異能力の子
6話 異能力の子
「ココにアルバイト?」
「うん、まぁね」
「行き先がボクらと同じで。バイトって君はナニをしに?」
中学生が、バイト。あの家の親戚?
茨城の子なんだよな。この子。
幹尾友紀が言うには、彼女は普通の人に見えないモノが見える異能力が、あるという。
小学生の時に近所の沼でカッパを見たと、言うとちょっとした評判になったが、子供のウソとすぐに無視されたそうだ。
その後も何回も見て、子供がさらわれるのも目撃したが。
大人たちの扱いを知りながらその話をしたが誰も信じなかったと。
そして、さらわれた子供は行方不明のままだそうだ。某国の拉致説とか出てるらしい。
五年くらい前の話だと。
ボクはすでに東京に出ていた。記憶にない事件だ。
奇妙な生物をよく見ると友人とかに話してはいた彼女のトコに現れたのが、これから行く家の主人。工城鱗二郎だ。
スポーツ新聞の記事を見たと。東京の大学から来たという彼は幹尾の話を全部信じ、礼金まで置いていったイイおじさんと記憶してたらしい。
最近、工城が突然やって来て、家にバケモノがいるかもしれないから見てくれと。
ソフィと同じような依頼だ。
依頼はソフィだけではないようだ。
「前金、けっこうくれたんだ。交通費とかも」
「そうなの。で、幽霊とか、見えるの? えーと」
「幹尾友紀ですよろしく。おねえさんは?」
「私は東京で占い師をしているソフィア佐伯というの本当はね、もっと長いんだよ」
「あ、ゴローコーは? なんて名前」
「そうか、まだ本名を。水戸光邦だ」
「ふーん。なんでゴローコーなの?」
「私も知りたいわ水戸くん」
若い子にフランス人ハーフ。わからないよな。
幹尾はボクの名に驚くコトもなく。
水戸光圀くらい茨城県民なら知っとけよ。
「『水戸黄門』って知ってる?」
ここから説明しないと。
「知らな〜い」と二人がハモった。
「昔そういう時代劇ドラマが、あって主人公が水戸光圀という名の偉い老人で」
「水戸くんと同じ名前ね」
ソフィの子供の頃に再放送してたんだけど観てないか。
っていうか、大学時代から知らないで呼んでたんだよね。
「その老人を皆が御老公呼んでたので。他にも『コーモン様』とか『ご隠居』とか言われた。姓が水戸なんで『ナットー』とかも」
「肛門様って下ネタ?」
幹尾、「水戸黄門」のタイトルも忘れてる。
「などと話していたら」
「あ、コンビニ!」
チョコバーだけでは足りない幹尾が何か食べ物買うと。
クルマをコンビニの駐車場に停めた。
オニギリやパンを買って来た幹尾がクルマに乗った。
「やけに遅かったな?」
「コンビニのおじさんに、見ない顔だって言われて。この場所に行くとスマホ見せたら。この辺にバケモノが出るから気をつけなって。なんでも4本腕のクモのバケモノだとか。子供と思っておどろかされたのかな」
「そういう田舎のおじさん居るよな」
「まさかねぇ先生の家だけじゃなく、周辺にも?」
「先生?」
「あ、大学の先生だからあたしは先生って」
しかし、4本腕のクモのバケモノって、ヒーローものじゃないんだから。怪奇クモ男か?
「アレ、ナビが」
見ると、この辺だと。しかし、外は畑と雑木林しかない。
「先生んチ、大きな屋敷って聞いたけど、ないよね」
「ナビはこの周辺って?」
まどから顔を出し見たが。
「家なんてないぞ。住所間違ってない?」
ゆっくり雑木林ぞいを走ると。
「うわぁ林の中にヘンなのが見える」
「なにが見えるんだ4本腕のクモ男か?」
「そんな、まともな姿じゃない。ブヨっとした汚れたスライムみたいのや木のようで木じゃない奴、まあ珍しくないけど、数が多い」
「見なれた奴らなのか、大丈夫か?」
「ゔん敵意はないみたい」
「ソフィは、なんか感じる?」
「いいえ、私はそういう力はないから。あら、見て、人が」
前方に歩いているのはモスグリーンのフードかぶって歩いてる女の子?
。
「子供?」
「カーキのパーカーワンピに黒のスキニーパンツ。ブーツだし。子供じゃないかなぁあの背丈」
ファッションはボクにはよくわからない。
アレはモスグリーンじやないのか。
今の子はオシャレだぞ。
が、言われてみれば、スタイルが子供の後ろ姿じゃないようだ。
背の高さは幹尾と同じくらいか、少し小さい。150代かな?
ソフィは歩いてる子の横へクルマを停め。
「すみません。この辺にクジョーさんてお宅ありません?」
フードの中の顔が見えた。きちっとそろった前髪が赤かった。
こちらを見た目は長いまつ毛に緑色の瞳。
カラコン?
「今、そこへ行く。乗せて」
つづく