工城鱗二郎
2話 工城鱗二郎
ソフィのアラビアンナイトのお姫様風はスケスケでちょっとセクハラ入ってないかと先輩に聞いたことがある。
でも、そのコスはソフィが自分で用意したものだと。よく見ると「魔法姫アラファーナ」のコスにちょと手を加えたモノだった。
アニメにうとい先輩にはわからなかった。
しかし、ソフィのカワイイおヘソが丸見えの素晴らしいコスでボクは気に入ってる。
「ソフィアさん、もう一人飛び込みのお客様が」
「ソフィちゃんのお昼休みは?」
「その後になってます。ソフィアさんがそうすると」
「ソフィちゃんが了解してるのなら、いいんだけど」
と、いうことは今日は会えない。
モニター内の客が代わった。
次は背の高そうな中年の男だ。四角い黒縁の眼鏡。顔がデカい、というか長いというか。そんなとこが目につく男だ。
先輩がモニターのボリュームを上げた。
「すみません。予約もなしに」
「かまいませんよ。で、ナニを占えば」
二階にある占いの部屋は、前は千円以上一階のショップで買い物した客に無料で占いをしてたが、好評で客が増えたので独立した占いスペースになったとか。
モニターが7つあるのは7部屋、7人の占い師が居るからで。やっぱりソフィが人気NO1だ。
「あ、占いじゃなく実はコレを見まして」
男は使い古した革のカバンから雑誌を取り出した。
アレは、先月出た女性雑誌だ、ソフィの記事が載っている。
ボクはあの雑誌を十冊買ったので、すぐにわかった。
「私はこういう雑誌は、あまり見ないのですが偶然目にしまして」
なんだかイイワケがまじい。ホントに偶然なのか?
「あなたのインタビューで、ゴースト・バスター的なこともすると」
「あ、ソレ私が面白おかしく言ったのを編集の人がゴースト・バスターなんて。私、掃除機みたいなの背負いませんよ」
「掃除機……? あ、私は実はこういうもので」
男は名刺をソフィに渡した。さすがにモニターでは内容までは見えなかったがソフィが読んだ。
「帝都芸術大学の助教授……ですか。工城、コウジョウ、リンジロウ?」
「クジョウと。工城鱗二郎です。妻が、妻が家にバケモノが出ると言い出しまして」
「幽霊じゃなくバケモノですか?」
先輩はオカルト研を作るくらいだから、けっこうなオカルトマニア。マニア以上だろう。本も出してる自費出版だけど。
毎年コミケで、その手のマニアにバカ売れしてるそうだ。だからこの話、興味があるようだ。
「バケモノ……ポケモンみたいのですか?」
ソフィはバケモノ=モンスター=ポケモンって。
ちょっと天然なトコも好きなトコだ。
「ポケモンですか……。私は見ていないのでなんとも、妻が言うには形状しがたいなんとも不気味なヤツとかで。妻はバケモノと」
「そいつを退治して欲しいと」
「あ、いや。退治するもなにも、私は見てないんです。妻の妄想だったら……」
「妄想……もしかしたらお医者さんに行ったほうが、私より」
「そうなんですが、妻は自分の頭がおかしくなったと言うのかと、怒りだしてしまうもので、出来れば来て見て欲しいのです」
「なるほど出張ですね。う〜んだと、私では、ちょっと待って下さいね」
ソフィは室内フォンで。
「オーナー」
〘聞いていたよソフィちゃん。お客様。聞こえますか?〙
「はい」
〘私オーナーの松平という者です。当店は出張サービスはやっておりませんので……〙
「なるほど。オーナーさん、コレはソフィアさんへの個人的な依頼というわけにはいきませんか? 土曜日の夜になると思いますから、ソフィアさんのその日の代金も充分お支払いしますが」
男は分厚い封筒を出した。
「とりあえず頭金を」
「私はぜんぜんOKですよオーナー」
〘わかりました彼女が良いなら。詳しい話は事務の方で。こちらにおこし下さい〙
「あ、水戸くん来てたのね」
今日は、三階への階段ですれちがっただけだった。残念だったが、それでも顔をあわせただけで嬉しかった。
つづく