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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第4章 旧連邦圏の国

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第72話 天才の複製

 ディクタテューラ連邦国、秘密研究施設。


「ここにマルファさんがいると思うのですが……」


 ユークスタンの軍上層部を葬った美空みくは、索敵魔法を使いカタリナを救ってくれた女性、マルファの位置を特定。そこに転移した。


 もう彼女にしがらみの枷は無い。

 一刻も早く解放してあげなければ。


 しばらく通路を進むと、マルファの名前が書かれた研究室を発見した。

 ノックしてから、ゆっくりと扉を押し開ける。


 しかし、美空が目にしたのは、あまりに悲しい光景だった。


「っ! マルファ、さん…………」


 研究室の隅。天井から吊り下げられたロープに首を絞められ、女性が力なく項垂れている。


 マルファは、自殺してしまっていたのだ。


 室内の状況からして、まだそう時間は経っていない。

 恐らく、自身が開発に関わった無人機がカタリナを撃墜したと知ったことが引き金となったのだろう。


「せめて一人だけでも、と考えていましたが。私は結局、誰も助けられませんでしたね……」


 ユークスタンでの美空の行動は、全て裏目に出た。完全な失敗。


 マルファが死んでしまったなら、ここに用は無い。長居するだけ危険だ。

 また次の国へと旅立とう。


 踵を返し研究室を後にしようとする美空。

 その時、どこかから女性の声が聞こえてきた。


『待って』

「誰です?」


 振り返るも、室内には首を吊ったマルファ以外に人の姿は見当たらない。

 しばらくして、再び女性の声。


『あなたは、私の知り合い?』


 どうやら机に置かれたデスクトップパソコンが音源のようだ。

 美空はパソコンに近づきつつ応じる。


「いえ、直接の知り合いではありません。ただ、あなたのご親友からお話は伺っています」


 画面には何を表しているのか見当もつかない不思議なグラフが表示され、それらが忙しなく変動している。


『もしかして、カタリナのお友達?』

「友達、ではありません。基地でしばらくの間、一緒に過ごしていただけです」

『じゃあ、ユークスタン軍の?』

「それも違います」

『う〜ん……?』


 要領を得ない答えを繰り返す美空に、考え込んでしまう謎のプログラム。

 だがその声色や会話の間はとても自然で、普通の人間と話しているような錯覚に陥るほどだ。


 しばしの沈黙の後、グラフが一瞬大きく動きプログラムが口を開いた。


『……分かった。あなた、皇国の魔法能力者でしょ? 指名手配中の』

「あっ……」


 突然正体を言い当てられ、動揺する美空。

 カメラでその様子を認識したのだろう、プログラムが続ける。


『噂はネット経由で得てるよ。すごく強いんだってね?』

「ええと、その……」


 そう言われても、どう反応すればよいのか。

 困惑していると、プログラムは思い出したように一言。


『そうだ、自己紹介してなかった。私はマルファ、よろしくね』

「マルファ、さん?」


 彼女はそこで死んでいるはずでは?

 プログラムが名乗った予想外の名前に、思わず驚いてしまう美空。


『うん。正確には私のコピーAIだけど、本人と思考回路は全く一緒だよ』

「人間の脳をコンピュータ上に複製するなんて、そんな技術があり得るのですか……?」


 成績優秀な理系の女性で、国立大学の工学部に進学したとは聞いていたが、まさかここまでの天才だったとは。


 目を丸くしてじっと画面を見つめるままの美空に、彼女は「ふふふっ」と穏やかに笑った。

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