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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第3章 凋落王政の国

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第42話 お守り

漆原うるしばらさん、漆原さん……!」

「う、うぅ……」


 その声に美空みくが目を覚ますと、心配していた様子のプロイがホッと胸を撫で下ろした。


「良かった、ご無事でいらっしゃったんですね。お怪我などしていませんか?」

「ええ、はい。少し疲れてしまっただけです……」


 身体を起こし、目をこすりながら答える。

 そして脳が働き始めると、ふと大きな疑問が浮かんだ。


「それより、どうしてプロイさんがここにいるのです? 王族がこんな危険な場所に来てはいけませんよ」


 問いかけると、彼女は目に涙を浮かべて答える。


「分かっています。ですが、どうしても漆原さんのことが不安だったのです。生きていて下さって、本当に良かったです……」


 プロイは袖口で溢れる涙を拭うと、急に抱きついてきた。


「わたくしは、わたくし達王族は、漆原さんに助けられました。例えこの国が守られたとしても、漆原さんが生きていて下さらなければ意味が無いのです」


 意味が無いとは大袈裟だが、そこまで想っていてくれたのは純粋に嬉しかった。

 美空はプロイの背中に手を回し、優しく抱き寄せて言う。


「何だかすごく心配させてしまったようで、すみませんでした。しかし、私は世界を敵に回してしまった以上、もうこの国にはいられません。私がこの国を去ることこそが、この国を守るために必要なのです」

「そんな、嫌です……。わたくし達は、ずっと漆原さんを保護し続けるつもりです。どこにも、行かないで下さい……」

「王女様にそこまで泣かれてしまうと、どうしたら良いのか分からなくなってしまいます」

「申し訳、ございません……」


 慌てて身体を離し、謝罪するプロイ。

 だが、彼女は泣き止むどころか、その場に崩れ落ちてしまう。

 よほど自分と別れたくないらしい。


 そこで美空は、ポケットからある物を取り出しそれをプロイに差し出した。


「プロイさん。もし良かったら、これ受け取ってください」

「これは……?」

「日本のお守りです。と言っても、地元の神社のやつなので大したあれじゃないんですけどね」


 有名な神社でもなく、パワースポット的な所でもない、家の近所の小さな神社。そこで買った金運のお守り。

 それを手にしたプロイはしばらくそのお守りをじっと見つめていたが、やがて顔を上げると表情を綻ばせた。


「……ありがとうございます。大事にしますね」


 そんな彼女に美空は頷き、微笑みを返す。


「はい。これでプロイさんも、大金持ちになれるはずですよ」

「わたくしは別にお金は望んでおりませんが、美空さんから頂いた物と言うだけでわたくしにとっては幸運のアイテムです」


 そんなことを正面から言われるとかなり恥ずかしい。

 思わず照れてしまい、視線を逸らす。


 すると今度は、プロイの方から何かを差し出してきた。


「では、わたくしからもプレゼントをさせて下さい」

「これは何です?」


 美空が首を傾げると、プロイは屈託の無い笑顔を浮かべ答える。


「ルビーをあしらったペンダントです。きっと漆原さんに似合うと思いまして」

「こんな高価なもの、本当にいいんですか?」

「もちろんです」


 大きく首を縦に振るプロイ。


「では、ありがたく頂きます」


 美空は受け取ろうと手を差し出したが、プロイはそのペンダントを渡すことなく直接首にかけた。

 そして、胸元で輝く真っ赤な宝石を見て満足そうに頷く。


「やっぱり、とてもよくお似合いです」

「……ありがとうございます。私もこのペンダント、ずっと大事にしますね」


 美空はペンダントを握りしめ、はにかんで見せた。




 そんな楽しいプレゼント交換を終え、いよいよ別れの時がやってきた。


「……それじゃあ、私はもう行きますね」


 美空が言うと、プロイは淋しさを隠せない様子で問いかける。


「本当に、旅立たれてしまうのですね?」

「はい」


 短くそう答える。

 それに対しプロイは一瞬悲しそうな表情をしたが、すぐに笑顔に変わった。

 そして、手を振りながら口を開く。


「漆原さんに、シャムコンのご加護があらんことを」


 その言葉を受け、美空も手を振り返し応じる。


「プロイさんもお元気で」


 その後、美空が歩き出してからも、プロイはずっとその場で手を振り続けていた。

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