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16 中山君、事実を知る

今回は中山君が、汐音の正体を知るってお話です。そのうえで、どうするのでしょうか?

中山廉です。


何と、汐音さんに似ていると思って声をかけた女性は、本物の汐音さんだった。

もしかして・・・という気持ちはあったが、まさかの事実だ。


しかも、戸籍を女性に変えていると言われてしまった。

驚いた!


つまり・・・性転換手術をして、身体を女性化させたということだよな?

そうじゃないと、戸籍の性別を変更できないはず・・・。


たぶん喉仏も切除したんだろう。はっきりなくなっているよ。

やっぱり、本物の女性になりたかったんだろうな。


そういえば・・・、声も変わっているような気がする。

前と違って、ナチュラルな感じ?


今は普通の女性として働いているのかな?

勤務先は変えたのかな?

結婚したのかな?戸籍を変えればできるし・・・。

未婚でも、これだけ綺麗なら・・・彼氏がいるかも。



俺は、汐音さんが連れて来てくれたミックス・バーで、彼女の横に座っている。

ビールを飲みながら、彼女が口を開くのを待った。


そして、彼女が切り出した。


「ええっと・・・、何から話そうかな?

そうだ!中山さんに、基本的なことを聴いておきます。

やっぱり、東京本社に勤務しているんですか?

自宅は東京?それとも千葉とか埼玉とか、神奈川?」


「俺は東京本社に勤務しているよ。

仙台で3年勤務したあと、名古屋に転勤して、そのあと大阪に転勤、31才で、東京に戻ってきた。

自宅は会社にマンション借りてもらって、今、荻窪に住んでる。

いつも、中央線で帰るんだけど、気まぐれに地下鉄で帰ったら、君を見かけて、そのあと追いかけちゃったよ。

確かめずにいられなかったんだ。

恥ずかしい話だけど。」


「びっくり!荻窪だったんですね!

私、方南町のマンションに住んでます。

やっぱり会社が借り上げてくれてるんです。

けっこう近いなぁ。

それにしても、追いかけてきたんですか?

変な人じゃなくてよかった。

ええっと・・・

私は、仙台に3年勤務した後、ずっと本社。

ちなみに、仙台にいた時に人事部にLGBTであることを申告して、東京勤務開始から女性として仕事してます。」


「そうだったのか?趣味で女装してた訳じゃないんだ。

LGBTだったんだね。

本格的に女性になる人だとは全然思ってなかった。」


「その辺、私、中山さんにきちんと話さなかったから・・・

正直言うと、ちょっと面倒だったかな・・・

説明大変だから・・・」


「そうだね。簡単に人に話す内容でもないね。

うんと、その・・・聴きにくいけど、戸籍はいつ変えたの?」


「転勤した年の夏に手術して、

そのあと家庭裁判所に性別変更と名前の変更を申請して、

次の年の初めには許可されました。

汐音が本名になったんですよ。」


「そうか、いろいろ聴いてごめん。

大変だったろうね。

それで、これも聴きにくいんだけど・・・

結婚してるの?」


「えっと・・・

独身です。」


「結婚歴は?」


「ありません。結婚したことありません。

中山さんはどうなんですか?

子供とかいたりして・・・」


「ははは、俺も独身だよ。

結婚歴もなし。したがって子供もなし。

ついでに彼女もいない。結婚予定もない。

ちょっと情けないけど。」


「そうなんですか?

私も同じです。

彼氏いないし・・・

結婚予定なんてありません。

子供作れない身体だもん・・・」


「そっか・・・確かに、性転換して女性になった人って、その辺が課題だよね。

でも、子供いらないから、結婚して欲しいっていう人もいるんじゃない?」


「そうですね。いないこともないです。

ええっと・・・

中山さん、トラニーチェイサーって知ってますか?

トランスジェンダーに性欲や興味を強く持つ人たちのことです。

実はネットで知り合った男性でトラニーチェイサーの方がいて、元男性ってことに興奮するから結婚してくれって言われたことあります。

それって、どう思います?」


「そりゃ、ちょっと引くかも。

つまり、汐音さんを元男性だから気に入るってことだよね。

普通の女性としては見てくれてないってことかな?

俺が汐音さんの立場だったら、そんなこと言われたら嫌だな。」


「その通りです。

まあ、確かに普通の女性ではないので、ぜいたくは言えません。

普通の男性は子供欲しがるし、親や兄弟の関係もあるから、私のようなタイプは対象外になって当然。トラニーチェイサーはありがたい存在なのかもしれないけど、何となく嫌。」


「そうだね・・・。」

俺は予防線を張られた気がした。

警戒されてる。

俺もトラニーチェイサー的な人物と疑われているかも。


俺の汐音さんに対する感情を表現するのは難しい。

だって、男性と認識した上での、恋愛に似た感情だ。

可愛い、素敵だ、仲良くなりたい・・・的な気持ちはあったけど・・・

どう表現していいかわからないし、言葉にはできない。

俺はゲイではないんだ。

敢えて言うなら、汐音さんを本物の女性とみなした疑似恋愛感情かな?

本物の女性かもしれないと思い込むことによる錯覚的なもの?

決して、トラニーチェイサーではない。


今回、汐音さんの正体を今知って、動揺している。どうしよう?すぐには判断できない。


とは言っても、何かコメントというか、対応しないといけないな。

話題を変えて、取り敢えず、つなごう!


「あのさ、久々に会えたんだから、今日だけなんて、もったいない。

時々飲みに行かないか?

食事でもいいけど…

社会人同期で、お互いに難しい仕事を任せられる時期だ。ストレス発散のために、一緒に飲んだり食べたりて、おしゃべりしないか?」



「そうですね・・・いいかも・・・

美味しいもの食べに行くなら、お付き合いしてもいいかな?

私、食いしん坊だから…」


やった!それなら、聴かなきゃ。



「あのさ、・・・電話番号とかSNSの友だちとか、いいかな?」


俺は恐る恐る尋ねる。警戒されてるかもしれない・・・。


「いいですよ。

仙台でお会いした時は・・・私、男性だったから・・・

フリーメールしか教えなかったんですよね。

うん、もう、隠す必要もないし、オッケーです。

それから、私の本名は山川汐音です。よろしく。」

そう答える彼女は最高の笑顔を見せた。


俺はドキドキしてしまった。

警戒は解けている。

とりあえず、俺と遊び友達にはなってくれるみたいだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




汐音です。

家に帰って来てます。

1時間ほど飲んで、ミックスバーを後にしました。

中山さんに誘われて、締めのラーメン食べて、バイバイしてきました。

また来週の週末に会う約束しちゃった。


中山さんとの再会には驚いたなー。

最初、心ない一言にムッと来たけど、話せばやっぱりいい人です。

そうかー、独身で彼女いないんだ。

ふふふ、なんか嬉しい。

いい年して、恋人がいないなんて、私と同じじゃない?


ノンケの人だから、期待しちゃいけないけど、

もしかして彼女になれるかもなんて思っちゃう。

でも、親御さんの気持ちを考えると、期待しちゃだめだよね。


一応、釘を刺す感じで、「普通の男性は、子供欲しがるし、親や兄弟の関係もあるから、私のようなタイプは対象外」って言っちゃった。


それでも、仲良くしてくれそう。


その後の展開とか考えないで、飲み友達にでもなっちゃおうかな?

今時は男女の親友もありだしね。

ん?私は女性ってことでいいのかな?

うん、いいんだ。戸籍変えたし。


何か嬉しくて、興奮して寝れないかも・・・。




そして、1週間後、中山さんと会う日がやってきます。


金曜日の朝、私は、後輩の明里あかりちゃんに、声をかけられた。

「山川さん、どうしちゃったんですか?まるでデートするみたい。可愛いコーデ!」


「いや、たまには、気分を変えようと思って。

友達と会うし。」


「ええ?男の人ですかあ?

怪しい~。」


「違う違う、女の子。」


「本当かなあ~?」


「明里ちゃん、頼んでいた仕事やったの?」


「あ、やばい。まだ終わってない。すぐやります。」


私は、久々に、可愛らしいスカートを履いて女の子らしいコーデだった。

明里ちゃんに突っ込まれて当然のファッション。

他の同僚も、何となく、驚いたアクションをしている。

クールな仕事人間に陥っていた私は、明らかにイメチェンをしていた。


そう、中山さんに初めて会ったときの印象に近づけたのだった。

ちょっと30代にしては可愛すぎるファッションとは思ったけど、いいよね?

だって・・・久々のデートだもん。


トラニーチェイサーって用語がでてきましたね。ニューハーフ好きの男性とかいるんですねー。よく聴くのが、「ついている女性がいい」なんていうセリフ。いろんな性指向の人がいるものです。もちろん、性転換手術したMtFがいいと言う人もいますねー。

さてさて、あと3話で終了です。できれば、来週も更新したいと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 中山君も汐音さんもお互い良い感じですね! 二人とも何だかウキウキが止まらないようで一番楽しい時期かもしれませんね!
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