18 家族に紹介
今回と、次回で終わりです。
話は急展開します。
汐音です。
廉さんと再会して久々のドライブをしてから、もう3カ月経過しました。
毎週会ってるわけではないですが、2週間に1回は会って、ドライブしたり、映画を見たり、食事に行ったりしています。
電話もけっこうしていて、けっこうお互いのことを知るようになりました。
はっきり言って充実してるし、楽しい。
でも、・・・
8年前・・・初めてのドライブの時は、ホテルでキスされたけど・・・
今回は、手もつないでくれません。
キスなんてしてくれる雰囲気ない。
まして、セックスなんて・・・
もうできる体になってるのに・・・
当たり前ですよね。
だって、別に恋人になったわけじゃないんです。
そもそも、最初に釘を刺したのは私でした。
普通の男性にとっては結婚の対象外の存在って言っちゃったんです。
単に友だち扱いかも。
矛盾するけど、女扱いして欲しい!
性欲の対象にして欲しい!
でも、いっぱいセックスしたあと、本物の女性と結婚するって言われて絶交されたら傷つくなー。
結婚…してくれるわけ…ないよね。
普通の人だし、
家族反対するだろうし…
うーん、どうしたらいいんだろう?
でも、廉さんと、せっかく仲良くなったんだもん。
距離を取るなんて無理!
あー、悩むなあ!
ん!ドライブのお誘いがスマホに入ってきた!
あれ?特に行き先が書いてない。いつも行き先を決めてくるのに…
「どこに行くの?」
とりあえず、メッセージを送ってみる。
「秘密…」
何これ?
どこに連れて行くつもりだろ?
もしかして「ラブホ」?
ないない、それはない!
でも、なんか進展して欲しいな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中山廉です。
先ほど、汐音さんを車に乗せて、都内を走っている。
汐音さん、乗り込むと、どこ連れて行ってくれるの?と質問してきたけど、
しばらく走ればわかるよと答えた数分後、寝息を立てて寝てしまった。
どうも昨日遅くまで仕事があったようだ。
頑張って起きて、支度して、待ち合わせ場所に来てくれたけど、車に乗ると同時に睡魔にやられちゃったみたいだ。
まあ、その方が都合がよい。
どこに行くか、キョロキョロされると、ちょっとこっちもドキドキしてしまう。
さて、もうすぐ目的地だ。
よし、連絡した時間にピッタリつきそうだ。
そろそろ、起こすか?
「汐音さん、到着だ。」
「うーん、よく寝た。ここ、どこ?」
「町田だよ。もうすぐ俺の実家だ。降りる準備をしてくれ。」
「えっ、嘘!ちょっと、待って。
そんなの聴いてないよ!
ええ、どうしよう?そんな・・・・
準備できてないよ。
私、寝ぼけてるし・・・
メイク大丈夫かな?
服装も、心配!
ああ、どうしよう・・・
ちょっと、ちょっと、ひどいよ。」
彼女はものすごく慌てていた。
髪の毛をブラシで整えたり、鏡でメイクを確認してたりして、大忙しだ。
「もうすぐ着くの?」
「ああ、あと少しだ。」
「ひどいなー。黙って連れてくるなんて。
私、心の準備できてないよ。
私のこと、何て紹介するの?」
「お、もう着くぞ。みんな家の前に出ている。4人ともいるぞ。
俺の両親と、妹夫婦だ。」
「え、やだ!出迎えているの?
もう、いやっ!!」
俺は、住宅地の一角に車を止めた。
「汐音さん、到着だ。心配しなくて大丈夫。みんな、待ってるから、外に出よう。」
「もう逃げられないね。観念しました。」
汐音さんは、絶望的な顔をする。
正直言って面白い。
二人して、車から出る。
俺が、声をかける。
「汐音さんを連れてきたよ。家の前に出てるなんて、大げさだよ。」
「山川汐音です。いつも廉さんにはお世話になっています。」緊張した面持ちで、ぺこりと深く頭を下げる汐音さん。事情をわかっていないから、とにかく挨拶しようという感じだ。
「写真より美人ねー!すごくきれい!汐音さん、廉の母です。ようこそ。今日はゆっくりしていってくださいね。」
「おお、確かに。これだけ美人だと、惚れちゃうな!俺の息子だけはある。
汐音さん、廉の父親です。よろしくお願いします。」
「うわーっ、美人だー!!すごい!お兄ちゃん、やったね!
汐音さん、よろしく、妹の涼佳です。よろしくお願いします。今日は旦那と一緒に、来ました。家近くなんですよ。」
「涼佳の夫です。確かに美人さんですねー。お義兄さん、惚れちゃうのわかります。」
「あ、みなさん、私の事、聴いているんですね。どこまで・・・ご存知なのかな?
それから、そんな褒めないでください。
なんか、恥ずかしくなっちゃいます。
あの・・・とにかくよろしくお願いいたします。」
再度ふかく頭を下げる、汐音さん。
汐音さんは状況がつかめず、混乱していたが、歓迎されていることは感じとったようだ。
「まあ、中に入ってください。ゆっくりお話をしましょう。」
俺の父親が、声をかけて、家の中にみんなで入ることにする。
道端で、こんな人数で話してたら、目立ってしまう。
それに、お袋と妹が料理を作って準備してたはずだし、早く入らないと。
「いったいどうなってるの?」汐音さんが、俺の耳に小さい声で質問をしてきた。
「俺の家族に紹介したいと思っただけだよ。」
「うーん、説明になっていないよ。」
困った顔をしている汐音さんだったが、家の中に入らないわけには行かず、
「お邪魔します。」と入ってくれた。
よし、これからが大事だ。
リビングの大きなテーブルに全員腰かけた。
そして、すでに、料理はテーブルの上にのっていた。
俺と汐音さんは並んで座った。
俺は口を開く、「改めて紹介します。こちらが山川汐音さんです。僕と同い年で、会社員です。
今、一番大切に思っている女性です。これからは、本格的に交際をしようと思っているので、連れてきました。」
汐音さんが驚いて声を出す。
「えっ?嘘でしょ?
ええ〜!?
ちょっと待って・・・
そうだ!ご家族の方は、私の事知ってるの?」
かなり焦った声だ。
「もちろん、知ってますよ。汐音さん。元々の性別について、廉は家族全員に話しているから。
あわてないで大丈夫。みんな、あなたを受け入れているよ。」
「そうよ。廉は、汐音さんのことすごく大事にしているって、家族に話したの。
だから、家族全員、応援してる。
それにしても、来てくれてよかった。
ホントに素敵な方ね。」
「私、お姉さん欲しかったから、ぜひ、汐音さんにはお義姉さんになってほしいな。
今日、旦那さんの実家に預けてきたけど、うちの二人の子供も汐音さんみたいなキレイな女の人大好きだと思う。」
「そうなんだよな。ウチの子供、美人が大好きだからなー。」
「えっ?その、私、まだ、廉さんと友達関係なんですけど・・・
さっき、本格的に交際したいって言われて、かなり動揺しています。
とても信じられません。
ドッキリかと思います。
その・・・いいんですか?
その、私みたいな人間が、廉さんとお付き合いしても・・・」
「ふふふ、心配性ね。全然、オッケーよ。
ウチの家族は、人間の多様性については十分承知しているから。
恋愛や結婚は相性だし、本人が愛し合っていればいいのよ。
それとも、うちの廉じゃ不足?」
「いや、私にはもったいないくらいです。その・・・お付き合いさせていただけるなら、その・・・
嬉しいです。」
「じゃあ、問題ないね。廉と真面目に付き合ってください。結婚を前提にね。な、廉、そうだろう?」
「わっ、おやじ!俺のセリフを言っちゃったな。困ったなー。」
「お、言い過ぎたか?わりいわりい!」
汐音さんが、笑いながら、俺の顔を見た。
そして、泣きそうな顔になる。
「もう、こんなサプライズ、卑怯だよ。これじゃ断れないじゃない。
こんなに暖かく迎えてくれるなんて・・・
私、私・・・すごい幸せ。」
汐音さんの目から涙がボロボロ流れてきた。
「あらあら、メイクが落ちちゃうわよ。
このタオルを使って。汐音さん。」
「ありがとうございます。
もったいないお話です。
よろしければ・・・
私なんかでよければ・・・
・・・廉さんとお付き合いさせてください。」
俺の結婚を前提にした交際申込計画は成功だった。
かなり驚かせちゃったけど。
まあ、ご都合主義だし、みんないい人過ぎです。
自分が好きなように書く素人小説なので、こうなりますね。
でも、LGBTが増えていくと、こういうお話が出てきますね。荒唐無稽ではないのかも。




