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15 再会は突然に・・・

二人の再会は突然発生します。

まあ、運命の糸のせいでしょう。

汐音です。


中山さんの勤務先の本社が入っているビルの前には仕事が終わったあと、何回か行ってしまいました。

会えるかもしれないと思って・・・。

未練たっぷりで恥ずかしい。


でも、大手町の巨大な高層オフィスです。5時過ぎには、何百人と言う人が次から次へとビルから出てくるので、中山さんらしき人を探すというのは至難の業。


そして、中山さんがビルの中で勤務していたとしてもです。

何時に仕事が終わるかわからないから、無駄足になる可能性が大。


結局、中山さんらしき人を見つけることはできませんでした。


1カ月もたつと私は、

「もういいや、東京にいたとしても、こんな人いるんだから、会うなんて難しいよ。」と思い始めます。

もう、半分、あきらめの境地です。


だいたい、会ってどうするんだろう?


「お久しぶりです。性転換して、女性になりました。よろしくお願いします。」とでも挨拶するのでしょうか?そんなことしても意味ないような気がします。

もし、結婚して、妻子がいるのならば、いい迷惑かもしれません。

それに、私、もう33才です。

ばかなことやめよう。

私は、会いたいと思ったことを反省します。


そして、それから1カ月くらいたち、中山さんのことを忘れた頃でした。


私は、いつもの通り、東京駅から帰宅ルートの地下鉄丸の内線に乗り込みます。会社が借り上げしてくれている賃貸マンションが方南町にあるんです。


乗車して数分たつと、近くにいた社会人カップルがいちゃいちゃしてました。

(このー、見せつけてくれるじゃないか?どうせ、私はおひとり様だよ。ふん!)

そんなブラックな独り言を頭の中でつぶやきながら、吊革につかまります。


彼氏・・・ほしいな・・・

心の奥から、突然声が出てきました。

自分でも驚きます。

だめだめっ、しっかりしないと。

変な男につかまったらどうする?

私は、弱い自分を戒めます。

でも、イチャイチャカップルが気になってしかたありませんでした。


そうだ、イライラするから新宿で降りて外食しよう!

明日は土曜日で休みだし、女子のお一人さまが行けるオシャレなお店に飲みに行こうかな?

私は新宿で降りることにします。そして、スマホで行く店を探し始めました。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


中山廉です。


今日は仕事が早く終わり、ふと思いついて、地下鉄丸の内線に乗った。

俺が会社に借りてもらっているマンションは荻窪にある。

ふだんはJR中央線を使っているのだが、今日は気まぐれで、地下鉄丸の内線に乗ってしまった。


あ、いけね。

俺が乗車したのは、方南町行きだ。

いいや、途中で降りて、乗り換えよう!


それにしても、普段乗らない電車に乗るというのは新鮮だ。

電車の中の雰囲気が違う。

俺は何となく、きょろきょろ見回してしまった。


そして、数秒後、(ええっ?)俺は、心の中で、大きな声を出す。

何と、1カ月くらい前に見かけた汐音さんに似た女性がちょっと離れた場所で吊革につかまっている!


1カ月前は6月の始めだったから、ジャケットを羽織っていたけど、暑い今は、涼しそうな白の半そでのプルオーバータイプのカットソーを着ていた。

社会人仕様のちょっとおしゃれなやつだ。

ボトムはビジネスパンツで、前に見かけた時のように颯爽としていた。

髪はかなり長いロングヘアをポニーテールにしていた。春先は下ろしていたから、角度によって顔が隠れたが、今日ははっきり見える。


うーん、喉仏がないぞ。やっぱり、汐音さんじゃないな。

俺、汐音さんに喉仏があったのをはっきり覚えている。汐音さんが本物の女性ではない証だ。


それに、ポニーテールということは地毛だ。

本物の女性ではない汐音さんが、髪の毛をあんなロングにできるはずがない。


でも、よく似ているなー。

そして、好みだ。


スタイルもいいぞ!

おっぱいも大きい!


よし、尾行してみるか?

汐音さん似の本物の女性に声をかけて、お近づきになろうかな?


でもなー、ストーカーじゃないんだから、やめるか?


とはいっても、ここを逃したら二度と会えないかもしれない。

思い切って、声をかけよう!

もし、反応があって、怪訝な顔をされたら、

知り合いに似てるので、もしかしてと思って声をかけたとか言えばいい。

うまくいけば、別人でも本物の女性なんだから、仲良くなりたい。

まあ、性格とか全く不明だし、既婚独身も不明だけどね・・・

でも、このままやりすごしたくない。

とりあえず、「汐音さん!」って声をかけるかな?


お、新宿で下車したぞ?まさか、新宿に家があるとは思えないから乗り換えか?それとも、どこかに行くのか?


俺は、汐音さんに似ている女性を追っかけて、降りる。


時間が時間だから、人混みがすごい。

ここでは、声がかけにくいな。


改札口を出て、地下通路を進む彼女。


俺は、人がまばらになってくるタイミングを見計らった。


よし、ここだ。今がチャンス。もうちょっと行くとまた人混みになる。


「汐音さん!」

ちょっと離れて、声を張りあげて、よく聞こえるように、声をかけた。

別人だったら反応しない距離だ。

結局、安全を考えてしまった。


でも・・・


・・・なんと、彼女が足を止めた!まさか!!

汐音さんのはずはないのに!

もしかして、偶然、似た名前だったりして!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



汐音です。

新宿で降りて、スマホで見つけたお店に向かって歩いていきます。


やっているといいなー。

オシャレなカフェ・バーで、女性向けで、おひとり様もオッケーって書いてあった。

うーん、楽しみ。


ちょっと駅から歩くけど、明日休みだし、問題ない。


ワクワクしながら、歩いていると、突然後ろから呼びかけられた。


「汐音さん!」


えっ、誰?こんなところで!

しかも男の人。

会社関係の人だったら、苗字で呼ぶはず。変だ。


ん?待てよ、この声、記憶がある。

誰だっただろう?


私は、色々考えながら、恐る恐る振り返る。


そこには、


懐かしい人がいた。


「ええっ、嘘!

信じられないっ!


中山さ・・・ん?」



「あ・・・汐音さん?・・・なんだね?

やっぱり!


普通の女の人にしか見えないけど。」



う!だめだ、こいつ!

私は、彼の一言で冷静になります。

看過できない!


私の性別のことを地下街で他人に聞かれたくはありません。すでに何が起こったんだろう?と遠目でジロジロ見ている人が数人います。


「ちょっと、中山さん、私についてきて!」


「え? 

うん、わかった。」


私はスタスタと歩き、地下街で人がいないポイントを見つけます。ここなら大丈夫。

立ち止まり、振り返った私は、懐かしい人につっけんどんに物を申します。


「お久しぶりです。中山さん!

あのー、言葉に気を付けてください。

普通の女の人にしか見えないなんて言葉聴いたら、周りの人が変に思うでしょう。

・・・私、今は戸籍上、女性ですので、よろしくお願いします。

人がいる場所で『普通に女の人に見える』なんて言われると傷つきます。」


私はちょっときつめに強い調子でまくしたて、自分の気持ちをストレートに伝えました。

会えて嬉しいけど、言われたくないセリフについてはカチンと来ます。


中山さんは目を白黒させます。一瞬、言っている意味が分からなかったようですが、

何とか理解していきます。


「え?

戸籍が女性?

・・・・・・

そ、そうなの?


あ!そういうことか・・・


う、そうだね・・・人が往来する場所で、言うべきセリフじゃなかった・・・


ごめん、気配りが全然なかった!

この通りです。」


中山さんは、自分の失敗に気づいて、頭を深く下げてくれます。



「・・・わかっていただければいいです。

戸籍を変えた私だけでなく、戸籍を変えていない女装男性にも言うべきことばじゃないので、気をつけてくださいね。

今の時代、ことばは難しんですよ。」


私は、周囲を見回して人がいないことを再確認しながらも、さらに小さな声で、伝えます。

人がいなくても用心するのが私です。

そして、次に普通の大きさの声で、呼びかけます。


「・・・ところで、中山さん。

時間ありますか?

えっと・・・食事はどうするんですか?」


「うわ、面目ない。確かに変な発言しちゃったな。改めて、反省する。

時間はあるよ。食事はしてないし予定も決まってない。」



「じゃ、付き合ってください。

いろいろ説明します。

ディープなところに行きましょう。

そこでなら気兼ねなく話せます。」


私は計画を変更しました。女性向けのオシャレな店はやめて、新宿の奥にあるLGBT系の店を目指すことにします。年に何回か顔を出すお店があるんです。


「う、うん、わかった。」

中山さん、オッケーしてくれました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



中山廉です。

汐音さんにまさか会えるとは!

しかも、性転換して、戸籍を変更しているとは!

驚いた!

まさかの展開だ。


そこから15分ほど歩いて連れてこられた店は、カウンター主体のバー。ちょっと違和感があったのは、ボーイッシュな女性と女装した男性がカウンターにいたことだった。


「ここはミックス・バー。LGBTが集う店なんです。

私の身の上話を話すならここが最適だと思ったんです。」


「なるほど、確かに、そんな雰囲気あるね。

こういうお店、初めてだよ。よく、来るの?」


「1年に2、3回来ます。ここでは、普通の女性のふりをするけど、

分かる人にはわかっちゃう。

でも、そんなところがくつろげるの。私みたいな人間には。」


そうか・・・ミックスバーなんてところがあるんだ。

今や、LGBTQと呼ばれる人、多いもんなー。

そういう人が集う場所が新宿にあって当然だ。

それにしても、汐音さん、俺と会わなくなってから、どんな人生を歩いてきたんだろう。

性転換までしちゃうなんて、いったいどういう事だろう。

いろいろ聴いてみたいことが山積みだ。

性転換までしたのなら・・・彼氏いるんだろうなあ。

美人だよ。やっぱり。

戸籍が女性なら、男がほおっておかない容姿だ。


俺は、ワクワクした気持ちと、不安な気持ちが入り混じりながら、彼女との会話を進めることにした。




新宿にはディープなスポットありますからねー。

そこでなら、性転換の話もできるでしょう。



次回は、個人的な事情があり、1月になって少し経ってからになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今後のストーリー展開とても楽しみです。この第15話まで一気に読ませて頂きました。素敵な作品に出会えたって思ってます。特にMTFの気持ちや感情を上手く表現されていると感じました。 [気になる…
[良い点] 二人は再会したんですね…… でも、中山君デリカシーがないか! こんなんで大丈夫かな? 今回は決めて欲しいですね、中山君!
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