5 正体発覚・・・でも・・・
自分の理想に忠実であるため、彼氏や彼女ができない若い人は多いと思います。
まあ、世の中、イケメンや容姿のいい女の子ばかりじゃないですからね。
中山廉です。
「ええ?どういう意味だ!」
俺は汐音さんからのメッセージを見て、ショックを受けた。
断られるかも知れないとは思ってはいたが、文面が超気になって、消化不良だ!
資格がない?
理由は言いたくない?
どういうことだ?
やっぱり彼氏がいるのか?嘘ついてたのかな?
もしかして結婚してたりして?
子供もいたりして?
それとも好きな人がいるから、街中で会うのはまずいということか?
俺はすぐにでも新しいメッセージで質問したかったが
我慢する。
そして頭を整理して2日後にまたスマホでメッセージを送った。
「やっぱり、彼氏いるんですか?
というか、まさか奥さんだったりしますか?
それとも、好きな人がいるので、会うわけにはいかないという事ですか?
諦められないので、理由を教えてください。
ごめんなさい。
教えたくないというお気持ちのようですが、すみません、教えてほしいんです。
諦めるためには、ちゃんとした理由を聞きたいんです。」
よし、これで、教えてくれるかもしれない。
返事がなければ・・・
諦めるか・・・残念だけど・・・。
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汐音です。本名は山川雅樹です。
うわっ、やっぱり、追及が来た!
来ると思ったんだよね・・・
納得いかないんだろうなあ。
どうしよう?
そうだよね。僕が彼の立場だったら、僕の返答ってよくわからないもん。
そうだなぁ・・・カミングアウトするしかないかなぁ・・・
嫌だけど・・・
せっかく女の子と思われてるのに・・・
でも、正体明かさないのも悪い・・・
うーん。
ちょっと何日か考えよう。
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そして、5日経過後、
いろいろ悩んだ挙句、僕は決心した。
やっぱり、カミングアウトをしよう!
もし、僕のことを本物の女性と思ってたら、申し訳ないもの。
早速、スマホを操作する。
「こんばんは。
悩んだのですが・・・ご質問に答えます。
言いたくなかったのですが、
私の正体は・・・実は・・・
男性なんです。
「おとこ」です。
冗談ではありません。
ホントなんです。
つまり・・・
具体的に白状すると・・・先日は女装してたということです。
私は男性なんですが、仕事が休みの日は女性の姿で過ごしているんです。
変態と思われても仕方ありません。
理由を説明すると長くなるし、理解できないと思うので、
コスプレみたいなものだと思ってくださると助かります。
で、
もし、・・・もし・・・
私のことを女性と思ってらっしゃったら、
本当にごめんなさい。」
よし、送信!
これでいいかな?
ショックを与えるかも知れないけど…
性別違和の話をしても、理解できないだろうから、説明簡略化しちゃった。
その方が諦めてくれそうだし。
問題は彼がゲイとかバイセクで男の方がいいとか言ってくるパターンもあるってことかな?
それだったら、相手しない。
僕のこと、普通の女の子として扱ってくれない人は嫌だ。
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廉です。
おお、森川さんから返事が来た!
やったー!
二日経ったから、もう来ないと思っていた。
ん、えーっと、何々?
え?嘘だろ!
なにい~っ!男だって?
そんなバカな!
あんな可愛いのに!
・・・まさか・・・
信じられない・・・
ちょっと待てよ・・・
うーん・・・
でも、本人が言ってるんだし・・・
嘘を言っているようには思えない。
となるとだ・・・
男ならば・・・これでおしまいだ。
俺は大学時代、新宿の居酒屋でバイトしてたから女装した男性を何度も見ている。
男の娘というのもよく見た。
でも、ほとんどが男と見破ることができた。
汐音さんは男に見えないから、惚れちゃった。
すごいレベルだ。
でもなぁ・・・男じゃ話にならないよ。
俺は頭が真っ白になった。
そして、また思考を開始する。
よく、考えてみたら、変だった。
今までの経験から言って、観光スポットに女性が一人で現れることはなくはないが、あんな可愛らしいファッションでは来ないよ。
それに、三脚を立てて自撮りなんて、
普通しないし。
女装の記念写真だったんだ。
普通の女性と意図が違う。
でも、可愛い過ぎる。
危うく惚れちゃうところだった!
もう、いいや。
もう、汐音さんのことは忘れよう!
俺は、もう汐音さんに連絡を取ろうと思わなくなっていた。
俺は次の日から、会社内の若い同僚女性、そして、
通勤の際に出会う若い女性をチェックするようになる。
新たな恋愛対象が欲しかった。
本物の女性と恋愛したかった。
女装男性に惚れそうになった自分の心を、
立て直すために。
心の上書きが必要だった。
キレイで、可愛い女性はいることはいる。
ざっと見たところ勤務先の仙台支社で4人ほどいる。でも、残念なことに二人は人妻だ。
大学時代の彼氏と就職して3年目で結婚しているから、まだ20代半ばなのに、人妻である。
残りの二人も彼氏付きである。
誰が見てもいい女というのはそんなもんだ。
他の女性は、はっきり言って好みでない。
太っていたり、背が高かったり低すぎたり、性格がきつかったり、ショートヘアだったり、服の好みがよくなかったり、ことごとく俺の好みから外れている。
贅沢言うなと言われそうだが、俺みたいな若い奴多いと思う。理想を追い求めて婚期を逃すのは、この飽食の時代にありがちだ。
でも、俺は、社内の女性を再度チェックしてみる。
もしかして、見落としている可愛い子がいるかもしれない。
そう思って、見直してみた。
社外の女性も、アプローチできそうな好みの子がいないか探してみた。
とにかく、彼女が欲しかったんだ。
ところが・・・残念ながら、何カ月か頑張ったが、成果は出なかった。
ちょっと妥協すれば、上手くいきそうであったが、どうしても妥協できなかった。
これは、どうしようもない、俺の本性だった。
時間は経過し、いつのまにか、冬に入ってしまう。
もう12月になってしまった。
「中山も春には転勤だな?」と先輩から声を掛けられて、はっとした。
俺、仙台にはあと少ししかいられない。
このまま、転勤してしまったら、「あの子」には会えなくなる。
男だけど、ほぼ理想的な容姿をした「あの子」に。
恋愛対象ではないと心の中で封印した彼女の姿だったけど、思い出してしまった。
俺はスマホに保存された「あの子」と・・・すなわり森川汐音さんと一緒に撮った写真を、会社の休み時間に見てみる。
「やっぱり、可愛い、汐音さん。好みだ。」
森川汐音という名前はニックネームと分かっていても、その名前は彼女の容姿にピッタリだった。
そして、おれは意識せずに「汐音さん」と呼んでいた。
とりあえず、会いたい!
そうだ、性別は関係ないから会いたいって、言おう。
友達になって欲しいって言えば、会ってくれるかも。
もう我慢できない。
俺は、スマホを操作した。
「汐音さん、ご無沙汰してます。
性別の件を教えていただいた時は混乱してしまい、どうしていいかわかりませんでした。
数ヶ月経ち、冷静になった今、やはり仲良くしていただきたいという気持ちになりました。
本当に図々しいし、自分勝手だとは思いますが、友達になっていただけませんでしょうか?
もう一度お会いしたい気持ちがあるんです。
お返事をお待ちしています。」
俺は祈るような気持ちで送信した。
自分ながら、勝手なヤツだと思いながらも。
中山君、女性じゃなくても可愛い汐音さんが気になりだしました。
汐音の方はどうなんでしょうか?それは次回以降で・・・
次回も次の週末更新予定です。