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17 中山君、家族に説明

今回は二人の関係が進展するお話があります。

中山廉です。


先週、偶然に再開した汐音さんと、1週間ぶりに会っている。

今度は約束して、おしゃれなレストランでの会食だ。

シャンパンで乾杯したあと、彼女の服装とメイクを観察する。


おお、これだよ、これっ。

俺が好きな可愛らしい女性ファッション。

髪の毛もロングの毛を巻いて、色っぽい。

俺、こういう女の子が好みだったんだ。思い出したよ。

それから、あの時と同じコロンの香りだ。

おれ、この匂い好きだ。


「何か、ジロジロ見られている気がします。

私、変ですか?

若作りし過ぎてます?」


「いや、全然変じゃないよ。

すげー、可愛いなって思って。

それから、同じ年だってはっきりしたんだから、敬語使わなくてもいいよ。

それから、俺のことは廉と呼んでくれ。俺が汐音さんって呼んでるんだから。」


実は、スマホによる会話で、生年月日を教え合ってしまった。

俺が、1カ月だけ早く生まれているだけで、全く同い年だった。


「えっ?そうですか?

では、なるべくそうするようにします。

すぐには無理かな?

あと、可愛いって言われると、お世辞でも嬉しいですね。」


顔を赤らめて、もじもじする姿も可愛い。


その後は、食事をしながら、ワインを飲みながら、お互いの個人情報を提供し合う。住所、実家の住所、家族構成、学歴、友人関係など。


汐音さんは、戸籍謄本で性別と名前が変わった記録まで見せてくれた。俺に見せたかったようだ。


「廉さんは、妹さんがいるんですね。

お兄ちゃん感あります。

妹さんのお子さん、3人もいるんですか?」


「そうなんだ、毎年のように生んだからね。実家に集まったときは大騒ぎだよ。

汐音さんは、お兄さんがいるんだね。やっぱ子供二人いるんだ。その、子供たちは汐音さんのことはどう思ってるのかな?」


「ふつうに、おばさんだと思ってますよ。だって、上の子が物心ついた時は、私、女性化してましたもん。

そのうちバレるでしょうけど、もう時代的には騒がれることはないと思います。

信じられないくらい、世の中が変わってきてます。

ウチの両親も、兄、兄嫁も、私の事、普通に女性として扱ってくれるんですよ。

母なんか、娘ができてうれしいって言ってます。」


「家族とうまく行ってるっていうのはいいね。昔は大変だったみたいだからね。」


「そうですね。LGBTに対しての知識が普及しましたから。」


「あ、LGBT関係のことで失礼なこと言ったときは、指摘してくれ。

油断すると、言っちゃうかもしれないから。」


「わかりました。その時は、きちんと言わせてもらいます。

でも、私の正体を知っている男性と話ができるって、すごく楽です。」


「そうか、それはよかった。」


「たとえば・・・

私のことを生まれつきの女性だと思っている男性、しかも私と付き合いたいって思っていそうな人とこんな風に会食してたりすると、すごく罪の意識でいっぱいになっちゃいます。」


「何となくわかるよ。秘密をもったまま、男女の付き合いをするって、ちょっと苦しいよな。」


「はい・・・」


汐音さんは、ちょっと黙ってしまった。

過去のことを思い出して、涙が出そうになっている。

辛いことがあったんだろう。


「よし、LGBTの話は、ここまで。別の話をしよう。

実はさ、汐音さんと、またドライブ行きたいなって思って。7年ぶりに!

汐音さんの写真撮りたいよ。

東京勤務になった時に、車は手放しちゃったけど、レンタカー借りればいいし。」


「わーっ、私、しばらくドライブしてない。

写真も撮ってない!

可愛い服で撮りたい!

うん、行きたい!

景色のいいところに連れて行ってください。」


「了解。どこに行くか、相談しよう。」


「はいっ!楽しみです。」


俺たちは、7年前のドライブを思い出して、ワクワクしながら、計画を立てた。

まずは、東京近郊をドライブしようということになり、横浜、鎌倉、江の島を走ろうということになった。

過去には、2泊して、キスをした仲でもある。

楽しそうな顔をする彼女の顔を見ると、俺は、この子とずっと一緒にいたいと思い始めていた。

そして、あることを考えていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



汐音さんと久々のドライブをした日から、3カ月が経過した。

楽しく過ごしている。

でも・・・そろそろ次の展開について考えなければならない。


そして、悩みを打開するために、俺は町田の実家に帰ってきた。


家では、両親と妹夫婦が待っていた。

妹夫婦の子どもたちはダンナさんの実家(俺の実家に近い)に預かってもらってる。


「何、大事な話って?」

「結婚の話か?」

全員揃ったところで、まず両親が訝しげな顔で質問してきた。

「お兄ちゃん、ついに?」


「うーん、結婚というか、相手とはまだ友達付き合いしかしていない。

でも結婚を前提にした交際を申し込もうと思っているんだ。

それで話さないといけないことがあって。


ちょっと、言いにくいんだけど・・・

実は・・・

常識的ではない相手なんだ。」


「まさか、ヤクザの娘とかか?」と父。


「もしかして、余命数ヶ月とか?」と母。


「外人さんなの?」と妹。


「もしかして、30歳くらい年上とかですか?」と妹の夫。


すごい、みんな想像力たくましいよ。みんな、事前相談必要な感じのすごい例を想像してくれた。

これで話しやすくなる。



「みんな、ハズレ!

でも、抵抗を感じる話という点では似ているかも。

常識的な人じゃないんだ。

まずは、写真見てくれ。」


俺は、先日、食事をする前に撮らせてもらった写真をスマホで、見せた。


「まあ、可愛いらしいじゃない。廉より若そうね。」

「おお、可愛い子だな。いいじゃないか。問題あるのか?」

「うん、可愛いし、キレイ!メイクも上手。

スタイル良さそう!」

「タレントみたいですね。テレビに出て女優さんみたいです。」


「うーん、褒めてもらって嬉しいけど、この人には秘密がある。

なぜ家族に事前に相談したくなったか、正直に言う。

この子、山川汐音さんは、普通の女性に見えるし、

戸籍上も女性だけど、実は・・・

元男性・・・なんだ・・・」



「本当か?うわ、それは想定外だった。

こんなに綺麗な女性が・・・信じられないな。」


「ホント?ちょっと驚いた。でも、キレイね〜。

戸籍が女性ってことは・・・手術してるの?」


「これだけキレイだと、もう女性としか言えないよ。

すごい人と出会ったのね。」


「信じられない!どうやって知り合ったんですか?」



「じゃ、説明するよ。

彼女は別にニューハーフとかを売り物にする水商売関係の人じゃない。

ごく普通の会社員。

年齢は俺と同い年。

大学を出て普通に就職してる。

俺と同じようなサラリーマンとしてスタートしたんだ。

でも、性別違和で悩んで・・・

医師の診断を基に、ホルモン治療と手術で女性になった。

俺は、彼女が女性化を始める頃の7年ほど前に出会った。」


そのあと、俺は家族から質問攻めに合う。

一つ一つ誤解のないように丁寧に説明した。


「そうか、普通の人なんだなぁ。

学歴は一流だし、勤務先は大企業で、すごいと思う。

性別を変えて、同じ会社に勤務を続けるというのは今時の感覚なんだろうな。

企業側も進歩しているんだ。

そっか・・・

俺は廉の好きなようにすればいいと思う。

戸籍も女性だし、普通に結婚を前提に付き合えばいいじゃないか。」


「私も同じ意見。

今時、こういうことはありそうね。

ちょっと驚いたけど、良さそうな人じゃない。

女性の私から見ても素敵なお嬢さん。

うん、すごく可愛い。

早く会ってみたい!

早く連れて来なさい。」


「うん、ちゃんとした人だと思うし、お兄ちゃんがいいと思ったんだから絶対いい人だと思う。お兄ちゃん、昔から女の子の性格にはうるさかったもん。

面食いでもあったけど。」


「お義兄さん、素敵な人じゃないですか?

育った家庭はしっかりしてそうだし、感じもよさそう。

この人を逃すわけにはいかないと思います。」


何と、反対ゼロだ!

ちょっと、びっくり。

でも、彼女の経歴をきちんと話したし、写真も見せたし、安心したのかも。



「うん、これで覚悟ができた。みんな、ありがとう!

よし、今度、家に連れてくる。みんなの前で、交際申し込むよ。」


「そりゃ、面白い。ワクワクするな。」

「そうね、ドキドキしちゃう。いいんじゃない?」

「お兄ちゃん、すごい覚悟だね。断られたらどうするの?」

「ぜひ、立ち会わせてください。」


「断られたら、その時考える。みんな、よろしく。」

都合よく話が展開しました。

まあ、LGBTについての社会の受け入れ態勢が決まって来れば、色んな家庭でも受け入れてくるでしょう。そんな話を期待した感じですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] トントン拍子に事が進んでますね! 家族にも受け入れてもらえて、あとは汐音さんがOKしてくれれば、お幸せに…… となりそうですね!
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