてうまくいくと思う? 世継ぎを作る以外に夜の生活を求めて拒否されたなんてのもザラにあるらしいから」
「それで不倫したり、外にお妾さん囲ったりするわけか」
「それでまた一悶着」
「新聞のネタになっちゃうわよそういうの」
「よくある話だけどさ」
「離婚になって、慰謝料払うまでがワンセットだけどね」
「それでまあ、そういうのが嫌な人の場合、夜の生活に気さくに応じてくれる女の人の方が都合がいいわけよ」
「それで、この界隈の女の人を連れて行くわけか」
「そうそう。娼婦として格が上ならば礼儀作法も社交知識も身につけてるから、対外的な振る舞いをミスることもないし。第一、人あしらいにもなれてるから、外向きのお付き合いを安心して任せられるっていうのもあるらしいわよ」
「まさに願ったり叶ったりってやつね」
「そういうこと。ただ、これだけは勘弁してよったのもあるんだけどね」
「え? 例えばどんな?」
「戦場で戦死しちゃったりとかね」
「あ――」
「ごめんね新規臭い話になっちゃって」