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21話 100メガショック!

PVが伸びた&評価もらえたのが嬉しくて、連続更新です

 そのニュースは、瞬く間に業界内に広がった。 

 無理もない。いくらEスポーツが普及したとはいえ、その金額は桁違いだ。


 ニュースが駆け巡った直後、業界に起こったのは単純な”混乱”であった。これほどのイベントが事前告知もなく打たれたことがその原因だった。

 しかし、業界が十分に混乱で飽和したタイミングを見計らったように、主催者の『ノルン』が経緯を公表した。


 『ノルン』とは、ユグドラシル=ドライブを制作・販売するゲームメーカーだ。ユグドラの発売と共に、一躍世界でも指折りの企業へと成長した、いわば超ユニコーン企業である。

 初めに『ノルン』が念を押したのは、この企画が決してデマではないという点だった。宣伝に偽りはなく、最初にゲームクリアした者に報酬を確約すると、社長自らが宣言した。


 同時に、この企画はユグドラ発売3周年を記念して企画されたもので、幅広いユーザーにユグドラの可能性を知ってもらうためにあえて昔のレトロゲームを対象にしたという。

 <あらゆるゲームがVRになる>という触れ込みで売り出したユグドラである。ゲーム黎明期のソフトであっても、例外でないということを示したい、と。


 デマではないことが確約されてからは、業界だけでなく世界中が騒然とした。


 何しろ金額が金額である。莫大な懸賞金といえば、アメリカの数学研究所が発表した”ミレニアム問題”が有名であるが、それであっても100万ドルだ。しかも、提示された問題は数学の歴史上未解決とされている難問中の難問ばかり。ゲーム一本をクリアすることに比べれば、その難易度は計り知れない。


 次に『ノルン』から提示されたのは、ゲームへのアクセスコードである。


 無用の混乱を避けるため、ゲームプレイへの権利を無制限に開放したのだ。なにしろ、存在すら危ぶまれているレア中のレアゲーだ。見つかっただけで、それをめぐって恐ろしい争いが起こることが容易に想像できる。


 懸賞金には確かな保証があり、アクセスもフリーとなったら、次に起こったのは端末の争奪だ。


 しかし、それに対しても『ノルン』の準備は万端であった。価格を抑えたシンプル仕様のニューモデルを同時に販売。在庫を切らすことはなかった。


 文字通り、飛ぶように売れた。

 流通が一時的にマヒしかねないほどの勢いで売れまくった。


 この一連の騒動を見てみれば、確かに販売促進としてこの上ない戦略である、という見方をする者もいた。実際にこの一か月で、ユグドラの販売総数は倍以上に膨れ上がったのだ。

 もちろん、さらに冷静な識者の目には採算が取れていないことも自明だった。それほどに1億ドルという金額は途方もない。


うがった見方をする者の中には、チート操作をして『ノルン』の社員が賞金を回収する算段なのでは?という意見も出たほどだ。


 しかし、またも『ノルン』はいち早くその説を否定した。

 おそろしいことに、自社と関連会社、全ての社員のユーザーコードを公表したのだ。


 狂気の沙汰ともとれる対策で、陰謀論者を完全に封殺してみせた。ユグドラのプレイコードは一人に一つだけ。その原則があるため、イカサマ行為は不可能だった。

 

 いずれにせよ、報酬の確約があり、ゲームへのアクセスも可能な状態になったわけだが、すべての条件がそろったわけではなかった。ある意味、最も重要なものが欠けていた。

 昨今のゲームをプレイするために必要不可欠ともいえる、”ある情報”。


 それを求めて、世界中の情報端末をひっくり返すような大暴動がおこった。あらゆるプレイヤーが”それ”を求めて回ったが、その情報はどこのサーバーにも残っていなかった。

 20年以上前、インターネットが普及する前だ。さらにゲーム自身が希少だったことが情報不足に拍車をかけた。


 次には、日本中の古本屋から当時のゲーム雑誌が姿を消した。ネットに無いのであれば、雑誌に残っているかもしれない。

 しかし、”それ”にたどり着けた者は誰一人いなかった。




 自宅でボロボロになったゲーム雑誌を床に叩きつけているカイルも、その一人だった。


「クソが!攻略雑誌の癖にロクな情報が載ってねえじゃねえか!こんな紙くず買うのに、いくら払ったと思ってる!」


 世界中のプレイヤーが欲していたのは言うまでもない、ゲームの”攻略情報”だ。今時のゲームで、事前情報もなくプレイすることは極めて稀だった。


「レビューからしてなっちゃいねえだろ!『起動すらできない。不良品を掴まされたようだ』だと!?プロならもうちっとまともな情報を載せろってんだ!」


 床に無残に散らばっている紙の束には、『ドルゴン・クエスト』に関する情報が記載されていたが、揃いも揃って酷い内容ばかりだった。


「『話題の超大作にタイトルだけ似せたまがい物』だと!?そんなもん、タイトル見ただけで誰でも分かんだろうが!こっちの雑誌には、『起動することすら困難な超難易度ゲーム。しかしプレイした暁にはとてつもない興奮と感動が待っている。続きは、君の目で確かめてほしい』だって!?ふざけんな!そういうのは、一度でも最後までクリアしてから言えってんだよ!」


 荒れ狂うカイル。

 彼は、『ノルン』の公式発表の直後から、チームの総力を挙げてこのゲームの攻略に取り掛かることを決定したのだ。


 プレイする前にカイルが打ち出した戦略は、徹底した情報収集だった。この時代、素早く正確な情報を手に入れる者がすべてを手に入れる。それを誰よりも深く身に刻み、実践し続けてきたからこそ、彼のチームはここまでの躍進を見せてきたのだ。


 しかし、今回ばかりはそれが裏目に出た。


「まさか、ここまで情報が残っていないとは……どんだけ売れなかった糞ゲーなんだよ……」


 絶望に打ちひしがれ、その場に突っ伏す。

 チャット画面の向こうから、そんなカイルに声をかける者がいた。


『あの……こんな時こそツトムさんの力が必要なんじゃない?』

『そ、そうだよ。あの人のゲーム知識って、半端ないし。昔のゲームにも滅茶苦茶詳しいじゃない』


『今思えば、あの人がくれた攻略情報があったから俺たちのプレイも捗ったんだよなあ』

『あの人、初見のゲームでも事前情報なしにガンガン突っ走るタイプだったからな。しかも、どんな些細なところも見逃さない観察眼が凄かったんだよ。おかげでプレイ効率は悪かったけど、あの人の情報に何度助けられたことか……』


「うるせえ!居なくなったやつのことをいまさら口にするんじゃねえ!」


 モニターに怒鳴りつけると、カイルは意を決してユグドラの前に立つ。

 事前情報もなしに、彼がゲームにダイブするのは、これが初めての経験だった。


「見てろよ、あんな奴の力がなくても、自力でこんなゲーム軽くクリアしてやる……!」


 目を血走らせ、ユグドラを装着しようとした、その時だった。

 広報担当の女性から、こんなメッセージが届く。


『カイルさん、見てください。このゲームの製作者!あの、ナージャ=シベリですって。超神ゲーの『成犬伝説2』の開発者ですよ。ゲームの神様が作った初めてのRPGが、このドルクエなんだそうです』

「……ナージャ=シベリ……だと?」


 ダイブする直前のカイルの耳元に飛び込んできた情報に、彼の動きがピタリと止まる。

 怒りに血走っていた目が、スッと細められる。そして、すぐさま狂気の笑みに染まっていく。


「おもしれえ……!()()クソ女の処女作だってのか!断然やる気が出てきたぜ」


 不気味な笑みを浮かべて、カイルはユグドラを装着し、超難関ゲームの世界にダイブしていった。


 これが、のちの世にまで語り継がれる、世界中を巻き込んだ大事件の幕開けとなる。



 懸けられた賞金の額、関わった人数、そしてゲームに費やされたすべてのデータ量を総称して、こう呼ばれることになる。



 すなわち、『100メガショック』である。



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