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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第3章 凋落王政の国

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第41話 殲滅

 間も無く、上空は無数の戦闘機で覆われた。

 一斉に爆弾を投下し、村ごと焼き尽くすつもりなのだろう。


「もう、迷ってはいられませんね……」


 美空みくは呟き、判断する。

 一切の抵抗をせず、ここで殺されるか。神のお告げに従い、テンシャン軍を壊滅させるか。


「ここで私が死んだとして、それでこの国が救われなかったとしたら。守れる人間は、もうこの世界にはいないでしょう。ならば、私が選ぶべきは……」


 空に右手を伸ばし、神経を集中させる。


「魔法目録二十三条、電子操作」


 魔法を唱え、それを発動させる。

 直後、上空を飛行していた戦闘機の大群が同時に推進力を失い下降を始めた。


 美空は世界を敵に回してでもテンシャン軍と戦うことを選択したのだ。


 墜落した戦闘機が、燃料や爆弾に引火し爆発を引き起こす。

 それはどんどんと連鎖し、あっという間に周囲の畑などにも燃え広がっていく。


「現代兵器は電気系統に頼りすぎですね。呆気なく片付いてしまいました」


 たった一つの魔法で全機撃墜。

 あとは燃え盛る炎を処理すれば一件落着、任務完了か。


「魔法目録二十八条、高圧放水」


 美空は右の掌から水を噴射し、周囲の火を消し止めていく。

 ゆっくりと身体を三百六十度回転させ、辺りを完全に鎮火させる。

 まだ若干の焦げ臭さは残っているが、被害は最小限に食い止められたと言えるだろう。


 そして、畑に散らばった鉄の破片に近づき、美空は一度大きくため息を吐く。


「……やっぱり、戦争は嫌いです。兵士として以前に、人としてこんな死に方は間違っています」


 自分の手を見つめ、この戦闘機に搭乗していたパイロットを想う。

 いくら敵であったとは言え、こんなにあっさりと殺してしまったのは少々心が痛む。せめてもの償いと、美空は目を閉じ両手を合わせた。




 それからしばらくして。

 第二陣に警戒していた美空は、空高くに想定外の物体を目撃した。


「あれは、ミサイルですか……?」


 まだ距離があるためしっかりと視認は出来ないが、あの軌道は戦闘機やヘリコプターのそれとは大きく異なる。また隕石や火球でもない。


 こうやって眺めている間にも、ミサイルと思しき物体はこちらに向かって放物線を描いている。着弾地点がここであることは明らかだ。


「全く、どれだけ私を倒したいのでしょうか。いい加減、無駄遣いになると気が付いて欲しいものですが」


 美空は面倒に感じつつも、対処すべく魔法を唱える。


「魔法目録二十三条、電子操作」


 電子操作魔法によりミサイルの制御を掌握、着弾地点を変更させる。

 では、どこに落とすか。

 瞬間的に思考を巡らせ、最も効果的と考えられる場所を選定する。


「ちょっと無理がありますが、テンシャン軍を止めるには必要な措置でしょう」


 美空は魔法を通じて新たな座標を指定する。

 そして、多少強引に軌道を修正した。


「この結果は、新聞なりテレビなりで確認するしかないですね」


 落下地点に設定したのは遥か彼方、ここからではその結末を直接見届けることは出来ない。


 ミサイルが地平線の先へと消えていくのと同時、美空はその場に倒れこんだ。

 最後の軌道修正に思った以上に魔法力を消耗してしまい、どっと疲れが押し寄せてきたのだ。


「はぁ、少し休んでから出発するとしましょう……」


 暖かな日差しと爽やかなそよ風を受けながら、美空は瞼を閉じた。

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