8話 オッサンゲーマー 因縁のゲームと再会する
「なあ、ベン。チエが残していったゲームっては、本当にこれで間違いないのか?」
カラカラに干からびたオレの声に、ベンは黙って頷く。
「……間違いない。この家、ゲームなんてなかったし。学校から帰ったら、手紙と、これがあった……」
そりゃあ間違えようがないな。
ここまで懇切丁寧にお膳立てしておいて、実はスマホゲームのことでした!とか言われたら、オジサン帰っちゃうよ?
いやしかし、よりにもよってこのゲームとは思わなかったぜ。
確かに、このゲームをクリアできるのが世界中でオレだけってのも、納得したけどさ。
いや、正確に言えば『こんなゲームを最後までプレイしようと思う物好きは』世界中でオレだけなんだけど……。
「……オジサン?……早くやろう」
「お前、このゲームがどんなゲームなのか知ってて言ってるのか?」
「知らない。ボク、ゲームやったことない」
またも衝撃の発言が飛び出しましたー。
なんと、あのチエの息子のくせに、ゲームをやったことがない!?
再会した時の説教案件がまた一つ増えちまったようだな。
おいこら、自分の息子にどんな教育してんだ!
いや、よく考えたらこれくらいの子供にゲームさせないのって、普通なのか?
おじさん、その辺の常識が根こそぎぶっ飛んでるから分かんないや。
「……どんなゲームなの?」
「一言で表すなら"ムリゲー"。これに尽きるな」
「……絶対にクリアできない?」
ゲームをやったことない少年でも、ムリゲーという言葉くらいは知っているらしい。
ゲームにも様々な愛称、蔑称が存在する。
クソゲー、神ゲー、死に覚えゲー。今でこそ多様化してきたゲームの世界だが、これが発売された頃はそんな呼び方自体が存在しなかった。
それでも、当時これをプレイしていたオレたちは、このゲームにムリゲーという冠を付けた。
下手したら、世界で初めてムリゲーという言葉を使ったのはオレ達だったかもしれない!
それはさておき、このゲーム。名前はドルゴン・クエスト、通称『ドルクエ』。
某有名ゲームに酷似したタイトルにゲームパッケージ、そしてシステムや世界観まで瓜二つ。
しかし、似ているのはそこまで。
というか、ドラ〇エの皮をかぶった、全く別の何か。しかも、徹底的にプレイヤーをバカにした仕様に仕上げている、
鬼畜を超えて、むしろ悟りを開くレベルの難易度。
難解極まる、というか解かせるつもりのない謎解き要素。
意味不明なイベントの数々に、イチイチ致命的な罠が仕掛けられているタチの悪さ。
「当時のオレ、よくもこんなゲームをクリアしたもんだよ……」
「……オジサンなら、クリアできる?」
「いや、もうずいぶん昔のことだから、全部を覚えてるわけじゃないけどな……」
懐かしくも忌まわしいカセットを手に取る。
随分薄汚れているし、思った以上に軽い。昔のゲームって、こんなシンプルな作りだったんだよなあ。
「手紙には、これを二人でプレイしろって……」
言われて不意に思い出す。
そうだった。このゲーム、当時にしても、世にも珍しい二人プレイ専用RPGだったのだ。
カセットが刺さっている赤と白のゲーム機本体は、元々2つのコントローラがついている。
しかし、RPGでその2つのコントローラを使ってプレイするゲームなんか聞いたことがなかった。
当時の記憶が徐々によみがえってくる。
チエと一緒に、夢中になってこのムリゲーをプレイした日々。
「いったい、チエの奴がどんな理由でこのゲームを選んだのかは知らんが、ゲーム初心者にいきなりやらせるゲームじゃねえだろ、絶対」
あ、だからオレを呼んだのか……?
このゲームをベンにプレイさせなくてはいけない理由があって。その相棒として、このゲームに誰よりも(下手したらプログラマーよりも)精通している俺を選んだってことか。
「なんにせよ、プレイしなきゃ始まらねえか。さあ、ベン。コントローラを握れ!お前の初体験はとんでもないキワモノになっちまったが、オジサンが優しくエスコートしてやるから安心しろ!」
「……ちょっと待ってほしい」
腕まくりをしてゲーム機に取り付こうとした俺を冷ややかな視線で静止すると、ベンはそそくさと隣の部屋に何かを取りに行った。
果たして、ベンが手にしていたそのコントローラを見て、オレは2度目の絶叫を上げることになった。
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