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13 別れ・・・そして30代に

男性でも女性でも、自分を好きになった人と結婚するべきか、自分が好きになった人と結婚すべきか悩むところですね。両想いならいいのですが、一方通行というのがよくあると思います。主人公の中山君は自分が好きになった人と恋愛したいタイプですね。

中山廉なかやまれんです。


転勤を直前にして、中村映奈なかむらえいなという1才年上の同僚の女子から告白を受け、俺は付き合うことにした。

汐音さんに美人だと言われたこともあり、試しに付き合ってみることにした。

やはり、他人の評価は大きい。心が動く。


映奈は好みのタイプではなかったが、実際付き合うと、顔自体はいいし、しっかりしているし、俺に尽くしてくれる感じがあり、悪い気分ではなかった。

これなら、しばらく付き合ってみるかという軽いのりで交際は続けることにした。


そして、転勤は名古屋になる。仙台からは遠い。


名古屋と仙台では、かなりの遠距離恋愛になる。

けっこう、会うのに苦労する。

まあ、ネットをつかって、オンラインで顔を合わせることはできた。


まあ、最初の1年は無難に交際を続けたと思う。

2カ月に1回、途中の東京で会って、ホテルに一緒に泊まって東京観光とかして盛り上がる。

旅行気分で、デートというのは新鮮だった。

さらに、3か月に一度は俺が仙台行くか、彼女が名古屋に来て、仲良くすごした。


でも、・・・1年経っても、俺がプロポーズしてこないので、映奈はイライラし始める。

というか、結婚らしき話題を全く言わないことに気づかれてしまった。


「私のことをいつまで待たせるつもり!」

結婚願望が強かった彼女は攻撃的な性格を露わにした。

仙台勤務の時、けっこうキツイ性格だという評判を耳にしていたが、何とか抑えていたのだろう。

もう抑えられなくなったようだ。


学生時代とか、入社直後の交際開始ではなく、会社に入ってしばらくたってからの交際開始であるし、

彼女の方が1つ年上だ。

そりゃ、交際する以上、結婚についての方向性を示してほしいだろう。

俺は何となくまずいなと思いつつ、結婚の話題から逃げていた。


実は、付き合っているうちに、本気になれなくなっていたんだ。

やっぱり、好みではない女性とは結婚できないと考えるようになってきた。

正直言ってときめかないんだ。


名古屋の支社に汐音さんに似た小柄で可愛い「篠田舞香しのだまいか」という女の子がいて、その子を毎日見てると、

「舞香ちゃん、可愛い!

汐音さんと似ている。こんな感じの『いかにも女の子』という感じの子が好みだ。長い髪が綺麗だし。

やっぱり、ボーイッシュで体格のいい映奈は好みじゃない。容姿だけでなく、性格的にも合わない。

やっぱり映奈とは結婚はしたくないかも。

うーん、難しいな。

俺はわがままなのだろうか?」

と、思ってしまった。


その好みのタイプの篠田さんには、やっぱり彼氏がいた。

はっきりわかっていたので、手を出すことはしなかったが、

近くで仕事をしているのをよく眺めてしまう。

ほんわかしていて、見てるだけで癒された。


「篠田さんに、彼氏がいなければ、口説くのになー。」とつぶやくことがあった。


すると、同僚に、

「ああいう、可愛い女の子は、学生時代から、ずっと男が切れないんだよ。

男がほおっておかないタイプだから、社会人になって、しばらくたってから、口説こうと思っても遅い。」

と、からかわれた。

確かに、そうだ。

男が誰でも可愛いと思うタイプの女の子は、学生時代から、彼氏がいるし、社会人になって、彼氏がいない時期が発生しても、あっという間にイケメンか要領のいいヤツが奪っていく。そういうもんだ。


そして、篠田さんは俺が名古屋支社に来て、1年後には結婚して、奥さんとして働き始めた。

うーん、売れっ子は早い。


さて、俺は、映奈に対して、はっきり自分の気持ちを告げることができなかった。

やはり、結婚を考える年齢であったことが大きいのかな?

それに、たまにしか会わないので、結論を先延ばししてしまう傾向にあった。

映奈と別れたあと、好みの女性に出会える自信は全くなかったし。

要するに中途半端な気持ちで映奈と遠距離恋愛をしてしまった。

俺は最低である。


その結果、転勤後1年と半年で、俺と映奈は破局した。

「もう、待てない!」そう言われて、俺たちは終わった。当然だ。


すごく自由になった気分と、もう女性と恋愛できないかもしれないという気分が混じった感じになる。


結局、俺は、名古屋で3年過ごしたあと、関西に転勤し、今度は4年を過ごす。

全然彼女はできず、恋愛も上手くいかなかった。


32才を過ぎて、俺は、東京本社に配属される。


出世するコースに入ったけど、何か空虚なものを感じる俺だった。


「俺、映奈と別れたあと、全然女の子と付き合っていない。

仕事ばっかりだ。

恋愛をしていない。俺、何やってるんだ?」


愕然としてしまった。


そして、俺は、仙台勤務時代の汐音さんとの出会いを思い出す。


「あの時はすごくときめいたな。

男性だって、わかってなかったせいもあるけど、すべてが理想的な出会いだった。

あの、ドキドキした感覚は、映奈には全く持たなかった。

やっぱり、恋愛って勢いだ。

ときめいて、ドキドキして、一挙にゴールまで行くっていうのが大事かもしれない。

まあ、汐音さんは男性だから、ストップがかかっちゃったけど。

それにしても・・・汐音さんかあ~・・・なつかしい・・・。

汐音さんも32才か33才前後だろう。もう、女装なんてやめてるかもな。

普通の男性として仕事をしているだろうな。

もう、結婚して、子供もいるかもしれない。するとお父さんだ。

あれから、7年以上経っている。もう、顔つきも体型も変わってるかも。

俺が会ったときの汐音さんは幻のようなもんだ。

うーん、汐音さんみたいな感じの本物の女性に会えないかなあ。」


東京本社では、俺は今まで以上に仕事に追いまくられる。


そして気づくと33才になっていた。5月に誕生日を迎えた。

もう恋愛も結婚もできないかも知れないと思い始める。

全然出会いの機会はない。

紹介を受けたりしたが、大体が好みではないタイプだ。

やはり、紹介に応じる女の子って、恋愛市場からはみ出しているから、容姿とか性格とか家庭とか、何らかの問題がある。

それは、彼女がいない俺にも当てはまるな。俺の場合は、平凡な容姿のくせに、また、話術とか得意な能力がないくせに、モテる女の子を求めてしまうというところだろう。

でも、誰でもいいという気にはなれない。



そして・・・6月のある日、品川の取引先まで行った帰りの午後2時頃、俺は山手線に乗っていた。

俺の会社は東京駅に近い大手町だから、東京駅で下車予定。あっという間に着く。


新橋で、少し離れた乗降口にアラサーと思われるロングヘアの女性が乗ってきたことに気づく。流れるような艶やかな髪が目を引く。

いかにも仕事が出来そうなキャリアウーマン風だった。就活中や就職直後の女の子が着るビジネススーツと違って、ちょっとオシャレな感じのパンツスーツに身を包んでいるのも気になる。

背は低い。なかなかの美人で好みのタイプだ。目が涼し気で、颯爽としている。


ん?どこかで見たような顔だ!

何となく記憶の片隅にある顔…


ええ?!


まさか!そんなことって・・・あるか?


俺がある推測にたどり着いた時、電車は東京駅に着いて彼女はさっさと降りてしまった。


あ、東京駅だから、俺も降りなきゃ。そして追いかけよう!確かめなきゃ!


俺は慌てて電車の外に出る。その時タイミング悪くスマホの着信音がなってしまった。

どうしようか?と逡巡したが、そこは悲しいサラリーマンの性で出てしまう。

あ、予想通り、急ぎの仕事の件だ。

俺は立ち止まって、話をしなければならなかった。


電話が終わったあとは、彼女の姿は影も形もない。


まさかと思うが、汐音さんに似ていた。他人の空似か・・・


そうだよな・・・冷静に考えれば、汐音さんとは別人だろう。

似ている雰囲気をもっているだけだ。

さっき見た人は、普通の女の人だ。

仕事をしている緊張感みたいなものがあった。仕事をバリバリしている女性だ。

男性が女装しているという感じではない。

天然の女性だ。


だいたい汐音さんは男性なんだから、仕事中は男姿だぞ。

汐音さんのわけがない。


でも、汐音さんに似ていたなあ。

好みだ!

会って、話をしたい。

年齢的にも俺に近そうだから、俺に合うかもしれない。

東京駅で降りたということは、また、会えるかも!

おそらく、勤務先は、八重洲か日本橋、丸の内、大手町あたりだろう。

運命の糸があれば、会える可能性はゼロじゃない。


俺は、何万人いるかわからない東京駅周辺の会社員の数を考えないようにして、偶然を期待した。


さて、偶然見かけた汐音に似たキャリアガールに中山君は会えるのか?

次回更新はまた来週です。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 中山君、駄目だな! ある程度は妥協しないと…… でも、好みじゃないとか本気になれないなら仕方ないかな。ここからまた、汐音さんに出逢えるのかな? 汐音さん似の女性に逢えるのかな……
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