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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第1章 社会統制の国

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第7話 国際高速列車

 ランシン駅一階、高速鉄道ホーム。

 警察署から転移魔法によってここへとやって来た美空みくとシェンリー、メイフェンの三人は、人混みに紛れて出発間際の国際列車に乗り込んだ。


「間に合って良かったです」

「私、新幹線に乗るの初めて!」


 思わぬ形での高速鉄道初乗車にテンションが上がるシェンリー。

 だが、その隣ではメイフェンが浮かない顔でそわそわとしていた。


「勝手に乗ってしまいましたけど、大丈夫でしょうか?」


 国際列車に乗る時には、事前に駅で保安検査と出国手続きが求められる。国際線の飛行機に乗る時に空港で行う手順と同じと言えば分かりやすいだろうか。

 しかし、転移魔法によってホームに移動してきた三人は、それらを完全にスルーしてしまっている。その上、運賃すら支払っていないので自分たちの座席も確保されていない。


 間も無く、高速列車のドアが閉まり、窓の外のホームがゆっくりと流れ始めた。


『本日もテンシャン高鉄をご利用頂きまして、ありがとうございます。この列車は天馬號てんまごう313便、クアラルシア中央行きです。途中停車駅と到着予定時刻は、シンハン十六時四十五分、ベナム十九時三十七分、バンタイ二十二時五十分、終点のクアラルシア中央には日付変わって三時五十五分の到着予定です。次はシンハンに停まります』


 車掌による車内アナウンスの後、列車はぐんぐんと速度を上げてランシン市の街から離れていく。


「さて、これで安心。と言いたいところですが、そうはいかないのでしょうね」


 美空は遠ざかるランシン市のビル群から、車内上部の電光掲示板に視線を移す。

 そこにはこんなオレンジ色の文字が右から左へと流れていた。



【速報】ランシン市でテロ、犯人は逃走か。主犯は皇国人の漆原うるしばら美空。現在は仲間二人と逃走中。国家警備局は全域指名手配を決定。十二時四十分更新、天上時報。



「これ、私たちのことだよね……?」

「このままじゃ、国外に出る前に捕まっちゃうね……」


 顔を見合わせる姉妹。

 美空はこくりと頷いて、電光掲示板の左隣を指差す。


「あそこに監視カメラがあるのが見えますか? きっと警察はすでに私たちがこの列車に乗ったことを把握しているはずです。次の駅で待ち伏せしていると考えた方がいいでしょうね」


 次の駅で扉が開いた瞬間、自分たちは拘束される。そうなれば、生きて帰れる可能性はゼロに近い。ならば、何としてもこの列車で国外まで逃げ切る必要がある。


「どうするの、美空お姉さん?」

「さすがに皇国の魔女様でも、この状況は厳しいのでは?」


 問いかけるシェンリーとメイフェンに、美空は笑みを浮かべて答える。


「いえ、私に一つ考えがあります」


 美空は姉妹を空いている席に座らせ、一人で行動を開始した。

 二人の座席については、サーバーの空席情報の記録を魔法で書き換えておいたので、車掌が検札に来ても多分やり過ごせるはずだ。


 先頭車両の一番前のデッキ。誰にも見られていないことを確認し、美空は運転席へと通じる扉を押したり引いたりしてみた。だが、固く施錠されていて開く気配はまるで無い。


「やはりロックがかかっていますね……」


 運転室に自由に立ち入れる列車がどこにある。施錠されていることは当然想定の範囲内なので、美空はまず鍵の方式を確かめる。

 扉に鍵穴は見当たらない。その代わりに、扉の右横に読み取り機のようなものが取り付けられていた。


「カードキー。電子ロックですか」


 この場合、解錠するのに使う魔法はただ一つ。


「魔法目録二十三条、電子操作」


 美空は読み取り機に自分の掌をかざし、魔法を発動させる。

 すると、ピピッという電子音と共にガチャンと鍵が開いた。

 見事第一関門突破。美空は小さく拳を握る。


 続いて、極力気配を消しつつゆっくりと運転室の中へ足を踏み入れる。

 背後から運転席に近づいていくと、マスコンを操作する運転士の姿が見えた。若い男性だ。

 ここで男性運転士に振り返られてしまっては今までの努力全てが水泡に帰すことになる。それだけは絶対に避けたい。

 美空は間髪入れずに小声で魔法を唱えた。


「魔法目録十二条、催眠」


 直後、運転士がぐったりと運転台に突っ伏した。マスコンを握っていた手からも完全に力が抜ける。大きな声を出せなかったので不安だったが、催眠魔法はしっかりと効いた様子だ。

 しかし、時速三百キロで走行する列車は今コントロールを失った状態にある。安全装置や自動制御システムが搭載されているとはいえ、さすがに長時間放置するのは良くない。罪の無い乗客まで命の危険に晒すつもりは無いので、美空は急いで運転士を床に寝かせて席に座った。


「列車の運転なんてしたことありませんが……。これなら行けそうですね」


 運転台にはマスコンとモニター、それと懐中時計。

 マスコンを手前に倒せば加速、奥に倒せばブレーキ。

 モニターで現在の走行速度や次の駅までの距離、到着予定時刻などが分かる。


「進行三百!」


 美空は右手でマスコンを握り、左手で信号をそれっぽく指差ししてみた。

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