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番外編①「さわやかな日曜日」~Lazing On A Sunday Afternoon~

※注意※

 改行を多用している都合、スマホでご覧のかたは文字サイズ80%以下でご覧ください。


おまけのエピソードです。

 ――民宿、昼


 ムウ 「ただいまー。今日も暑かったあ……。

     ビビットさんたち、よく日がな一日テントの下で

     平気でいられるよ……

     あれ、コールなにやってるの?」

 コール「……輪投げ」

 ムウ 「わ、輪投げ?

     なにこれ……『ウォーターゲーム』」

 コール「旅館の女将さんがね、あたしが喜ぶと思って

     古いおもちゃをいろいろ出してきてくれたんだけど……」

 ムウ 「わっ、こんなにたくさん?」

 コール「『メリケンさんなんてめったにこないから』

     なんて、はしゃいじゃってさ。

     なんでも、旧人類のころからある年代物で、

     女将さんが生まれるずっと前から

     この家にあったものらしいんだけど……。

     でも、これ……もどかしくて……い、いらいらするわ……」

 ムウ 「……なるほど、このボタンを押したらポンプが動いて、

     水の勢いで輪っかを動かしてこの棒に通すんだ。

     へえ、かわいいおもちゃだね」

 コール「見た目に騙されないでよ、こんな……ふわふわと、

     遊ぶ人間をあざ笑うかのようなおもちゃを……

     子どもにやらせるなんて……旧人類の大人は……鬼畜だわ」

 ムウ 「それ、コールが不器用なだけなんじゃ……。

     ね、ほかのおもちゃも見てみていい?」

 コール「箱に山ほど入ってるから、好きに見たらいいわ」



 ムウ 「ねね、コール。これ一緒にやろうよ。『ペイ・デイ』」

 コール「なに? すごろく?」

 ムウ 「うん。説明書を読むよ……

     『ペイ・デイは、中流サラリーマンの生活をモデルにした

      すごろくゲームです』……。


     『あなたは、月々の給料日にもらえる

      325ドルの収入をもとに生計を立てていきます。

      堅実な投資でお金を増やすもよし、

      他プレイヤーとの危険な賭けに出るもよし。

      ただし、しばしば郵便で届く、家のローン、子どもの養育費、

      クルマの維持費、その他もろもろの請求書に注意しましょう。

      世の中、なにが起こるかわかりません。

      ひょんなことで儲け話が舞い込むかと思えば、

      理不尽な出費を強いられることもあります。

      また、おいしい話にはウラがあるかも……。

      めげずに強く生きていきましょう』」


 コール「な、なんか世知辛いゲームね……

     ほんとにおもしろいんでしょうね……?」


     *


 コール「ま、また週末のダンスパーティの請求?

     あたしの家族はなにをやってんのよっ。

     ねえちょっと、増収チャレンジに失敗してから

     こっち、家計が火の車なんだけど」

 ムウ 「ふふ、そんなこの世の終わりみたいな顔しなくても……。

     じゃあわたしの番ね……

     ……あ。売買成立」

 コール「またっ? あんた、さっきの遺産相続といい

     サイコロに細工してないでしょうね?」

 ムウ 「ちょ、ちょっと……さすがにそんなことしないよ……」

 コール「ちなみに今度はなにが売れたの?」

 ムウ 「共同馬主会員券。元値の二倍」

 コール「ぐ……こんなの理不尽だわ……

     あー、もうだめ。つらすぎる。主にメンタルが。

     やめよやめ。口直しにリバーシでもやりましょ」

 ムウ 「結局、コールは借金まみれで終わっちゃったね……」

 コール「なによ、その憐れみの目は……。

     まったく、現実に身を粉にして働いて、

     こんな格差を味わっていた旧人類を思うと

     涙がちょちょぎれるわ。

     ニュートロイドが仕事してくれる時代に生まれてよかったあ」

 ムウ 「そうそう。コールもたまにはわたしに感謝してよね」

 コール「……はいはい。いつもありがとね、ニュートロイドさん」

 ムウ 「えへへ。やっぱり、誰かに感謝されるときが

     ニュートロイドとして冥利に尽きるって感じだよね」

 コール「ふっ。なかば云わせてるくせに」

 ムウ 「いいもん。そういうのも、照れ隠しだって知ってるから」

 コール「……あんたのそういうの、無敵の思考っていうのよ」



 ムウ 「ふふ。……ね、コール?」

 コール「ん?」

 ムウ 「なんでもない。呼んでみただけ」

 コール「……なんじゃそりゃ。ま、べつにいいけど」



                       【了】

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