11 冬の青森旅行
二人きりでの2泊3日の旅行に出かけました。どうなるやら。
中山廉です。
今は1月中旬。
俺は、ものすごく可愛い女の子を助手席に乗せて車を走らせている。
夢みたいだ。
好みのタイプの女の子と車でデートなんて超嬉しい!
本物の女の子じゃないという事はどうでもよくなった。
今は東北自動車道。
助手席にいる汐音さんは、コートを脱いで、ガーリーなニットにパンツ系ファッション。
メイクはバッチリで、いつものいい香りのコロンを付けてる。
どう見ても女の子にしか見えない。しかも別の部屋に寝るけど、2泊予定の旅行だ。
彼女(彼?)について、恋愛感情があるかどうかは、自分でもよくわからない。
俺はホモ、ゲイではないと自覚はしている。
男性とセックスしたいとも思わない。
でも、汐音さんと一緒にいたい。
抱きしめて、キスくらいしたいという気持ちはある。
でも、そんなことしたら、いっぺんに嫌われちゃうかな。
そういえば、汐音さんが唯一男っぽく見える部分を発見してしまった。車に乗っていた時、助手席に座る彼女をチラ見して発見してしまった。
喉仏がハッキリしている!
女性でも小さな喉仏があることは知っているが、これは男の喉だ。やっぱり男性なんだ!
でも、それ以外は可愛い女の子そのもの。
好みだ!
うーん、悩ましい…
汐音さん、性指向はどうなんだろう?
女装して、ドライブしたり、写真撮ったりするのが好きだって行ってたけど、男女のどちらが好きなんだろう。
この間、久々に会ったときに聴けばよかったのかもしれないけど、場の空気を悪くしたくなかったから、敢えて聴かなかった。
でも、性格や雰囲気は女の子そのものだ。
単に、ファッションで、女装を楽しむコスプレ系の人とは違う。
トランスジェンダーなのかな?
身体をいじってるのかな?
でも、今は男性会社員のはずだから、変なことできないよな?
身体をいじらないで、プライベートだけ女装して、本来なりたい性別を満喫しているのか?
うーん、わからん。
聴いてみるしかない。
よし、今夜、飲みながらでも聴いてみよう。
俺たちは、まず青森市まで行って、ねぶたが置いてある場所を見た後、八甲田連峰が見える場所まで行き、写真を撮りまくった。
そして、夜は弘前市に行き、ビジネスホテルにチェックイン。
津軽料理を食べたあと、ホテルに戻り、俺の部屋で、話し込むことにした。
汐音さんは、シャワーを浴びたあと、可愛らしいミニスカートで、俺の部屋に来てくれた。
雪の中を歩くときは、ずっとパンツ系ファッションで、スノーブーツだったから、新鮮だ。
メイクは取っていた。すっぴんだ。
ヒゲは脱毛してるのだろう。全くない。
そういえば、手足に毛がない。全身脱毛か?
すっぴんにも関わらず、可愛いのはすごい!
もともとの顔が女性顔であることがわかった。
メイクの力で女の子に見えたわけじゃなかったんだ。
「ミニスカートで、人前に出るのって、初めてなんです。
可愛いなって思って買っちゃったんですけど、もう25才だから、ちょっと無理あるかな?
肌には自信あるけど…
実はひらひらしたミニスカートってすごく好きなんです。」
恥ずかしそうにキレイな足を出しながら、俺に意見を求める汐音さん。
「全然、大丈夫だよ。
だいたい、汐音さん、童顔だから、高校生でも通じるから。」
「またー、上手いこと言って。
だまされませんよ!
そこは大学生に見えるって言ってもらった方が、信じます。」
「いや、本当だよ。ほんとに高校生に見える。
制服でもイケルんじゃない?」
俺は、本音での発言だった。
「本当ですか?
本当なら、超嬉しい!」
彼女?は俺の横に座ってきた。
ちょっと酔っぱらった赤ら顔で、シャワーのあとの、シャンプーリンスのいい匂い。
わっ、たまらん。
「汐音さんは、本当に男性?
男性として仕事してるなんて信じられない。
髪の毛だって、地毛でしょ?
セミロングの長さあると思うけど仕事に差し支えないの?」
「ふふふ、ありがとうございます。
嬉しいけど…
私、正体は男性ですよ。
ちゃんと、ついてるんです。
地声も低いんですが、トレーニングして女性の声が出せるようになったんです。
髪は男性としては長めで、ボブくらいあるかなぁ。
仕事では、整髪料使って短く見えるようにセットして、ギリギリ怒られないようにしてます。
女の子になる時は、地毛に簡易式エクステ、つまり付け毛を足して長く見せてます。
髪の毛洗う時は、外して、髪とは別に洗って、そのあとドライヤーで乾かして、再装着してるんですよ。」
「そうなのか!
すごい!
工夫してるね!
それで、ただのファッションとしての女装?それとも性別違和、トランスジェンダーなの?」
「……それ、答えなければいけませんか?
うーん、企業秘密なんだけど…」
汐音さんは微笑みながら色っぽい眼差しで、答える。
小悪魔的だ。
俺もちょっと返答に詰まるが、ちょっと考えて言うべき事は言った。
「いや、答えなくてもいいけど、完璧に可愛い女性に見えるから、気になって。
あ、これだけは教えてよ。
恋愛の対象は男性、女性?」
「うーん、その質問も答えにくいです。
実はわからないんですよ。
今は恋愛するより本物の女性に近い存在になりたいっていう気持ちが強くて。
不完全な存在だから…
そうだ
中山さんはどうなんですか?
もしかして男性もイケるの?
ゲイ?バイ?
だから私のこと誘うの?」
「俺は、ホモ、ゲイじゃない。
バイでもない。
普通の女の子が好きだ。
汐音さんの事は女性として認識してるんだ。
俺には女の子にしか見えない。
今も可愛い女の子と一緒にいる気分だ。」
「もう、しょうがない人ですね。
私がもし服を脱いだら幻滅しますよ。
男の身体だし、
付いてるものが付いてるから…」
「じゃ、脱がないでくれ。」
「脱ぎませんよ!!恥ずかしいし。」
彼女はちょっとだけ強い調子で声を出し、口をとんがらせて拗ねてみせた。
「脱がないなら、女の子って事でいいんだよね?」
俺は、そう問いかけるとすぐに、彼女の肩に手を回し、抱き寄せた。
「やぁんっ、ダメよぉっ…」
と可愛く口では嫌がっているが、目はトロンとして、特に抵抗はしない。しかも笑顔のままだ。
俺は、彼女の目を見つめる。もう止められない。
「いいだろ?」
「ダメよ…」と言いながらも、彼女は目をつぶった。
これは、オッケーの合図だ。
俺は、ゆっくり、唇を重ねる。
抵抗はない。嫌じゃないようだ。むしろ応じてくれてる!
彼女の唇は柔らかく、気持ちがよかった。
俺は、彼女の唇を貪るようにキスを続けた。
そして、舌も入れていく・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の朝、俺たちは、二人そろって、ビジネスホテルで朝食を取った。
彼女の態度が変だったらとどうしようとビクビクしていたが、会ったら全然普通だった。
昨夜、俺たちはキスで何とかとどまった。
キスの最中、彼女が、
「脱がしたら、ダメ。男になっちゃう・・・。」
という一言を入れたのが大きかった。
俺はホモじゃない。
男の身体が現れたら、やはり幻滅してしまうと恐れたのだろう。
汐音さんの身体は男と思えないくらい柔らかくて、胸も本物っぽく感じたが、やはりためらった。
彼女が普通でいることを考えると、あれ以上進まなくて正解だったのかもしれない。
その日は、雪の中を日本海までドライブした。
岩木山の雄大な景色を楽しみ、いろんなところで写真を撮った。
写真に写るのが大好きな汐音さんの写真をいっぱい撮ったけど、俺も撮ってもらった。
もちろん一緒にも撮った。
やはり、雪と自然との写真は別世界で、特別な写真になる。
雪で塊を作って、ちょっとしたぶつけ合いではしゃいだりもした。
子供に戻った感じだった。
そして、日本海側の街で、やはりビジネスホテルに宿泊する。
展開は前日と同じになった。
何となく、汐音さんを抱き寄せて、キスしてしまう。
「キスだけね・・・」
と言われ、それ以上はできないのだが・・・時間は前日以上にかけてしまった。
たっぷりキスを味わってしまう。
汐音さんもうっとりしていて、気持ちよさそうで・・・でもそれ以上ができなくて・・・
その後、寝る時に悶々としたのは言うまでもない。
ホモの世界に入ってしまおうか?と何度も思うが、やはり俺はそういう世界には入れないと思い返す。
もし、強引にあれ以上進めたら、嫌われるかもしれないと思っちゃうし・・・
翌日、俺たちは普通に会話をしながら、ドライブを楽しんで仙台に帰っていった。
まあ、キスで止めておいて、正解だったのかもしれない。
助手席を見ると、
(可愛いなあ。何で、女の子じゃないんだ?悔しすぎる!)と声を出したくなる汐音さんがいて、
いろいろ悩んでしまうのだが・・・
(とりあえず、今は先のことを考えるのは、よそう!
いっしょに、ドライブして、キスできればいいや。)
問題先延ばしの俺だった。
ついにキスしてしまいました。でも、そこまでです。
二人の関係は変化するのかな?
次の週末更新です。