12 好みではない女性からの告白
更新が遅れました。すみません。
本物の女性からの告白で、動揺する中山君です。
汐音です。
中山さんとの2泊3日の旅行は楽しかったです。
いっぱい、銀世界の写真撮れたし、買っていた冬服を着ることができたし、そして、恋人気分の旅行で、キスもいっぱいしたし・・・
普通に女性が好きな中山さんとは、キス以上のことはしないようにしました。
私のことを可愛いと思ってくれているようですが、どう考えても彼のためにならないもん。
本当は、ホルモン治療で、性器は別として、身体の女性化が進んでいるから、胸とか触ってほしかったけど、そこは我慢。単なる女装男性で通しました。本格的な女性化をめざすGDIであることを説明すると面倒だなって思ったのです。
人事部で励まされて一度は恋愛に前向きになりましたが、やっぱり、性適合手術を終えて、戸籍を女性にしたあと、恋愛について考えることにします。
どうせ、3月になれば、私は転勤します。たぶん、中山さんも転勤するでしょう。
女性になる予定があるから、付き合いましょうなんて私には言えない。
彼には、普通の恋愛をしてほしいと考えてしまいます。
ホントは恋人になりたいって本音はあるけど、私には理性があって、理性が感情を制します。
旅行の帰り、2月に秋田・山形方面へ、また泊まりでドライブすることを誘われました。
あと1回くらいは、楽しい時間を過ごすのも悪くないなって思った私は、オッケーします。
でも、それは、実現しませんでした。
ちょっとした事件があったからです。
それは、仕事が休みの土曜日に発生しました。
女性姿で買い物をして、カフェで一人で食事をしていたとき、すぐ近くに座っていた二人組の20代女性の会話が耳に入ってきたんです。
「ねえ、中山さんに気持ち伝えたの?映奈!もう、転勤しちゃうかもしれないよ。彼女いないのは間違いないって、同じ課の人に裏付けとったし、今がチャンスだよ。」
「菜摘、そう急かさないで!私も、悩んでいるんだから。」
「二人ならお似合いだと思うよ。それに、映奈は美人なんだから、絶対嫌だなんて言わないよ。」
「そう?私、背が高いから、そのへん、気にしてるんだけど。」
「でも、中山さんよりは低いでしょ?170センチはないでしょ?気にすること必要ないよ。」
「うーん、168だからなー。確かに中山さんより低いけどさー。ヒールある靴はくと、ほぼ一緒なんだ。」
私は、もう、耳がダンボになってきます。
話を聞いていると、いろいろ情報が洩れてきます。どうも、私の知っている中山さんのことらしい。
会社の名前出てきたからまず間違いない。
二人は同じ会社に勤務してるんだ。
映奈という人は中山さんのことが好きだけど、想いを伝えないでいるみたい。
うわっ、美人。
鼻筋が通った、宝塚の男役みたいなキレイな顔をしています。
男役みたいに見えるのは髪をショートにしているから。
一緒にいる菜摘という子がロングヘアだから、より男役っぽく見えます。
ちょっと、気が強そうだし。ちょっとガッチリしてるのも男っぽい。
「よし、私、中山廉に告白する。気持ちを伝えないと後悔する。1週間以内に言うよ。
菜摘、協力して!」
うわっ、フルネームで言っちゃった。
そのあと、二人は立ち上がって、私より先に会計を済ませます。
映奈さん、確かに長身だ。もう一人も長身で、二人ともすらっとしている。
中山さんも隅におけないなー。
これで、私の出る幕はなくなった。
ちょっと名残惜しいけど、身を引かないと。
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中山廉です。
汐音さんとの秋田・山形旅行を考えていたら、突然、いろんなことがあって、面食らってる。
まずは、汐音さんから、予想外の情報提供と旅行のキャンセルの申し出があった。
それは、突然メールで来た。
「中山さん、先日、休みの日にカフェで食事してたら、偶然、隣の席に中山さんの同僚の女の子がいたんです。会話の内容でわかりました。中山さんの勤務先やお仕事教えてもらっていたので、わかったんです。中山さん、近いうちに、美人さんから、告白されますよ。
私、お邪魔だから、今度の旅行辞退させていただきます。
私から見て、すごい美人です。チャンスを逃さないでください。」
俺は、ショックだったし、嫌な予感がした。
「俺に告白?その女子の名前はわかる?」
「映奈さんです。御存知の方だと思います。」
「やっぱり、そうか・・・。」
俺は、映奈が俺のことを気に入っていると何となくわかっていたが、気づかないふりをしていた。
確かに美人だが、全く好みではなかった。
高身長だし、気が強いし、ボーイッシュで髪の毛がショートだ。
ヒールを履けば、170センチ超えてしまう。
俺の、小柄でロングヘア、華奢好みの対極にあるといっていい。
あんなの好みじゃない!と汐音さんに叫びたかったが、汐音さんは美人と評価している。
けなしたら、俺の人格が悪いような感じになりそうだ。
実際、映奈は美人で、同僚の評判はいい。
でも、でかいから、そんなに男性にモテないのも事実。
多くの男性が小柄な女性を好んでいると思う。
「中山さん、がんばってください。
私は、もうメールしません。ちゃんと彼女を作ってくださいね。」
「あ、・・・わかった・・・
映奈からのアプローチがあるか様子を見てみる。」
「よかった。じゃ、これで・・・」
「うん、ありがとう。」
メールの交換が終わってしまった。
今時、フリーメールでの会話というのも、変だなと思いつつ、汐音さんとのメールによる会話を振り返る俺。
「映奈は好みじゃない。汐音さんがタイプなんだ。」って何故言えなかった?
それは、彼女が男性だってわかってるからだ。
映奈が好みじゃないっていったって、生物学的にも、戸籍的にも女子で、一応美人なんだ。
何が不満がある?
好みの容姿だって言ったって、男じゃどうしようもないだろ?
背が高くてもいいじゃないか?髪の毛が短くてもいいじゃないか?気が強くたっていいじゃないか?
俺を好きだっていうなら・・・。本物の女だ。
そんな考えが、一瞬の間に頭に沸き起こり、俺は汐音さんの言葉に逆らえなかった。
ああ・・・これでいいのかな?
そして、俺は、数日後、映奈から告白を受け、付き合うことを承知してしまった。
複雑な中山君の心の中ですね。
好みじゃない女性には好かれて悩む男性・・・ってありがちかな。
次回更新、一応次の土日あたりのつもりです。




