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幹尾友紀

4話 幹尾友紀


 金曜日の夜仕事を終え帰宅する。

 明日は休日だ、たまった録画番組を観て過すつもりだった。


 パソコンにメールが。先輩だ。


 えっ、バイトって、刑事のボクにバイトはないでしょう。

 しかし、内容を見てヤル気が出た。


 あのバケモノを見てくれと依頼されたソフィについて行けと。そうは書いてないが、ソフィのボディガードか。

 一日と、いうか一泊、ソフィと過ごせる。

 これは、やるしかない。


 翌日、電車で約束の地茨城県某地へ。

 ローカル線の駅でソフィと待ち合わせ。


 早朝にメールがきた。

 都内からソフィとドライブ出来ると期待していたが、残念ながら目的地の最寄り駅で合うことに。

 なんだかトラブルがあったらしい。


 都内からだと時間がかかった。降りた駅は無人駅で、駅前も殺風景で駐車場があるだけだ。

 広いターミナルにはバス停とタクシー乗り場が、しかしタクシーなんて停まって居ない。

 そこ運良くへタクシーが。


 おそらく同じ電車に乗ってきたであろう女が。走ってきた。

 カートを引きずりタクシーに突進。


「乗りま〜す!」


 ボクの横を走りぬけた女は、タクシーが乗せてきた老人が降りると乗り込み。すぐに出た。

 ラッキーな客だ。

 でも、今の女、こんな田舎に似合わない派手な格好していた。

 髪は緑色で超ミニスカート。ショートブーツで脚が目立った。

 ボクの頭に「ギャル」という単語が浮かんだ。

 渋谷、原宿で見慣れた珍しくない人種だが。


「あれ〜ココ、駅前になんにもないんだ」


 改札からもう一人出てきた。女の子。

 ボクの横で駅前をながめて言った。

 ショートカットの黒髪混じりの金髪で、小学生ではないとわかる。

 彼女は横のボクを見て。


「ねえおじさん、今、タクシー来てたよね」


 おじさんって、まあ三十に近いが、一応若作りしてるし、けっこう童顔なんで私服の時に「おじさん」は、はじめてだ。


 目があった。よく見ると可愛らしい顔している。うすく化粧もしているようだ。いくつなんだこの子は。


「アレ、おじさん。あたしに見とれてんの? わかるよ。あたし、可愛いから」


 自分で言うか。


「べつに見とれては。君は、いくつ?」

「あたしの歳知りたいんだ。いくつに見える?」


 そうきたか。ここは、年下に。いや、大人に見えるとかの方がいいのか?


「う〜んそうだなぁ十九とか」

「ブ~。おしい。十三だよ」


 おしいか? 中学生か。しかしその頭、まともな中学生じゃないな。化粧もして。


「タクシーすぐ来るかな? お腹へったなぁ。駅着けばコンビニとか、あると思って昼ぬいちゃたんだよね」


 ちょと先まで行けば何かあるんじゃないのか? 


「おじさん、地元の人?」

「いやココじゃないが、この県出身だ」

「あたしも、でも県境だからこの辺知らない」


 グゥ


「あ、やだ。お腹なっちゃた」


 時計を見ると3時過ぎてる。昼抜いたなら、そりゃ減るかも。


「チョコバーでよければ、食べる?」

「ホント、食べる。あ、おじさんチョコバーであたしをくどく気かな?」

「くどく。チョコバーでナンパする奴なんて、いるのか? いらないならいいけど」

「あ、ちょうだい!」


 と、両手をだした。ボクは肩掛けバッグからチョコバーを出しあげた。


「サンキューおにいさん。イイ人だね」


 おじさんがおにいさんに変わった。わかりやすいヤツだ。

 もらうとすぐに包み紙を向きとり一気に半分までかじりついた。あっと言う間に口の周りチョコだらけ。髪は染、薄化粧でも子供だなと。

 すると半分のバーを吸うようにチョコを舐めながら。


「女にチョコバー食べさせて見てるのって、なんかHだよね」


 なんて、言いながらバーを出したり入れたりしてる。こいつ、ナニやってんだ。


「おにいさん、こういうの期待してチョコバー持ってんの?」

「んなぁわけ、あるか。ただの非常食だ」

「なるほど。非常時で、くどく時には使えるしね」

「そんなこと考えてない!」


「ありがとう。美味しかったよ。こんなに美味しいチョコバー初めて食べた」

「腹が空いてりゃなんでも美味いさ」

「お礼に、おっぱい見せてあげる」

「お礼は……いい」

「アハハ冗談だよ、本気にした? お礼にあたしの名前教えてあげる。幹尾友紀で〜す。幹は木の幹にシッポの尾ね。ユキは友だちの友に紀元前とかの紀」


 と、言って敬礼ポーズをして。


「よろしくであります!」


 ふざけてるのはわかったがボクは思わず敬礼で返した。職業病だ。


               つづく

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