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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第4章 旧連邦圏の国

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第53話 最終国土防衛装置

 ヴィーカが最期に役目を果たす場所。

 つまりこの施設こそが彼女の秘密を解く鍵。


「ヴィーカちゃん、中に入ってもいいですか?」


 そんな美空みくの言葉に、ヴィーカは鋭い口調で告げる。


「ダメ! 絶対に入ったらダメだよ」

「ご、ごめんなさい……」


 予想以上の強い反応に美空は肩をビクッと震わせる。

 それを見たヴィーカは、慌てて謝った。


「ごめんねジェーブシカ、驚かせちゃったよね?」

「いえ、ヴィーカちゃんが気にすることではありません。今のに関しては、迂闊に国家機密に触れようとした私が悪いのですから」


 すると、彼女は首を左右に振り美空の言葉を否定した。


「違うの、そうじゃないの。あのね、わたしが止めたのはね、中に入ると危険だからなの」

「危険? 爆弾でも仕掛けられているのですか?」


 もしかして、この施設は基地が敵軍に占領された時の罠や自爆装置だったりするのだろうか?

 そんな思考を巡らせていると、突如ヴィーカはこの施設の名前を口にした。


「ううん、爆弾じゃないよ。これはね、最終国土防衛装置って言うの」


 最終国土防衛装置。幼い女の子には似つかわしくない、何とも物騒な単語だ。


 しかし、この装置とヴィーカに深い関係があるということは、装置名も国家機密なのではなかろうか。名前だけでも彼女の役目にある程度の想像はついてしまう。


「えっと、ヴィーカちゃん。この情報って私に教えても大丈夫なのですか?」


 戸惑いつつも、一度確認する美空。

 いくら子供とは言えど彼女も職業軍人だ。国家機密を漏らしたとは思わないけれど、あくまで念のため。


 だが、ヴィーカはハッとした顔を浮かべた後、急に慌て始めた。


「どうしようどうしよう。カタリナに怒られちゃう……!」


 これはもしや、私は重大な国家機密を聞いてしまったのでしょうか? そのパニックぶり、絶対そういうことですよね?


 美空は彼女より大人なので口にこそ出さないが、内心では彼女に怒りさえ抱いていた。


 事故のようなものとは言え、国家機密を知ってしまった以上タダでは済まないはず。ただ、テンシャンのみならずユークスタンからも追われる羽目になるのはさすがに御免だ。


「ヴィーカちゃん、耳を貸してください」


 美空は慌てふためくヴィーカに対し、顔を近づけて言う。


「え? うん」


 少し落ち着いたのか、あたふたしていたヴィーカの動きが止まる。

 そこで美空は更に彼女に近づき、耳元で囁くように話をした。


「いいですか、ヴィーカちゃん。私はこの施設について何も知りません。何も聞いていません。そしてヴィーカちゃんも何も話していません。……ここでのことは全て無かったことにしましょう。それがお互いのためです」

「わ、分かった。ジェーブシカがそこまで言うなら、無かったことにするよ」

「はい。これは私とヴィーカちゃんだけの秘密です」

「国家機密、だね……?」


 ヴィーカの言葉に、美空は静かに頷く。


 悪い大人だと思われるかもしれないが、逃亡犯の身としてはなりふり構っていられない。彼女がこのテクニックを覚えないことを祈ろう。


「ヴィーカ、コーシチカ。こんなところで何をしているんだい?」


 その時、背後からカタリナが問いかけてきた。

 いつの間にかすぐそばまで来ていたらしい。


「いえ、特に何も。それにしても、この建物は不思議な見た目をしていますね」

「うん。屋根が丸くて面白いでしょ?」


 美空とヴィーカは二人で話を合わせて隠蔽工作を図る。


「皇国ではドームは珍しいのかい?」

「そうですね。あるとすれば、一部の野球場や気象観測所くらいでしょうか」

「それじゃあ、君の目には不思議に映るかもしれないね。さて、昼食の用意はもう出来ているよ」


 話を終えると、カタリナは踵を返し食堂へと向かう。

 どうやらこの場は悟られずに乗り切れたようだ。美空とヴィーカは顔を見合わせ、ホッと息を吐く。


 そして、心理読解魔法が常時発動しているカタリナに隠し事はリスキーだったと気付いたのは、食堂に戻った後のことだった。

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