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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第4章 旧連邦圏の国

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第61話 美空の考え事

 時刻は夜の十一時。明日に向けてそろそろ寝なければいけない時間だ。

 しかし美空みくは、宿舎の部屋から窓の外に広がる星空をぼんやりと眺めていた。


「睡眠不足なはずなのに、眠気が襲ってきませんね……」


 昨晩は四時間ほど仮眠を取った程度で、午前中はわずかながら眠気を感じていたはずだが、いざ夜になってみると眠気が吹き飛んでしまった。

 理由は何となく分かっている。ヴィーカのことが気になって、色々と考えてしまうからだ。


 彼女はずっとこの基地の中で暮らしてきた。そして、この国の切り札としての役割を背負わされている。まだ幼い少女にとって、その苦しみはどれほどのものなのか。想像しただけで胸が痛くなる。


「それでもヴィーカちゃんが笑っていられるのは、どうしてなのでしょう……」


 だが、彼女は決してそのような感情を表に出したりはしない。

 常に笑顔で、無邪気に振る舞い、訓練にも前向きに取り組んでいる。


 もし自分がヴィーカの立場であったなら、おそらく耐えられずにどこかのタイミングで逃げ出していたことだろう。いや、現に自分は護衛隊での扱いが嫌になって逃げ出した身だ。


 ヴィーカちゃんは強い。私なんかよりも、よっぽど。


 いくら切り札としての役割から解放されるためとはいえ、あそこまで訓練に前向きになれる自信は美空には無い。

 それでは一体、その強さはどこから来るのか。


「…………」


 ゆっくりと瞬きをして、夜空に浮かぶ星々を見上げる。


「私の置かれていた環境は、ヴィーカちゃんから見れば随分と恵まれていたのでしょうね」


 なんて私は弱いのだろう、と自分で自分が嫌になる。


 撃墜されたふりをして皇国を離れた後、護衛隊に戻ってほしいと言われたこともある。でも、あの時の美空は今更何を言われてももう遅いと、聞く耳を持たなかった。それは護衛隊にいても幸せになれない、当時の自分はそう信じて疑っていなかったからだ。


 しかし、世界にはもっとつらい境遇に置かれた人たちが沢山いると知った。それを知った今、その考えは本当に正しかったのか、ここまで自分が選んできた選択肢は間違っていなかったのか、不安になる。もっと別の道があったのではないかと、そんな風に考えてしまう。


 夜の闇のような鬱屈とした感情に覆われ、窓際の壁に力無く寄りかかる美空。


 その時、部屋のドアがコンコンとノックされた。


「はい……」


 いきなりの来客に少々驚きつつ、気持ちを切り替えてドアを開ける。

 すると、目の前に立っていたカタリナが、困ったような表情を浮かべて言った。


「君の暗い感情がこっちまで伝わってきて、全然眠れないんだけど?」

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