25話 少年時代回想 料理
回想はあと一話で終わる予定です
……あんまり昔の話の需要ないですかね?みんな、ゲーム本編が早く見たい?
「あら、ツトム。久しぶり!最近顔見せなかったから心配してたのよ」
「夏休みだし。ちょっと”合宿”に行ってたんだ。おばちゃんは、相変わらず元気で忙しそうだ」
部屋に入ると、いつものように田村のおばちゃんが元気に迎え入れてくれた。夏休みの間チエの家に入り浸りだった俺だったが、一か月以上ここを休んだことって、よく考えればなかったかも。
ちょっとだけ感慨にふけっていると、おばちゃんが目ざとく俺の後ろにあるものに気づいたようだ。
「ちょっとツトム!誰だい、この可愛いお嬢ちゃんは。あんた、その歳でもう彼女なんか作っちゃったのかい?しかも、こんな遅い時間に連れ出すなんて、イケナイ子だよ!」
「ちょっと……おばちゃん!……痛いって!」
無遠慮に俺の背中をバシバシと叩いてくる。相変わらず豪快で容赦がない。
いや、たった一か月であのおばちゃんがおとなしくなってたら、逆に気持ち悪いか……。
「こいつは墨田チエ。俺の……その……なんていうか……」
「ただのクラスメイト」
俺が言いあぐねていると、チエが短く、つっけんどんにそれだけ答える。
愛想ワリいなあ、こいつ……。そういえば、学校でも同級生と親しくしてるのを見たことなかったな。
「そうかい、チエちゃんね。よろしく」
おばちゃんは慣れたもんで、チエにそれだけ声をかけ、にっこりとほほ笑んだ。
誰に対しても明るくて元気なおばちゃんだけど、相手に合わせて接し方が変わってくる。
ここはいろんな奴が来るからな。ほんと、いろんな奴が来る。
「そろそろ混んでくるころかなと思って、手伝いに来たんだよ。それに、今日はとっておきのお土産もあるんだぜ」
扉を開け放ち、リヤカーに積んだ大量の食糧をおばちゃんに見せてやる。スゲエ量だろ?これ、全部チエが買ったんだぜ。ガラガラを引くためだけに……。
少し自慢そうに目線を戻すと、そこには鬼のような形相でゲンコツを振り上げるおばちゃんの姿があった。
ゴッ
目の前がくらくらする。これは、本気のゲンコツだぜ……
「あんた、どんな理由があっても人さまの物を盗むような真似だけは許さないよ!そんなことしなくても済むように、私がここをやってるのが分かんないのかい!」
「ち、違うって!おばちゃん!これは……イテッ!……ちょっと、もうやめて!」
俺が事情を説明する余裕もなく、おばちゃんのゲンコツが立て続けに炸裂する。
「今すぐ!持ち主のところに!返しておいで!」
「……それ、私が買ったの。盗んだわけじゃないわ」
たっぷりと時間をかけた後、ぼそりとチエはそう呟いた。
「え、それは本当かい?」
「こぉら!言うのが遅いだろ!コブだらけになったじゃないか!」
この野郎……絶対わざとだろ……
「とにかく、今日はこいつを使ってくれよ」
ズキズキと痛む頭をさすりながら、俺は仏頂面でそう続けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねえ、ツトム。それで、結局ここは何なの?」
「ん?お前のことだから、大体わかったんじゃないの?」
部屋に食材を運び入れると、おばちゃんはいそいそと下ごしらえを始めた。
一応ゲンコツのお詫びはしてくれたが、それどころじゃない様子で大慌て台所を駆け回っている。
そんな様子を眺めながら、チエが俺に問いかけてきたのだ。
「何かの保護施設かしら?それにしては、職員の数が一人きりってのが気になるし……」
「ま、大体当たってるかもな。ここはおばちゃん一人で切り盛りしてる食堂さ。通称”はっちゃん食堂”夜ごはん限定だけど、無料でどんな奴にもご飯を腹いっぱい食わしてくれるんだよ」
俺の言葉にチエが目を丸くする。
「どうしてそんなことするわけ?」
本当に理解できない、といった様子のチエ。その表情に、少しだけ俺の心にいら立ちが募る。やっぱり、こいつは俺達と住んでる場所が違いすぎる。
「分かんねえか?この辺には、そうでもしなきゃやってけない子供がいっぱいいるんだよ」
「……」
俺の言葉と同時に、部屋の扉が勢いよく開く。そこには、俺よりも年下の子供たちが満面の笑みで立っていた。
「おばちゃーん!腹減った!」
「はいよ!今日はご馳走だから、楽しみにしといで。さあ、入って待ってなさい」
迎え入れるおばちゃんも、にこにこと笑ってる。いつもそうだ。おばちゃんはどんな奴が相手でも笑って、すべて受け入れてくれる。
部屋の奥に入っていく子供たちの身なりを無遠慮に観察するチエ。子供たちは、場違いに高級そうな服を身に纏ったチエの存在に驚いた様子だ。
ツギハギの入ったズボンを眺めながら、ようやく事情を察したようで、チエの瞳に理解の色が浮かんだ。
「おい、あんまりジロジロと見るなよ!」
「え……ああ、そうかしら……」
「とにかく、これでここがどんな場所か分かったろ?」
「ええ……」
少しだけシュンとした様子で、チエが小声でつぶやく。
「ねえ、ツトム。あんたもここによく来てるの?」
「まあな。おばちゃんには本当に世話になってるよ。一緒に飯を食った回数なら、あのクソ親父よりもはるかに多いな」
「そう……」と頼りなくつぶやく。こいつの場合、ちょっとくらい落ち込むくらいでちょうどいいんだよ。いつも、エラそうな態度でずけずけと人に指図してくるからな!
「と、それはさておき!おばちゃん、手伝うよ」
「助かるわ!予想外のご馳走になっちゃったから、人手が欲しかったのよ」
腕まくりして台所に向かう俺。
「ねえ、ツトム。あんた、手伝いもしてるの?」
「結構付き合いも長いし、ただ食わしてもらうだけってのも悪いだろ?」
何を隠そう。俺の料理の腕はここで磨かれたといっても過言ではない。
おばちゃんの料理の腕前はプロ級だ。しかも、ただのプロじゃない。余り物の食材を使ってるくせに、それを全く感じさせないし、毎日どんな食材が手に入るか分からない状態でもそいつを使って一番うまいご飯に化けさせちまう。
ここに来るみんな、おばちゃんの料理の大ファンなんだ。
「あんたよりも上級生もちらほら見えるけど……」
「ここでは俺が一番先輩だし、この狭い台所じゃ俺くらいのサイズじゃないと、おばちゃんの邪魔になっちまうんだよ」
「なるほど……」
妙に納得した様子のチエ。やがて、その表情が何やら挑戦的なものに変わる。
「ねえ、ツトム。私も手伝うわ。私の方が小柄だから、もう一人増えてもおばさんの邪魔にはならないでしょ」
「げ……!どういう風吹きまわしだよ。面倒なことは、大抵俺にやらせるくせに」
「料理となれば話は別。私の腕が、あんたを超えたことをここで証明して見せるわ」
ほんっっっっっっっっとうに負けず嫌いなやつだな、コイツ。
「あら、チエちゃんも手伝ってくれるのかい?じゃあ、お願いしようかね」
「おばさんの許可は得たわ。さあ、ツトム、勝負よ!」
「いい度胸じゃねえか!ここはまさに俺のホーム。ホームで俺に勝負を挑もうなんて10年早いぜ!」
かくして、変則的な料理デスマッチが幕を開けたのであった。
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