第49話 無邪気な切り札
空軍基地に似つかわしくない小さな女の子を目にし、戸惑いを隠せない美空。
軍服を着ていることを考えれば、保護された民間人という訳でも無いだろう。
「この子は一体……?」
小首を傾げ、疑問を口にする。
それに対し、カタリナは真剣な顔つきで答える。
「彼女はヴィーカ。この国のコーズィリさ」
「コーズィリ、ですか?」
「そう、最後の切り札ってヤツだよ」
つまり、このヴィーカという少女には何か重大な役割がある?
そんなことを考えていると、ヴィーカがこちらに歩み寄って来た。
「あれ? 珍しい、お客さんだ〜! わたしヴィーカ。よろしくね!」
無邪気にはしゃぐその様子に、美空は一瞬面食らってしまう。
軍人なのだから大人びているとばかり思っていたが、性格は年相応のようだ。
まあ、変に落ち着いている子供よりもこっちの方が自然だしずっと良い。
「ヴィーカちゃんですね。よろしくお願いします。私のことはコーシチカと呼んでください」
微笑んで手を差し出す美空。
すると、ヴィーカとカタリナがどこか可笑しそうに吹き出した。
「あの私、何かおかしなこと言いましたか……?」
困惑していると、カタリナが腹を抱えながら答える。
「はははっ、あのねお嬢ちゃん。コーシチカっていうのは子猫って意味なんだよ。君は年下から子猫と呼ばれたいのかい?」
「えっ、あ、それってそんな意味の言葉だったんですね」
一時的なあだ名だと思い深く考えていなかったが、どうやら美空はカタリナから子猫と呼ばれていたらしい。
当然、美空には幼女から子猫ちゃん呼ばわりされたいなどという変態趣味は無い。勘違いされても困る。
しかし、本名を名乗るわけにいかない以上、何かしらの呼称は必要。さあ、どうしたものか……。
「さすがにヴィーカも年上のお姉さんをコーシチカとは呼べないだろう。ヴィーカ、彼女のことはジェーブシカって呼んであげるといい」
「うん、分かった! ジェーブシカ、改めてよろしくね!」
カタリナのフォローのおかげもあり、ヴィーカからはジェーブシカと呼ばれることになった。これまたどんな意味の単語なのか知らないが、まあ変なものではないだろう。恐らく。
ヴィーカと握手を交わし終えた美空は、ここで一つ疑問を口にする。
「それで、カタリナさん。どうして私をヴィーカちゃんに会わせたかったんですか?」
「ああ、それはね……」
カタリナは一度言葉を区切り、真っ直ぐにこちらの目を見つめる。
そして、真剣な口調で続けた。
「君にヴィーカの先生をしてほしいと思ったんだ」




